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【センバツ】伝統受け継ぐ向陽 したたかに45年ぶり勝利
放った3安打のうち2本が四回の連続適時打。「ワンチャンスを生かそうと思っていた」と先制打の大槻が45年ぶりの甲子園勝利に胸を張る。21世紀枠で36年ぶりにセンバツに帰ってきた向陽は、なかなかにしたたかだった。
最速147キロを誇る開星の白根をどう打ち崩すか。石谷監督の指示はこうだった。「1球でも多く投げさせろ」。ストライクゾーンをしっかりと見極め、際どいコースはしぶとく当ててファウルに。各打者が実践した結果、185センチ、91キロの力投型は一回だけで25球を投じる羽目になった。
「速い。こんなボール打てるのかな」。主将の西岡に初打席でそう思わせた速球は、四回にはとうとう140キロに届かなくなった。この回、2四死球などで2死1、3塁とし、大槻が右前へ。長田もレフトへの二塁打で続いた。それまでの待球策とは一転してともに初球打ちだ。「チャンスでは1球目から狙いなさい」。石谷監督の指示は見事にはまった。
向陽という名に耳なじみのある高校野球ファンは少ないだろうが、旧制海草中と聞けばピンとくる人がいるかもしれない。1939、40年夏の甲子園を連覇した古豪で、39年夏にエースだった嶋清一(故人)は準決勝、決勝で2試合連続ノーヒットノーランという離れ業を演じた伝説の左腕だ。3年生は一昨年夏、甲子園で行われた嶋さんの野球殿堂入り表彰式を観客席から見守り、大舞台へのあこがれを一層深めたという。
西岡は言った。「伝統を残しながら、新しい向陽の歴史をつくっていきたい」。2回戦の相手は36年前に初戦で惜敗した日大三。思いをかなえるにはうってつけの相手である。(細井伸彦)