だが、仮に腕っ節の強いやつらが、楽な椰子の実拾いを独占したらどうなるか。全体の生産性は確実に低下するはずだ。要するに、能力のある人間がある程度リスクを取ってくれるようなシステムがないと、人材の適所適材が進まず、全体は必ず伸び悩むということだ。
これこそ、日本経済が過去15年にわたって低迷し続けている原因だろう。本来ハイリスクに挑むべき人材が大企業に入り、規制によってそこそこのリターンを独占&満足する。そうでない弱者がローリターンな底辺で働き、二階部分のハイリスクまで引き受ける。本当は雇用システム全体をパッケージで見直すべきなのに、保守派は「自己責任だ」とふんぞりかえり、共産党は「資本階級が悪い」と赤旗の拡販に利用する。
そりゃ一人頭GDPでシンガポールに負けるはずだ。こんなおかしなことやってる国は他にないのだから。全体のパイを増やすには、魚獲りも椰子の実拾いも、後から自由に行き来できるような仕組みが必要なのだ。
なんて発想は連合というケツ持ちのいる民主党にはさらさら無いようなので、もうしばらく苦難の時代は続くはず。椰子の実を拾う人は低い労働生産性を長時間残業で、海に入る人はリスクを気合でカバーするしかなさそうだ。
城 繁幸
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