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社説:民主・生方氏解任 党を暗く閉ざすのか

 これが鳩山由紀夫首相が言うところの「民主党らしさ」とは、とても言えまい。民主党は小沢一郎幹事長の党運営などをめぐり批判を展開していた生方幸夫副幹事長の解任を決めた。

 鳩山内閣の支持率が急落する中、党のあり方をめぐりさまざまな議論が党内で起きることは、むしろ自然とすら言える。生方氏をいきなり解任する行動はあまりに強権的で、議員の自由な発言すら封殺しかねない愚挙と言わざるを得ない。

 何とも異様である。解任の直接の原因とみられるのは産経新聞が掲載したインタビューだ。この中で生方氏は「民主党の運営は中央集権。権限と財源をどなたか一人が握っている」と事実上、小沢氏による党支配を批判、首相に小沢氏を注意するよう促した。これに反応したのが小沢氏に近い高嶋良充筆頭副幹事長だ。「外部に向かっての批判は問題」と生方氏に辞任を迫り、副幹事長会議で解任方針を確認した。小沢氏も「残念だ」とこれを了承したという。

 唐突な解任には伏線がある。生方氏は小沢氏が廃止した党政調の復活を求めるグループの中核的存在で、小沢氏に対する不満の受け皿だった。このまま生方氏を放置すれば「政治とカネ」をめぐる小沢氏の幹事長辞任論が拡大しかねない、との思惑が働いたのだろう。

 だからといって、いきなり排除する手法はまったく理解できない。小沢氏の資金管理団体を舞台とする事件や党の運営をめぐり党内で自由な意見があまり聞かれない党の閉鎖性や体質にこそ国民はむしろ、不信を強めているのではないか。

 国会議員は有権者の代表として自らの所見を語る責任があり、メディアへの発信もその一環だ。政党幹部の言動として問題があると執行部が判断したのであれば十分に事情を聴き、必要に応じ注意をするなど、対応は他にいくらでもあるはずだ。そもそも生方氏は役員会や常任幹事会のメンバーでもなく、党内で意見を言う場もほとんどない。問答無用とばかりの解任は、小沢氏批判を含む自由な議論を封じるための威嚇とみられても仕方あるまい。

 生方氏は反発を強めており、党内対立は深まりそうだ。閣僚にも解任を疑問視する声が出ているが、今回の事態は国民の民主党への強い失望を招きかねず、深刻だ。従来の政治にない清新さを期待し政権交代を選択した有権者の目に、古い体質の締め付けはどう映るだろう。

 党のイメージを決定づけかねない局面にもかかわらず、首相は「外でさまざまな声を上げれば、党内の規律が守れない」と解任を支持した。これでは見識が問われる。

毎日新聞 2010年3月20日 2時31分

 

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