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[語句説明]

2009-07-25 自殺・異状死に関するメモ このエントリーを含むブックマーク

以下、強調はすべて引用者*1


2009年3月24日(火) 内閣委員会議事録(抜粋)」(PDF、参議院議員・柳澤光美氏のHP)

柳澤光美君  その中で一つ要望がございまして、実は警察が扱った死因不明の異状死体の件数というのが急激に伸びています。 平成20年には16万1838体と言われています。 これは、一つは自殺の問題もあります。 それから、高齢者の孤独死の問題もあります。 これはもう毎年毎年増えてきている。 10年前の今1.5倍になっている。

 ところが、一方で司法解剖とか行政解剖を執刀する解剖医というのは、19年の12月時点で132人しかいない。 年間どうやっても1万5000体が限界。 だから、10分の1もできない。 しかも、今後解剖医のなり手がますますいなくなる。 小児科医、産科医に比べもっと、本当に開業医になることも難しいという中で、実は解剖率は今もう10パーを切って9%台をうろうろしているんですが、アメリカでは50%、イギリスが60%、実は自殺対策を国を挙げて取り組んだフィンランドは100%なんですよ。 そういうことも踏まえて、フィンランドは3割以上の自殺者が減るという対策を取られているんですが。

 実は、現在、異状死体の9割というのは専門知識の不十分な警察官とか、立会いのお医者さんもほとんど経験がない方が、見るだけでもう判断をする。 それが解剖に回るとかというルールもない中で16万体を超える処理がされていってしまう。



衆議院議員・橋本岳「異状死議連に関する誤解を解く」(2009年3月15日発行、「Medical Research Information Center」)

 ここで指す「異状死」とは、「自然死」の対義語としての「異状死」と考えている。ご家族や医師の看取りのもと老衰や病死のため明らかに自然の節理の中で亡くなった方以外のすべての死を含む広い概念である。具体的に言えば、殺人、自殺、事故死、そして孤独死等死因が不明な死体を含むものであり、家や野山や街中や海岸等で発見された死体ほぼすべてを指す。 (略)

 とはいえ、医療の現場において「異状死」の概念があいまいであることは事実だ。 日本法医学会日本外科学会 等で、診療に関する異状死について見解が異なる。その中で、結果的に無罪になったとはいえ福島県立大野病院事件など医師法21条違反で逮捕・起訴された例があることから、これは医療現場にとっては極めて切実な問題でもある。

■「「異状死死因究明制度の確立に関する提言」覚え書き」(橋本岳のブログ)

 死因究明を担う人材が少なすぎるという現実を直視し、かつ法医学だけで死因究明ができるわけでもないということも認識し、それらをひっくるめた教育研究拠点(仮称:法医育成センター)の設立を提唱したことが最大のポイント。 (略)

 死因究明を所管する省庁が寄せ集め無責任状態なことに鑑み、制度改革議論に入る前に、まず死因究明推進基本法(仮称)を議員立法で作り政府に検討推進体制づくりをさせることにしたことも、もう一つのポイント。



医療崩壊危機打開のための民主党・医療改革プラン」(衆議院議員・山田正彦)

 そのまちに私が知っている内科の先生がいまして、その先生から先日呼ばれて、こんな話を聞いたのです。自分は警察医を33年やってきたと。警察医というのは、変死の死体検案書を書かなきゃいけない。ひとり暮らしのお年寄りが亡くなったときに内因死、いわゆる病気による死か、あるいは外因死、首を絞められたものか、そういったことを医者として調べなければいけない。

 警察と一緒に部屋に入ると、それこそ最後だからもう力がないのでしょうね、散らばってしまっている。そこに栄養ドリンクのビンが2〜3本転がっている。その先生の話だと、おそらく1週間水だけしか飲めなかったのでしょうねと言うのです。

 そんな方がこの大村市内に何人いると思うかと言われたのです。私はびっくりしまして、こんな田舎まちでそんな人がいるのですか、と言いました。そうしたら、去年1年間でなんと50人いたと言うのです。ことしは60人になるでしょうと。

 私、早速、警視庁の変死者数の統計を調べてみました。変死者数が平成9年に9万人いたのが、平成15年に15万人になっています。交通事故とか射殺事件で亡くなった人は年間1万4,000〜1万5,000人で変わりません。自殺も3万人前後で変わりません。



自殺予防に関する調査結果報告書」(PDF、総務省、平成17年12月)*2

 変死の原因の約半分は自殺であり、また自殺により毎年約100 万人が死亡しているだけでなく、自殺による経済的損失は数十億ドルとなっているように、自殺は巨大な問題ですが、しかし、大部分は予防できる公衆衛生の問題でもあります、と世界保健機関(WHO)は述べています。 2020 年には自殺による死亡者が150万人に上昇する可能性があると推計されています。

昨年(2008年、平成20年)の日本の変死者数は、16万1838体。 「変死の半分は自殺」というWHOの推計法を当てはめると、8万人以上の自殺がカウントされなかったことになる。 公表された自殺者数3万2249人と合わせると、昨年度の自殺者数は11万人を超え、毎日300人以上の計算になる。

  • 【追記】:
    • 「変死の半分は自殺」とするWHOの推計方法には、どういう根拠があるのでしょうか。
    • 後日のエントリー「異状死・自殺統計に関する疑問」で、さらに詳細に検討しています。 自殺者が「異状死体」の集合に含まれるなら、「異状死体数16万1838体の半分 = 8万919人」 が、自殺者数の推計値になります。



原因・動機別の自殺の状況」(PDF、共生社会政策統括官、平成18年について)

「健康問題」47.9%、 「経済・生活問題」21.7%、 「家庭問題」9.2%、 「勤務問題」6.0%、 「男女問題」2.3%、 「学校問題」0.8%



日本の死因統計のいいかげんさ」(法医学者の悩み事)

 日本の死因統計の年次推移を示したグラフを見ると、1990年代のある年に、心疾患の数が急減し、脳血管疾患に逆転されている(参照)。 この年に心臓疾患の特効薬が発売されたのかといえば、そうではない。これは、厚生労働省が、死亡診断書、死体検案書の欄に心不全とはなるべく書くなと指導した結果、急激に心疾患が減ったというものだ。

 変死者数は人口10万に対して、100人程度が相場だ。一方、心臓疾患で死亡したと診断されているのが、ほぼそれと同じ、人口10万に対して100人だ。多くの変死事例が、心不全とされていたのだが、その診断名がかけなくなったので、心疾患の数が急に減り、くも膜下出血などの脳血管疾患の診断を書くものが増えた。それで、逆転が起こったのだ。しかし、死因診断が適性になったためのに発生した現象ではないところも問題だ。

 このように日本の死因診断は、解剖を経ずに出したいい加減なものであるので、世界的に信用されていない。また、このような死因統計で公衆衛生政策を立てられるはずもないが、一体日本の厚生労働省の仕事は何なんだろう? 嘘の死因統計から嘘の医療行政をするのが日本の行政なのだろうか。



自殺者数、08年は3万2249人。10月だけで3000人…警察庁」(2ちゃんねるより、「何でもありんす」)

40 :名無しさん@九周年: 2009/04/02(木) 10:43:31 ID:2YXybiNf0

 日本では警察が死因究明の検死解剖ができるのは約5000人だけ。 日本では年間10万人が変死扱いで死んでるけど、これが病気なのか殺人なのか自殺なのかは解らずじまい。 自殺者3万人のデータは検死の結果じゃなく、遺書がある場合、回りの人間に自殺宣告して死んだ人のみのカウントだから、衝動自殺とか誰にも何も言わないで自殺はカウントされない。

86 :名無しさん@九周年: 2009/04/02(木) 11:55:47 ID:/9QCDaVM0

 世間体とか生命保険*3のこととか考慮されて、自殺って認定されないのも含めたら、3万どころじゃないって話だな。

533 :名無しさん@九周年: 2009/04/02(木) 23:32:19 ID:OkdsKKnf0

  • 失踪者
  • 変死者
  • 自殺を試みて24時間以内に死ななかった者

ここら辺は自殺者とカウントされない

いわゆる「自殺未遂」は、絶命したケースの10倍はいると言われるが*4、重篤な後遺症が残ろうとも、自殺関連の資料としては統計に現れない。



昭和49年警察白書*5

「変死体数」でページ内検索すると、昭和44年(1969年)〜48年(1973年)は、4万5278〜5万1186体で推移している。 平成20年(2008年)は16万1838体だから、変死体数はこの35年で3倍に増えている。

「変死体の死因別構成比」(昭和48年、以下の円グラフ)では、自殺とされたのが38.3%(検死官1人が平均868体の変死体を取り扱った結果)。 「変死の半分は自殺」とするWHOの推計より、やや少なめの結果になっている。

f:id:ueyamakzk:20090728143020j:image



異状死の届出」(お葬式プラザ)

  • (1)異状死体の届出
    • 一般に医師の治療をうけている患者が、その病気で死亡すると、医師は「死亡診断書」を作成し遺族に交付します。そして遺族は死亡診断書とともに「死亡届」を役場に提出すると、埋火葬の許可がおり、死亡した人の戸籍が抹消されます。しかし医師が死因の不明の異状死体を検案した場合、24時間以内に所轄警察署に届け出なければなりません。この場合、一般に以下の手続きが行われます。
  • (2)「行政検視」と「司法検視」
    • 死因等の不明な異状死体の届出がありますと、警察官は「行政検視」を行います。そして犯罪と関連性やその疑いがある遺体は検察官に報告され、検察官または司法警察員による「司法検視」が行われます。
  • (3)「行政解剖」と「司法解剖」
    • 法医解剖は「行政解剖」と「司法解剖」とに分けられます。行政解剖は、死体解剖保存法などにもとづいて監察医が行います。死因の明らかでない病死者(医師の診断をうけていない病死者など)、自殺者、災害死者、伝染病死者、食中毒死者など、犯罪に関係がない異状死体の死因を究明することを目的とします。司法解剖は、犯罪に関係ある遺体、またはその疑いのある遺体について、死因、死後経過時間などを究明します。


異状死・自殺統計に関する疑問につづく】



*1:読みやすさを優先し、漢数字はアラビア数字に書き換えた。

*2:以下の引用部分そのものは、平成16年(2004年)のWHOの資料。 リンク先に引用されている。

*3:生命保険加入後、一定期間内の自殺による死亡については、保険金が支払われない。 【参照:「自殺免責とは」(生命保険用語辞典)】

*4:参照:「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」(PDF、平成17年7月19日、参議院厚生労働委員会)

*5:「いい加減、変死体を除いた自殺者数が実態を表した統計なのか、気づいて欲しいですが」(2008年6月19日の投稿、「★阿修羅♪」)のリンクより。