【萬物相】審判買収

 昨年11月、ドイツ検察当局がチャンピオンズ・リーグを含む欧州プロサッカーで少なくとも200試合に八百長があったとして、マフィア関係者17人を逮捕した。容疑者らは選手、監督、審判らを買収し、八百長行為を仕組んでいた。捜査当局は少なくとも1000万ユーロ(約12億円)が動いたとみている。また2006年には、イタリアの名門サッカーチームとして知られるユベントスが審判を買収した八百長事件が発覚し、ユベントスは優勝が取り消された。

 今年1月、中国サッカー協会の張建強・元審判委員会主任が公安当局に逮捕された。山東省出身の張氏は中国サッカー界の実力者だった。彼の指示で動いた審判が2000年から01年にかけ、9回にわたり計37万元(約490万円)のわいろを受け取っていたとして、収賄罪で懲役10年の実刑判決を受けた。ギャンブルがらみの八百長行為が拡大していることを受け、中国サッカー協会は昨年11月、八百長、賭博などの犯罪行為に厳しく対処していく姿勢を明らかにした。

 不正まみれの審判が思い通りにホイッスルを吹く行為を中国では、「黒哨(ヘイシャオ・黒いホイッスルの意)」と呼ぶ。昨年9月12日、ソウルの蚕室オリンピック・メーンスタジアムで行われた延世大と高麗大のサッカー定期戦で、延世大監督は「なぜ高麗大の反則にはホイッスルを吹かないのか」と抗議し、退場を命じられた。それまで4年間で2敗2引き分けだった高麗大は、この試合に2-1で勝利した。ところが、この試合をめぐっては、高麗大監督が主審に1000万ウォン(約80万円)、副審に500万ウォン(約40万円)のわいろをそれぞれ渡していた事実が警察の捜査で明らかになった。

 韓国にはサッカーの審判員が約1800人いる。彼らの大半は安定した職業を持たず、月50万-60万ウォン(約4万-4万8000円)という審判報酬では生活が苦しい状況だ。契約職の大学サッカー部の監督は、ポストにとどまるため成績を上げることに必死にならざるを得ない。問題の高麗大監督も保護者から集めた資金の一部をわいろに充てていた。1年2カ月の間にチームの運営費用として保護者から集めた資金が5億8000万ウォン(約4600万円)に上るというから、何とも呆れる。子供を人質に取られ、監督に振り回されていた保護者が警察に通報し、今回の「黒い取引」が明るみになったというわけだ。

 アマチュアの舞台、それも韓国を代表する名門私立大学の親善試合でさえ、裏でカネが動いていたことには憤りと不信感を禁じ得ない。青少年が競う学生スポーツで審判の金品授受は公然の秘密となっている。フェアプレー精神まで放棄したスポーツが学校という教育の現場で行われる理由はもはやない。

趙正薰(チョ・ジョンフン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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