2010年02月16日

大手出版社が、グループを超えてまで「女性誌サイズ統一」に突っ走る「表の理由」と、「裏の目的」

star昨日の日経に出たので。

「大手出版社が女性誌サイズを統一する」という記事。

これ、出版界にいない人には意味不明だと思うので、ちょっと解説。


雑誌の判型(サイズ)は、創刊時の大きな検討事項だ。もって生まれた星回りなのか「創刊経験豊富な編集者」なので、私もその度にあれこれ検討した。

雑誌では「A4変型」というサイズが多い。これ、「変型」ってくらいで、A4をベースにちょっとだけ変えてある。

どう変えるかというと、おおむね「太くなる」方向に変える。つまりA4正寸が297×210mmなのを、297×240mmとかね。


なんでこうするかには明確な理由がある。A判はもともと海外規格で、縦横比の割合が良くない。つまりデザイン的に。長っぽすぎるのだ。デザイン的には和紙由来のB判でもいいんだけど、グラフィカルな雑誌にはB5は小さすぎて向かない(もちろんB4じゃ大きすぎ)。

なもんで、雑誌創刊時には、A4の縦横比を変えるのが一般的。でまあ、太くするわけだ。

「270×210mmでいいじゃん」と思い付いたあなたは偉い! たしかにそれでも縦横比は変えられる。しかもコストが安い。これならA4用紙を切れば済むけど、広くする方向(A4ワイドっていう)だと、要は特注になるので紙が高くなる。まあ、もうちょっと読んでよ。


同じA4ワイドでも、これまで各社(どころか各誌)バラバラだったのは、媒体の個性を追求するため。

おおざっぱに言えば、より幅広のほうがデザインバランスが良くてしかも書店でも目立つし誌面も華やかになる。だから、先行誌を圧倒したい「後発誌」のほうが、コストも勘案しておおむね「ちょっとだけ」大判になる。さらに後発誌がこれを繰り返すから、どんどん太くなってっちゃう。生物学で言う「定向進化」(笑)。

前述の「270×210mm」みたいな縮小路線を採る媒体が少ないのも、同じ理由(中にはこういった雑誌もあるよ当然)。


もちろん欠点はある。広ければ広いほどコスト高。加えて、他誌とあまりに違う判型だと、広告主はその雑誌用に広告版下を別に作らざるを得ない事態も発生し、媒体に力がないと嫌がられて広告が減ったりする。


――とまあ、こうした損得を考え合わせて判型が決められていく。


で、今回小学館・集英社から、講談社・光文社、さらには主婦の友と、グループを越えてまで共通化に踏み切るのは、もちろん不景気で上記の欠点のほうが重要な時代になったからだ。

媒体は、ViViやCanCam、Oggi、JJ、Very、MORE、Rayといった25誌程度。私の立場から見ていると、「思い切ってやったなあ」と感心する。


サイズは297×232mm。これで紙発注を共通化できコストが下がる。輸送費用も多少は下がる。広告版下の使い回しも利くから機会損失が減る(多分これが一番デカイ目的)。


あと「裏の目的」として、将来の電子雑誌配信を見据えているだろう。リーダーだのシステムの共通化が楽だもんね。


ちなみにもちろん安いのは、A4正寸のまま。だからデザインの優先順位が低い通販カタログなんかは、A4が多い。見てるとやんなるよ。開きにくいし(ひどい奴だと紙の目が逆だったりする<多分コストダウンのためと思うが)。

editors_brain at 08:17│Comments(3)TrackBack(1)この記事をクリップ!マスコミクリップ 

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この記事へのコメント

1. Posted by 匿名   2010年02月16日 14:16
A判もB判も比率は同じ。1:√2です。
2. Posted by tokyo editor   2010年02月16日 15:56
ありゃ、これは失礼しました。ご指摘ありがとうございます。今から修正します。
3. Posted by tokyo editor   2010年03月13日 02:02
もう少し書きます。

広告版下の使い回しも利くから機会損失が減る(多分これが一番デカイ目的)。

と書いたけど、そのもっとあからさまな意味を書けば、おそらく「タダ広」対策。

今度書きます。

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