大河ドラマ『独眼竜政宗』

ドラマ昭和60年代1980年代た-と


平均視聴率“大河歴代1位”
『天地人』直江兼続と対決する奥州の覇者


番組ノート

 大河ドラマ『独眼竜政宗』は、1987(昭和62)年に放送された大河ドラマ第25作。
 年間平均視聴率で大河ドラマ歴代最高の39.8%を記録した人気ドラマで、今やハリウッドスターとなった渡辺謙さんの大河ドラマ初主演作である。
 主人公の伊達政宗(1567~1636)は、2009年の 大河ドラマ『天地人』の主人公、直江兼続(1560~1619)と同時代を生き、『天地人』でも重要な役どころで登場する。
 今回は、そんな『独眼竜政宗』の魅力をご紹介しよう。

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4年ぶりの戦国時代劇で視聴率アップ

 第21作の『徳川家康』の後、大河ドラマはマンネリを打破し新たな時代を開拓するため、“近代路線シリーズ”に挑戦した。太平洋戦争期を描いた『山河燃ゆ』、明治の群像『春の波濤』、戦後を舞台に女医の一生を描いた『いのち』。意欲的な作品が並んだが、従来の大河を望む声も強く、4年ぶりの戦国時代劇として登場したのが『独眼竜政宗』だった。
 制作統括の中村克史チーフ・プロデューサーは当時「あらゆる人が見てくれるドラマを目指す、戦国時代のホームドラマ路線」と語っている。
 結果、年間平均視聴率で大河ドラマ歴代最高の39.8%を記録。1回だけの最高視聴率でも、第2作『赤穂浪士』(53.0%)、第26作『武田信玄』(49.2%)に次ぐ第3位(47.8%)に入っている。

タイトル前の解説コーナーを初めて採用

 今では大河ドラマ恒例となった「アバンタイトル(オープニングタイトルの前)の解説コーナー」。ドラマの時代背景、史実をコンパクトにまとめて好評だが、これを初めて採り入れたのが、『独眼竜政宗』だった。
 例えば、第4回のアバンタイトルで取り上げた「政宗と、秀吉、家康の年齢差があったのか?」というテーマ。政宗が生まれた時、すでに秀吉は31歳で前年に墨俣の一夜城を築き信長に認められ、家康は25歳で信長との同盟を強化していた。政宗が中央政界に乗り出そうとした時、すでに天下の趨勢は決しており、“20年遅れてきた男”と言われる。この年齢差を、放送の前年にプロデビューした清原和博と、長嶋(31歳上)、王(27歳上)に置き換えて、わかりやすく説明した。

「梵天丸もかくありたい」

 ドラマは政宗の母親、義姫(岩下志麻)が父輝宗(北大路欣也)に嫁ぐシーンから始まる。長男として生まれた後の政宗、幼名・梵天丸(藤間遼太=現・藤間勘十郎)は、5歳の時に疱瘡(天然痘)にかかり、右目を失明。沈みがちな性格になるが、虎哉和尚(大滝秀治)の教育でたくましく育っていく。
 不動明王が恐ろしい形相とは反対に、慈悲深い仏であると知って衝撃を受けたシーンで「梵天丸もかくありたい」と言ったセリフは大ブームとなった。また、政宗が13歳の時に輿入れした愛姫(めごひめ)の少女期を美少女タレントの後藤久美子が演じて大人気となった。

悲劇、骨肉の争いの連続

 政宗の半生は、シェークスピア張りの悲劇、骨肉の争いの連続だった。
 18歳で父から家督を継いだ政宗は、知将・片倉小十郎(西郷輝彦)、勇将・伊達成実(三浦友和)とともに、奥州の覇者をめざす。そして、父・輝宗を自分の鉄砲隊で敵将もろとも撃つ惨劇や、重臣・鬼庭左月(いかりや長介)を失った人取橋の合戦を経て、次々と領土を広げていった。
 しかし、天下は豊臣秀吉(勝新太郎)の統一目前。政宗は、秀吉の小田原征伐に参陣して恭順の意を示すか、一戦交えて有終の美を飾るか去就を決めかねていた。その際、母親(岩下志麻)が弟の小次郎(岡本健一)に家督を譲らせようともくろんで、政宗の毒殺を仕掛け、政宗はやむなく実の弟を惨殺する。
 その後も、天下への野望を打ち消しがたく、百姓一揆を煽動した“鶺鴒の花押”事件や、関ヶ原の合戦の混乱に乗じて勢力拡大を図った。
 しかし、天下は徳川家康(津川雅彦)のもととなり、大坂夏の陣が終わると、政宗はようやく天下への野望を捨てることになる。そして、ドラマのラスト、長年連れ添った愛姫(桜田淳子)をねぎらい、大往生を遂げる。

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 伊達政宗は、2009年の 大河ドラマ『天地人』で、主人公・直江兼続のライバルとして登場。派手好きで自己主張が強い性格は兼続の正反対で、母の愛に飢えた壮絶な幼少期の影響で、すべてを手に入れたいという支配欲が極めて強い、という設定になっている。この政宗を松田龍平さんが演じる。

 『独眼竜政宗』では、直江兼続の登場シーンは残念ながらなかったが、松田さんと、渡辺謙さんが演じた政宗との違いも楽しんで欲しい。また、『天地人』では、渡辺謙さんの娘、杏(あん)さんが政宗の正室、愛姫を演じるのも見どころのひとつだ。


◇放送期間:1987(昭和62)年1月4日~12月13日(日)
  全50回
◇放送時間:総合テレビ 日曜 20:00~20:45
◇原作:山岡荘八
◇脚本:ジェームス三木
◇音楽:池辺晋一郎

◇出演:伊達政宗:渡辺謙
            藤間遼太(幼年期の梵天丸)
            嶋英二(少年期の藤次郎)
    父・伊達輝宗:北大路欣也
    母・義姫(お東の方、保春院):岩下志麻
    弟・伊達小次郎政道:岡本健一
    正室・愛姫:桜田淳子
           :後藤久美子(少女期)
    側室・猫御前:秋吉久美子
    政宗の長女・五郎八姫(いろはひめ):沢口靖子
    政宗の従兄弟・伊達成実(しげざね):三浦友和
    傅役、のちの参謀・片倉小十郎:西郷輝彦
    重臣・鬼庭左月:いかりや長介
    乳母・片倉喜多(鬼庭左月の娘):竹下景子

    義姫の兄・最上義光:原田芳雄
    輝宗の叔父、成実の父・伊達実元:竜雷太
    政宗の師・虎哉宗乙(こさいそういつ):大滝秀治

    豊臣秀吉:勝新太郎
    北政所:八千草薫
    淀君:樋口可南子
    豊臣秀次:陣内孝則
    石田三成:奥田瑛二
    浅野長政:林与一
    蒲生氏郷:寺泉憲

    徳川家康:津川雅彦
    家康の六男、五郎八姫の夫・松平忠輝:真田広之

みなさんからの投稿

渡辺謙さんの堂々たる演技はもちろん印象に残っていますが、いかりや長介さんや西郷輝彦さん、三浦友和さんなど脇を固める方々の人間味あふれた演技も大変懐かしいです。三浦友和さんがすごくいい役者さんだなあと思った作品でした。確か、紅白に鎧兜で皆さん出られましたよね。

(pinga)

投稿日2009年01月09日 22:13


政宗が心ならずも弟・小次郎を殺すシーンは可哀想でしたね(涙)。
強烈だったのは、輿入れ道中のお東が、突進してきた猪を自ら射るところ。花嫁なのにっ!(笑) でもこのシーンで、お東の“人となり”が一瞬でわかっちゃいましたものね。
最後まで面白かったけど、政宗臨終の時、“梵天丸もかくありたい”の藤間遼太くんはじめ歴代の“政宗”が登場しちゃって、サービス満点な大河だなぁ~って思いました(笑)。
あと、思い出すのは、この年の紅白の応援で政宗(謙さん)、小十郎(西郷さん)、成実(三浦さん)がタキシード姿で登場したことかなぁ~。もちろん、政宗は眼帯してました!(笑)

(更紗)

投稿日2009年01月10日 15:05


>pingaさん、更紗さん
渡辺謙さん、西郷輝彦さん、三浦友和さんが 第38回紅白歌合戦に出演されたシーンの写真がありました。
お三方ともタキシードとぱりっと着こなし、それぞれ、劇中でかぶっていた兜を小脇に抱えて登場されてます。
写真を本文末尾に掲載しましたので、ご覧下さい

(アカイさん)

投稿日2009年01月15日 16:49


同じ山岡荘八作・伊達政宗を、横山光輝・絵で描かれたマンガを読だら眼帯が無いので、ちょっとしらべてみました。
俳優さんが政宗を演じるときに黒眼帯をするようになったのは、この大河ドラマが生み出した流行のようです。
撮影エピソードで、元服後の政宗役に眼帯をつけるように発案されたのがどなたか、記録はありますか?

(ねこの手)

投稿日2010年03月16日 18:14


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