きょうの社説 2010年3月21日

◎玉泉院丸庭園の整備 都心に向けた城の入り口に
 金沢市の広坂緑地で4月に「しいのき迎賓館」がオープンし、宮守(いもり)堀の水堀 化も完成すれば、金沢城公園と広坂緑地を結ぶ、いもり坂の往来も増えるだろう。いもり坂に面して整備される玉泉院丸庭園について、県は金沢城公園と中心市街地をつなぐ「エントランス・ゾーン」と位置づけているが、広坂緑地の整備が進んだことにより、入り口としての機能強化は今から必要である。

 玉泉院丸庭園の整備では、新年度は引き続き埋蔵文化財調査が行われ、2014年度の 北陸新幹線開業へ向け、暫定整備の基本計画がまとめられる。完成までに長い時間を要するが、そうであればなおさら、復元に至る工程を見せる工夫が重要になる。

 玉泉院丸庭園の最大の見所は借景となっていた多彩な石垣群であり、「石垣の博物館」 と称される金沢城の中でもとりわけ芸術的な価値が高い。今は樹木に遮られ、庭園跡から全容は見えにくいが、せめて石垣景観だけでも眺望できれば、調査や工事中であっても魅力的なゾーンになる。樹木の整理を含め、まず借景景観の創出を優先させることを考えてほしい。

 玉泉院丸庭園は三代藩主利常が京都から庭師を招いて作ったとされ、江戸後期の地図に は大きな池に3つの中島や橋、護岸の石垣などが描かれている。現存する周囲の石垣群は「色紙短冊積み」をはじめ、見せることを意識した積み方に特徴がある。

 庭園跡の周囲には昨年、見学ルートができたが、樹木に隠れて石垣景観は十分には見え ない。貴重な巨木は保存を検討するとしても、樹木を整理すれば、完成を待たずにパノラマの石垣景観が出現し、玉泉院丸庭園の魅力が一足早く楽しめる。庭園復元への期待感も一層膨らむだろう。

 発掘調査では、泉水の遺構や中島、出島などが見つかり、庭園の姿が徐々に浮かび上が ってきた。加賀藩の庭園史のなかでも異彩を放つ存在であり、広大な空間がどのように変貌していくのか市民、県民の関心も高い。

 現場は金沢城公園の西端でも、市街地の真ん中である。見学会なども増やし、「平成の 築庭」を効果的に発信していきたい。

◎違法サイト対策 管理者の責任も追及を
 インターネット上の児童ポルノ画像や薬物取引などの違法情報に関する昨年中の民間団 体への通報が、前年比約95%増の約2万7800件に上ることが分かった。件数急増の背景として、民間によるサイバーパトロールの強化や、ネット利用者の協力の広がりが挙げられるが、ネット社会がますます犯罪の温床と化している現実は極めて深刻である。

 警察庁は違法サイト対策として、削除依頼に応じない管理者の取り締まりを強化する方 針を固めた。具体的には、ほう助罪の適用などを検討するという。個別の事件摘発に限界がある以上、犯罪の舞台を提供するような管理者には、より踏み込んだ対応が必要である。削除要請に実効性を持たせるためにも、悪質なケースは積極的に刑事責任を追及してほしい。

 警察庁の業務委託を受け、財団法人「インターネット協会」は2006年から「インタ ーネット・ホットラインセンター」で情報を受け付け、サイト管理者らへの削除要請のほか、違法情報であれば警察庁に通報している。

 昨年中の違法情報の内訳は、わいせつ画像が最も多く、次いで児童ポルノ関連、規制薬 物の広告、口座などの売買情報、違法な携帯電話取引などとなっている。

 違法情報のうち約1万6500件の削除を依頼したが、12%に当たる約2千件は放置 され、このうち87%は特定の10業者で運営するサイトに集中することが分かった。そうした業者は違法性を認識している可能性が高く、センターだけでなく、警察が直接、削除を求めてよいだろう。

 昨年は児童ポルノDVDを販売するサイト管理者が児童ポルノ禁止法違反ほう助で書類 送検されたほか、覚醒剤の譲り渡しや使用を手助けしたとして、サイト管理者が麻薬特例法違反のほう助で逮捕された事例もある。

 共犯の責任をどこまで問えるか、違法性の認識の有無を含めて捜査には壁もあるが、違 法情報の通報がネット社会の氷山の一角と考えれば、警察の積極的な摘発姿勢は、サイト管理者に自覚を促す一定の抑止効果が期待できる。