東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > 3月7日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【栃木】

習慣や言葉の壁越えて 宇都宮で初の『中国帰国者交流会』 

2010年3月7日

手作りの日本食を囲みながら会話を弾ませる中国帰国者と市民ら=宇都宮市で

写真

 戦後、大陸に取り残され、その後帰国した元中国残留邦人と市民らが交流を深める「中国帰国者交流会」(宇都宮市主催)が六日、市総合福祉センターで開かれた。高齢化が進み、地域から孤立しがちな帰国者が増える中、茶会や歌などを通じて中国と日本の文化に親しみ、触れ合いを楽しんだ。(横井武昭)

 「こうやって気軽に中国語で話せるのはうれしい」。香り豊かな中国茶を手に、会に参加した市内在住の帰国者二十人のおしゃべりが弾む。残留邦人の一人、手塚秀雄さん(65)=同市江曽島町=もほっとした表情を浮かべた。中国・ハルビン市で生まれ、一九九二年に帰国したが、日本語はほとんど話せない。「病院で症状も説明できないし、電話も駄目。普段の生活は不便が多い」と話す。

 市によると、県内に住む中国帰国者は五十八人。多くが七十歳を超え、長年の中国での生活による習慣の違いや言葉が壁となり、自宅に閉じこもりがちになるという。

 交流会は帰国者同士や市民との出会いの場をつくろうと市が初めて開催。太極拳や中国式じゃんけんゲームで体を動かし、マーボー豆腐やけんちん汁などの料理を味わうと、自然と笑みがこぼれた。八八年に帰国した伊藤高代さん(65)=同市平松本町=は「食べ物や生活にも慣れ、やっと自分には故郷が二つあると思えるようになった。これからもこうした交流の機会を持ちたい」と笑顔を見せた。

 交流会後には地域の民生委員らを対象にした研修も開催。「中国帰国者支援・交流センター」(東京都)の職員が、残留邦人を生んだ歴史的背景や現状を紹介し、「帰国者が育った異文化への理解と尊重を大切に、地域の一員として迎えてほしい」と呼び掛けた。

 

この記事を印刷する