韓国ソフトウエア産業の限界(中)

 ハンコンは何もしなくても金を稼ぐことのできる企業だ。韓国最大の顧客である政府が、毎年大量に同社のソフトウエアを購入しているからだ。例えば昨年、政府や教育機関は同社製のソフト「オフィス」を226億ウォン(約18億円)相当購入し、昨年のオフィスの売上高は364億ウォン(約29億円)だった。オフィスは資材や部品が必要ないソフトウエアのため、生産に伴う追加費用は事実上ゼロだ。オーナーが背任や横領さえしなければ、つぶそうとしてもつぶれない構造になっているわけだ。

 今年もハンコンは、過去にないほどの大きなチャンスを迎えている。マイクロソフト(MS)が同社製のオフィスで作成した文書を他社のプログラムでも読み書きできるよう標準化(オープンXLM)し、公開したからだ。以前はMSオフィスで作成した文書をハンコン・オフィスで読み込むと、文字や記号、表などが正しく表示されないトラブルが多く発生していた。その逆も同じだった。

 そのため、ハンコンが今年発表した「オフィス2010」を利用すれば、MSオフィスで作成した文書も自由に取り扱うことができる。一方MSオフィスでは、ハンコン・オフィスで作成した文書の読み書きはできない。

 しかし、このような状況はいつまでも続かない。ハンコンも標準化に向けた作業を開始しており、長い目で見て、標準化にこぎ着けたいと考えている。つまり、数年以内にはハンコン・オフィスで作成した文書を、MSオフィスでも読み書きできるようにするということだ。ところが、こうした重要な時期に社内でまたもや問題が起こった。

ハングルとコンピュータ社が最近発売したソフトウエア「ハンコン・オフィス2010」。/写真=朝鮮日報DB

■「1%の市場」「巨大ポータル」「違法コピー」がソフトウエア産業の障害

 ハンコンは「IT(情報技術)大国」といわれる韓国で、なぜ大手のソフトウエアメーカーが存在しないかを端的に示している。ハンコンの限界はつまり、韓国ソフトウエア産業の限界でもある。

 まず、ハンコンにとって最大の悩みは市場規模だ。例えば、MS全体の売り上げで韓国市場が占める割合は、わずか1%程度。それ以外の世界的な大手ソフトウエアメーカーでも、全体の売り上げの中で韓国市場が占める割合は1%前後だ。つまり、韓国は1%市場ということだ。ハンコンは昨年、経常研究費として66億ウォン(約5億3000万円)を投入した。一方のMSは、研究開発費として毎年およそ9兆ウォン(約7200億円)もの資金を投資している。ハンコンとMSが競争すること自体、驚くべきことだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る