経済の死角

トヨタ社長の中国訪問

実は、まるでスター扱いの
「大歓迎」を受けていた

2010年03月16日(火) 週刊現代
週刊現代
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 1日夕刻、リコール問題謝罪のために北京入りした豊田章男・トヨタ社長。世界中からバッシングを受けた彼を待っていたのは、オリンピックのメダリスト並みの"熱烈歓迎"だった。

 中国大手新聞紙記者が、歓迎の様子についてこう語る。

「謝罪会見の後、豊田社長は、『中国のNHK』にあたる中国中央テレビで一番人気のイケメンキャスター、丙成鋼の独占インタビューを受けました。このインタビューが非常にフレンドリーなものだったのです」

 プリウスの最新プラモデルが並べられたインタビュー会場で、甘いマスクの丙氏が、「中国でリコール車種が少ない理由を説明いただけますか」とにこやかに問うと、豊田社長も極めてリラックスした調子で答える。

「私は麻婆豆腐が好物なんですが、日本と中国とアメリカで食べる麻婆豆腐はそれぞれ味が違いますね。『車は道路が作る』と言って、お国の事情に合わせた車作りをしているんですよ」

 番組の中では、世界各国のトヨタ車の保有者たちが「トヨタは素晴らしい」と絶賛する映像まで流され、番組の最後には丙氏が色紙を持ち出して、豊田社長にサインをおねだりする持ち上げぶりであった。

 さらに中国国営新華社通信も、「トヨタという教師が、素晴らしい教訓をくれた」と、トヨタの謝罪をベタ誉めする論評を発表した。これほどまでに中国がトヨタを持ち上げたのはなぜか。中国政府高官が語る。

「ひとつには章男社長が役員時代に中国市場の担当者だったため、われわれが社長に親近感をもっていることが影響しています」

 しかし、それだけではない、とこの高官は続ける。

「今年に入って、米中関係が急速に悪化していることが関係しています。台湾に武器を売り、ダライ・ラマをホワイトハウスに招くなど、中国を刺激するオバマ政権に対して我々は敵対心を持っている。そんなアメリカに糾弾されたトヨタを、われわれは『アメリカの犠牲者』と見ています。歓迎するのは当然です」

 アメリカとの対立の中で日本を自国に引き寄せたい。そんな時にトヨタを叩いて対日感情を悪化させるのは得策ではない、との思惑が働いたということだ。



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