鈴木みのるとの遺恨の果てに全日本プロレス初の金網マッチを行い、勝利した船木誠勝(上)=両国国技館
「全日本」(21日、両国国技館)
止まったままの時計が動きだした。新日本プロレス、第2次UWF、パンクラスと行動をともにしながらたもとを分かった船木誠勝(41)と鈴木みのる(41)の決着戦として行われた全日本史上初の金網デスマッチは、流血戦の果てに船木がヒザ蹴りでKO勝ち。積年の遺恨にひとまず終止符を打った。
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船木が頭突きをブチ込めば、鈴木は金網にたたきつける。5分もたたずに2人の額からは血が噴き出した。時間制限もロープエスケープもレフェリーストップもない極限状況で殴る、蹴る、張る、絞める、決めるというつぶし合いの末、船木が右ハイ、浴びせ蹴り、張り手9発、ヒザとラッシュ。前のめりに倒れた鈴木に、和田レフェリーはKOを宣告した。
理想の格闘技を目指して93年にパンクラスを旗揚げしたものの04年に決別した2人が再会したのは、昨年8・30両国大会で船木がプロレス復帰を果たしてから。試合が組まれるたびにお互いが大暴走し、オリの中に行き着いた。
船木は「アイツがオレに訴えたいことを少しは体で教えられた気がする」と、横たわる鈴木に一礼。バックステージでは「1つの結果を出したので、自分の気持ちでは次に進める」と、穏やかな表情を浮かべた。
とはいえ90年4・15博多、94年10・15両国、そして昨年9・26横浜大会に続き対船木4戦全敗となった鈴木の心中が穏やかなはずもないが、船木は「次に会う時はまた別の気持ちで戦いたい。向こうが憎しみで来てもけっこう。全部受け止める」ときっぱり。「思い切り正面から向かってくる鈴木は、昔の顔をしていた」と1人、かつての友愛を取り戻したかのようだった。
(2010年3月22日)