【ワシントン古本陽荘】米下院本会議は21日、オバマ政権の内政上の最重要課題である医療保険制度改革法案の採決を行い、賛成多数で可決した。すでに上院が可決しているためオバマ大統領の署名を経て成立する。国民皆保険制度のない米国で、医療保険加入を国民に義務付ける初めての歴史的な制度導入となり、オバマ大統領は自らの指導力回復につなげたい考えだ。
下院は、保険対象を広げるための同法案の一部修正法案も可決。週内にも上院が同じ修正法案を可決、成立させ、法的枠組みが整う。改革の主要事業は2014年から始まる。
オバマ大統領は同日深夜、ホワイトハウス内で「急進的な改革とは言えないまでも、大改革だ。一党の勝利でなく米国民の勝利だ」と意義を強調した。
採決は賛成219、反対212、一部修正法案も賛成220、反対211といずれも小差だった。共和党は全員が反対に回り、民主党からも30人以上が反対票を投じた。
法案の成立により、今後10年間で9400億ドル(約85兆円)を支出。現在4000万人以上いる無保険者のうち3200万人が保険加入し、保険加入率は83%から95%に上昇する。また、低所得者向け医療扶助(メディケイド)を拡充し、医療保険加入のための連邦政府による補助金制度も導入する。既往症を理由に保険会社が保険加入を拒否することは禁じられる。一方で、公的保険制度の創設は見送られた。
米国では無保険者が多く、医療費の支払いに伴う破産のほか、保険加入者の間でも、保険会社の医療費支払い拒否が社会問題化していた。だが、共和党や民主党の一部保守派は、改革による財政支出の拡大などに反対してきた。
改革法案は、09年に上院と下院が別個の法案を可決した後、一本化が難航。最終的には、上院で12月に可決した法案を下院で可決したうえで、内容を一部修正する法案を上下両院がそれぞれ採決する手続きを採用した。
毎日新聞 2010年3月23日 東京朝刊