iPhoneが日本で発売されない本当の理由とその打開策
iPhoneが採用する通信方式がGSMなので、日本のW-CDMA(ドコモとソフトバンク)やCDMA2000(au)の採用する方式とは相容れないため、日本では使用できないという話は、いろいろなメディアで説明されているのでおわかりでしょう。
その理由は、
「アップルの携帯電話「iPhone」、気になる日本での展開は?」
「しゃおの雑記帳はてな支店」
で詳しく述べられています。
また、SIMロックや無線規格策定の経緯については、池田信夫氏の「SIMロックの解除は犯罪か」がわかりやすく解説されています。
でも、iPhoneには、無線LANやBluetoothが搭載されているから、米国発売されたらそれを購入して日本でもネット端末として使える!などと考えている人もいるでしょうけど、それをしてしまったら違法行為です。
日本には、テレックという役所系の機器認証団体があり、ここの認証を受けていない無線機器の電源を入れて電波を出してしまったらそれは違法行為なので気をつけましょう。当然、米国から輸入したiPhoneの電源を入れた瞬間にGSM、無線LAN、Bluetoothの電波が出てしまったらそれはまずいわけです。違法です。
さて、問題となる通信方式だがキャズムを超えろ!で言われているように、「iPhoneの通信方式を変えることは難しい話ではない」という分析はそのとおりだと思います。
それよりも問題なのは、日本のキャリアの無線接続に求める品質要求なのです。実は、私は一昨年『叛骨の集団—ケータイ端末の未来を創るという本を書きました。これはドコモの端末開発の現場担当者の物語なのですが、約2ヶ月間にわたり、現場でどのようなことが行われているかをみっちりとインタビューし、それをまとめたものです。
この取材で痛切に感じたのは、ドコモの接続試験の厳しさとその要求の高さです。実際のところ、各メーカーはその部分でかなり苦労していることは確かです。今ドコモに端末を提供しているメーカーは、苦労の末に試験をクリアするための技術要求を満たすノウハウを持っているところでもあるのです。
逆に言うと、その要求の高さが、見えない障壁となって新規メーカーが参入しにくい構造が形作られているとも言えます。ケータイ端末への参入を試みて断念したメーカーの数は死屍累々としてると言えば言い過ぎかな。そして、試験をパスするには膨大な人的パワーとコストを必要とします。このあたりの事情は、音ログ開発日記 出張所内で冷静に書かれています。まあ、ドコモに限らず他のキャリアも似たり寄ったりでしょう。
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そもそも、iPhoneというのは、「無線機能が付いたiPod」であり、「iPod付きのケータイ」ではありません。つまりケータイはあくまでもオマケの機能だと僕は理解しています。そんなオマケの機能に対して、アップルが膨大なコストと人的パワーをかけて、垂直統合型殿様商売をしている日本のキャリアににじり寄るとはとうてい思えません。
それに、相手はジョブズです。あのジョブズです。既得権を守ることにキュウキュウとして融通の利かない官僚主義の牙城ともいえる日本のキャリア(ソフトバンクは違うかな)のトップとジョブスがまともな話し合いができるとは到底考えられません。(もちろん、私はジョブズを個人的に知りませんが、スティーブ・ジョブズ-偶像復活を読んだ限りでは、そんな印象を深く持ちます)
でも、その一方でジョブズの説得力(Steve Jobs はなぜ説得力があるのか)に期待もしますが…
それに、SIMロック問題、販売奨励金制度、各キャリアがすでに展開している音楽配信ストアとの競合など、iPhoneの導入が遅れそうな日本独自の理由は他にも累積しています。技術的な問題は難なくクリアできるでしょう。しかし、居並ぶ政治的な問題を全部クリアするのは簡単ではないのです。
ただ、ソフトバンクの孫氏には期待してしまいます。ジョブズとまともに渡り合えるのは彼くらいなものでしょう、でも、「ソフトバンク孫社長、iPhoneについて語らず」と口を閉ざしているそうなので、期待薄なのでしょうか。
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ただ、ネガティブなことばかりを言っていてもしょうがないので、私なりの解決策を提示しましょう。答えはやっぱり「iPhone」!でも日本登場は1年後!で示されているように、日本ではケータイ機能を省いたiPhoneを出すというのは1つの方向性です。無線LANやBluetoothなら日本でも簡単に認可が取れますし、政治的な問題は発生しません。
ただ、アップルの姿勢として、そのような機能的に妥協した製品を出す可能性は低い気もします。信念を曲げない頑固な会社というイメージがありますからね。昔、日本語フォントのROMを搭載した日本向けマックを出したことがありますが、日本向け特別仕様の製品をわざわざ作ったのは後にも先にもそれだけと記憶してます。間違っていたらごめんなさい。
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ケータイ機能なしのiPhoneが無理なら道は閉ざされるのか!? それではあまりにも悲しすぎます。そこで、私は下記のようなフィクションも交えた提案型の物語を考えてみました。これが実現するかどうかはわからないですが、読み物としてはかなり面白いという自信があります。
【ここから物語】
まず、提案したいのが、MVNO(仮想移動体通信事業者)だ。今年は、MVNO周辺で動きがあるだろう。総務省の意見募集も一段落した。PHSでは既にある事業形態だが、携帯電話ではキャリアが周波数不足を理由に非協力的なため実現していない。しかし、電波の有効利用、携帯事業の競争促進になるなどの理由から総務省としては早期の導入を目指していることは確かだ。
携帯電話のMVNO事業参入が可能になったら、アップルもこれを利用してキャリアになってしまえばよいのだ。そもそもMVNOというのは、魅力的な端末を用意できる事業者に有利な事業形態ではないか? iPhoneは十分魅力的だ。販売奨励金などなくても、iPhoneのためなら6万や7万を支払うユーザーはたくさんいると思う。
ただ、アップルとしても、iPhoneのためにいきなりキャリアになるというのもリスクが大きすぎるだろう。そこで、日本でMVNOの経験のある企業と事業提携をして参入するという方法も考えられる。そう。日本通信だ。ここはbモバイルで、ウイルコムPHS網の提供を受けてデータ通信サービスを実現しており、黒字化も達成している。
日本通信とのコラボレーションで携帯電話のMVNO事業者としての「アップル」が誕生するのも悪くないストーリーだと思わないか? すでに構築されているPHS無線方式をiPhoneに導入するという手もあるが、まあ、それでもいい。携帯電話網での参入でもどっちでもいい。
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それと日本通信という名前を出した背景がもう一つある。ここのトップである、三田聖二氏は以前アップル日本法人の社長を1年という短い期間ではあるが、努めた人だ。彼が日本のアップルの社長だった時代の本家アップルは業績が悪化して悲惨な状態だった。サンマイクロ、アラブの石油成金、オラクルといったところからの買収の噂が乱れ飛んでいた。
実は、当時アップルの身売り相手としての本命は、サンマイクロでも、アラブの石油成金でもない。アップルの日本法人なのだ。三田氏は、本家アップルを買収するために日本法人の社長に就任したのだ。三田氏は、お金を集め買収成功寸前のところまで行った。しかし、思わぬ邪魔が入ったのだ。ジョブズだ。
当時のジョブズは、アップルに返り咲く前で「ネクスト」を一生懸命やっていた時代だ。そんな彼は、「日本人にオレの魂を買い取られるなんて冗談じゃない!」と思ったのだろう。日本人にだけは売るな!と株主を説得して周り三田氏の買収を妨害した。
結局、ジョブスの妨害は功を奏し「子が親を食う」日本法人による本家アップルの買収劇はお流れになった。そして、三田氏はアップルそのものに興味を失いわずか1年で社長を降板した。
しかし、運命とは皮肉なものだ。ジョブスは、日本の特殊な携帯電話市場への参入に関してMVNOとして実績のある三田氏に助言を求め、そして提携が実現するのだ。
2008年X月、日本通信と共同で設立された携帯電話事業者「アップル」がサービスを開始した。最初に発表された端末はもちろんiPhoneである。
【物語は以上】
どうですか? なかなか面白い話でしょ? ここに書いてることを信じるか信じないかはあなた次第です。
Photo by John Pastor
・お風呂でiPod聴けるかな?
はてブで結構登録されてたから覗いてみれば・・・( ゜д゜)ポカーン
投稿: 通りすがり | 2007年1月19日 (金) 12時08分
日本通信CFOの福田尚久氏もアップル出身で、米国アップル本社のボードメンバーとしてスティーブ・ジョブズ氏と共にiPodの企画に携わっていたとのことです。http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0711/mobile348.htmアップルが日本通信と組んでMVNOというかたちで日本の携帯事業に参入するというのは結構リアリティありそうですね。
投稿: はてブからの通りすがり | 2007年1月19日 (金) 15時23分
Appleは全世界同一仕様ハードが強固なポリシーです。中国がW-CDMAではない方式を3Gに採用する決定をしたために、GSM/EDGEしかiPhoneに採用できないというのが、理由でしょう。中国に追従する国は多そうですからね。契約上面倒な日本は捨てても中国は無視できませんということですね。北米ではW-CDMAは超マイナーですし。日本がGSM/EDGEを導入すればいいだけです。http://blogs.yahoo.co.jp/ahoo_japan_president
投稿: Ahoo_Japan_President | 2007年1月21日 (日) 23時31分
よくわからないですけど、僕はiPhoneはケータイ付きiPodでは無くてiPodの機能がついたケータイだと思います。
投稿: KS | 2007年5月20日 (日) 07時21分
>米国から輸入したiPhoneの電源を入れた瞬間にGSM、無線LAN、Bluetoothの電波が出てしまったらそれはまずいわけです。違法です。 この部分の根拠となる条文をお示しください.
投稿: age | 2007年6月 9日 (土) 09時23分
>根拠となる条文テレックやJATEのサイトでご自分でお調べくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
投稿: 山崎潤一郎 | 2007年6月 9日 (土) 17時57分
i touchの無線ランも日本に持ち帰って使えば違法なのでしょうか?もしそうなら日本でもi touchは売ってますよね?それとアメリカでうってるものは中身が全然違うってことですか?
投稿: 中村 優子 | 2008年2月 4日 (月) 16時50分
> touchの無線ランも日本に持ち帰って使えば違法なのでしょうか?厳密に言うと違法です。日本以外の国で販売されているtouchは、日本の無線機器の認可(型式番号)を取っていないわけですから、違法です。無線装置としての中身は、ほぼ同じですが、単に役所が、その無線機器を認可しているか否かの問題です。米国から逆輸入したトヨタの自動車を日本で走らせるには、日本で販売されている同車種とはまた別に、国土交通省の認可を取らないとナンバーを取れないのと同じです。ナンバーをつけないで走らせると違法ですよね。ただ、まあ、私も国内でiPhone使ってますけど、iPhoneに関して言えば「あまり固いこと言いっこなしね」てな風潮があるわけなので、そこは柔軟に考えればよろしかろうと思うわけです。
投稿: yamasaki | 2008年2月 4日 (月) 18時02分
Appleは全世界同一仕様ハードが強固なポリシーです。
投稿: Belly Fat | 2009年1月21日 (水) 19時48分