タクシー乗車拒否、監視カメラは無用の長物

6日、タクシーの乗車拒否を取り締まる監視カメラが設置された江南駅周辺で、タクシーを拾う人たち。/写真=イ・ジンハン記者

 「腹が立ちますよ。窓越しに行き先を聞いて立ち去ったタクシーがもう5台です」

 友人とお酒を飲んだ後、キム・ファンウクさん(25)は6日夜12時ごろ、ソウル・江南駅近くでタクシーに乗って帰ろうとしたが、30分が経過しても拾えなかった。その周辺の道路沿いは、タクシーを拾おうとする人たちでごった返していた。

 ある20代の女性は、タクシーの運転手に「料金を2倍払うから」と頼み込んだり、酒に酔った10人連れは、タクシーを拾おうとして車道に飛び出し、危うく事故になるところだった。

 同地域では頻繁に乗車拒否が行われているため、ソウル市が2月初めから監視カメラで乗車拒否を取り締まっている。午後10時まで作動する違法駐車の監視用カメラを活用し、夜10時以降、タクシーの乗車拒否を取り締まろうという試みだ。

 ソウル市は、江南駅の近くにあるファッションブランド「GIORDANO」の店舗前と駅三洞CGV前の2カ所に、試験的に監視カメラを設置したが、1カ月たっても事情は改善されていない。監視カメラの下に設置された「2月1日から監視カメラによるタクシーの乗車拒否を取り締まり中」という電光板は無用の長物と化していた。

 長距離の客を探すタクシーが多かった。夜12時30分ごろ、「GIORDANO」前の監視カメラ周辺の道路沿いには、タクシーが10台ほど並んでいた。エンジンをかけたまま外でたばこを吸っていたタクシー運転手イさん(62)は、汝矣島や加陽洞など近距離の客には見向きもしなかった。イさんは「監視カメラによる取り締まりが行われているのは知っているが、特に心配はしていない」と語った。

 タクシー運転手が監視カメラによる取り締まりを気にしない理由は簡単だ。乗車拒否を処罰するには、乗車を拒否された客がソウル市の苦情受付窓口の茶山コールセンター(局番なしの120番)に連絡し、監視カメラの映像と照合する事実確認を経なければならないからだ。子どもを連れてタクシーを拾おうとしていた主婦シンさん(36)は、「鷲梁津までと言ったら、10数台が立ち去った。腹が立つのでどこかに訴えたいが、帰宅が遅くなって面倒なため、苦情を訴える人はあまりいないだろう」と話した。

 ソウル市は今後、監視カメラによるタクシーの乗車拒否の取り締まり地域を11カ所に拡大する予定だが、こうした問題点を是正しない限り、効力を期待するのは難しいとみられる。

 なお、ソウル市での監視カメラによる取り締まりは、ソウルナンバーのタクシーだけが対象のため、京畿道ナンバーのタクシーは取り締まりの対象から外されている。この日、江南駅前のタクシーの列には、京畿道ナンバーのタクシーが3割ほど混じっていた。

金成謨(キム・ソンモ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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