埼玉県警は17日、採用試験のポスターなどに使った「守りたい、『ひと』がいる。」の表現が、陸上自衛隊の商標権を侵害している恐れがあるとして、ポスターなど約2万枚の回収を始めた。陸自は01年、設立50周年を記念して作ったキャッチコピー「守りたい人がいる」を商標登録している。警察庁が08年に出した警察官採用の新聞広告でも使われて警察庁が謝罪した経緯があり、陸自の担当者は「警察が同じミスを繰り返すのは信じられないが、いいキャッチコピーだったんですね」。【樋岡徹也】
陸上幕僚監部によると「守りたい人がいる」は00年、シンボルマークとともに作成。01年に商標登録し、陸自のホームページや関連施設を紹介するパンフレット、関連グッズなどに使っている。「守りたい人」とは、家族や地域の人、日本の美しい自然や文化を表しているという。
一方、埼玉県警は09年から、警察官採用試験を告知するポスターとチラシに「明日のために。未来のために。守りたい、『ひと』がいる。」と記載してきた。ポスターは今年もJR中央線の車内や埼玉県内の警察施設などに掲示され、県警ホームページでも同様の文言で表示していた。
県警側は毎日新聞記者の指摘で事実関係を把握。県警採用センターの担当者らが17日に防衛省を訪れ、「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と陳謝し、「法律を守る警察として疑いのあるものは使うべきではない」として回収を決めたことを伝えた。既に、ポスターとチラシ各約1万枚の回収を始めたという。
県警の担当者は「警察庁が指摘を受けていたことを承知しておらず、商標登録のことも知らなかった」。陸自の担当者は「苦労して考えたコピーなので、今後は使用を控えてほしい。なぜ警察が同じ誤りを繰り返すのかと思ったが、回収まで決めてくれたので了解した」と説明している。
毎日新聞 2010年3月18日 東京朝刊