きょうの社説 2010年3月22日

◎広がる動産担保融資 生かしたい地域金融の新手法
 企業の商品在庫や機械設備、農畜産物などの動産を担保にした融資が増加し続けている 。北陸銀行に続いて北國銀行も専門会社と業務提携を結び、動産担保融資の拡大をめざしている。

 金融庁は、不動産担保や個人保証に過度に頼らない、新たな「地域密着型金融」として 動産担保融資の普及を促している。この金融手法が定着、拡大するかどうかは地域経済振興の一つの鍵といってもよく、北陸の各金融機関もそのノウハウの蓄積、向上に努めてもらいたい。

 動産担保融資は、動産譲渡の登記制度が法的に整備された2005年度から普及し始め た。金融庁の調査では、全国の地域金融機関(地銀、信金、信組)が05年度に実施した動産担保融資は27件、47億円だったが、08年度には1387件、585億円となった。

 担保となる不動産や人的保証が不十分なために融資を受けるのに苦労している中小企業 やベンチャー企業にとって、動産担保融資は新たな資金調達の道を開くものであり、金融機関も新しい融資先を開拓できることになる。

 また、農地法などの規制で担保になりにくい農地に替えて家畜や農産物なども担保にな り得ることから、事業の拡大や農商工連携による新ビジネス展開に意欲を持つ農業法人などにとっても、ありがたい融資手法である。

 こうした利点のある動産担保融資を地域の経済活動に生かすことが望まれる。が、不動 産と違って動産の担保価値の評価は難しく、価格変動や品質変化などのリスクも伴うため、各金融機関は動産の評価能力とリスク管理能力を高める必要がある。北陸を含め全国の地域金融機関はまだまだ動産担保融資に慎重であるが、動産の評価や管理などで実績のある専門会社との提携は、動産担保融資のノウハウを蓄積し、着実に融資実績を伸ばす一つの方法である。

 一方、融資を受ける側も動産の品質管理能力を高めなければならない。金融機関への定 期的な事業報告など農業者らには不慣れな業務も必要になるが、それは経営の高度化につながることであり、しり込みをしてはなるまい。

◎迷走自民党 対立恐れず議論深めよ
 普天間基地問題などで迷走する鳩山政権と同様、出直しを図る自民党も混迷の度合いを 深めている。谷垣禎一総裁ら執行部への批判がここへ来て一挙に吹き出し、鳩山邦夫元総務相が離党して新党結成を表明した。

 鳩山内閣の支持率が30%台にまで落ちているというのに、千載一遇のチャンスを生か せず、自民党への支持が広がらない。鳩山首相や小沢一郎民主党幹事長の「政治とカネ」に対する追及は十分な成果を挙げたとは言い難く、審議拒否戦術も尻すぼみに終わった。

 こんな事態を招いた原因は明らかだ。論議をすれば亀裂が深まり、結束が難しくなる。 対立を恐れるあまり、相次ぐ批判に正面から向き合おうとしないから、国民もいらだちを募らせ、失望を隠せないでいるのだろう。

 執行部として、党内対立を恐れる気持ちは分からぬでもないが、徹底した議論抜きに、 党の再生は不可能だ。長らく政権与党の座にありながら、なぜ国民から見放されてしまったのか。民意が離れた原因を直視し、再び支持を得るにはどんな政策目標を打ち出せばよいのか、真剣な議論がさっぱり見られないのは残念だ。

 「結束」を叫ぶだけで、この危機を乗り切れるほど甘くはない。野党となった今、失う もの、恐れるものは何もないはずだ。血を流す覚悟で、古い自民党を打ち壊し、廃墟の中から立ち上がる決意がなければ、政権を託せる政党として再生するのは難しいだろう。徹底して議論を戦わせる中からこそ、党再生の希望が生まれてくる。

 鳩山政権は「政治とカネ」の問題で自浄能力を欠き、鳩山首相のリーダーシップに疑問 符が付けられている。外交や経済対策も危なっかしく、このまま政権を委ねていくことに不安を感じている国民は多いはずだ。

 そうした声にこたえるためにも、この国の将来像をどう描いていくのか、そのための具 体策を論じ合う姿を見せてほしい。とことん議論を尽くし、これまでとは一線を画す政策目標を示すことができたとき、今夏の参院選に勝つ芽が出てくるのではないか。