東京都在住のブロガー。政治経済、社会問題について分析。
アングロサクソンは「食文化」がないから反捕鯨に走る?
2010年03月21日13時42分 / 提供:木走日記
本件ではEU内部の地中海沿岸漁業国とそれ以外の国に温度差があったのは確かなようです。
環境保護、海洋資源保護のために純粋に禁輸案を支持した主としてイギリスやドイツなどの北欧諸国に対し、フランスやスペインやイタリアなどの南欧諸国には自分たちのクロマグロ利権は守りたいという姑息な計算があったわけです。
・・・
■なぜ北欧と南欧で対応がわれたのか〜問題の根は実は深い=「食文化」の決定的な差異
なぜ北欧と南欧で対応がわれたのかと言えば、表層的には先ほど指摘した地中海沿岸諸国の漁業権の問題であります。
しかし、問題の根は実は深いのではないかと私は考えます。
この問題を少し別の角度からアプローチしてみたいです、北欧と南欧の歴史的な「食文化」な差異からです。
一般論ですが、南欧ラテン諸国はフランス料理、イタリア料理、スペイン料理等々、世界的にも有名な食文化が見事に熟成・開花しています。
豊かな土地にはおいしい麦が育ち、地中海の海の幸も取り入れた豊富な食材を元にすばらしい「食文化」が発展してきました。。
対して、ヨーロッパ北部のゲルマン・アングロサクソン諸国は、寒く土地もやせ麦もほとんど取れず(せいぜいライ麦)、主食のパンですらまずいモノでした。
ドイツやイギリスがジャガイモで有名なのは、ジャガイモが寒さに強いからで、南米からジャガイモがやってきてそれが副主食の地位をすぐに得たわけです。
今日に至るまで北欧ゲルマン・アングロサクソン諸国の「食文化」が南欧ラテン諸国に比較して貧相であるのは、このような歴史的・地理的背景があったわけです。
・・・
■食文化が熟成できなかったゲルマン・アングロサクソン文化〜プロテスタンティズムの倫理感の影響
さらに考察を深めれば、南欧ラテン諸国はカソリック(旧教)なのに対し、北欧ゲルマン・アングロサクソン諸国はプロテスタント(新教)であるという宗教の違いが挙げられましょう。
北欧においてカソリックからプロテスタントが分派した経緯の中で、注目したいのはプロテスタンティズムの倫理感、世俗禁欲主義です。
ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーは、有名なその著書「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」の中で、「プロテスタントの世俗内禁欲が資本主義の「精神」に適合性を持っていた」ことを唱えているわけです。
例によって、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から。
禁欲主義とは結局は我慢のことなのです。
「食」に関しても、不味くても喰えるだけ、死なないだけ神に感謝しろ、という主義です。
プロテスタントの国々を見渡せば、ゲルマン系ドイツやオランダにしろ、アングロサクソン系のイギリス、その植民地から発展したアメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドにしろ、土地のやせている・やせていないに関わらず「食文化」は熟成されてきませんでしたことを考えるとこのプロテスタンティズムの倫理感の影響は大きいといえるのではないでしょうか。
そもそも歴史的・地理的に麦もろくに育たない寒く痩せた土地で暮らしてきた北欧諸国には、南欧ラテン諸国のような豊かな「食文化」が開花するには不利な条件がそろっていました、そして輪をかけたのかそのような土地柄だから発展したのか微妙かも知れませんが、プロテスタントの「粗食に耐えよ感謝せよ」という世俗内禁欲主義が「食文化」の発展を抑制してきた要因のひとつのように思われます。
カソリックの一派であるロシア正教のロシアが、北欧と同様、厳しい環境であるにもかかわらず「ロシア料理」をしっかり発展させてきたことからも、宗教の「食文化」に与える影響は少なくないのでしょう。
・・・
■反捕鯨にみる強硬派アングロサクソン諸国の行動原理
さて「食文化」が未熟なゲルマン・アングロサクソン諸国ですが、社会学者マックス・ヴェーバーの指摘通り、資本主義国としては見事に発展していきました。
特に、産業革命を成したイギリスとかつて大英帝国植民地であった、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、いわゆるアングロサクソン諸国は、今日世界の重要なステークホルダー国家となっております。
ここで興味深いのはこれらアングロサクソン諸国がすべからく反捕鯨強行派である点です。
私は思うのですが、そもそも「食文化」が未熟なこれらアングロサクソン諸国の人々には、他の国の「食文化」への理解・敬意、その「食材」への理解・敬意を深めることが難しいのではないのでしょうか。
私たち日本人は鯨を含め海洋資源を「海の幸」と称して慈しみ食すわけですが、実はこの感覚はアジア全般に共有されており、さらに地中海沿岸のフランス、イタリア、スペインと言った成熟した「食文化」を有する南欧ラテン諸国の人々とも共有されている文化であるのに対し、ゲルマン・アングロサクソン諸国とは共有しづらいのだと考えます。
つまり彼らにとり「くじら」を食材として考える「食文化」があるとは、自分たちにろくな「食文化」がないがゆえに相対化して判断することができない、「くじら」はあくまで保護の対象でしかないんだと思います。
アングロサクソンは「食文化」がないから彼らは反捕鯨に走るのではないかと考えます。
[サンデー放談]第一回:アングロサクソンは「食文化」がないから反捕鯨に走る?(了)
(木走まさみず)
<関連エントリー>
[考察]豪・加・米・ニュージーランドだけが「先住民族の権利に関する宣言」に反対した歴史的背景
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20080327
・記事をブログで読む
環境保護、海洋資源保護のために純粋に禁輸案を支持した主としてイギリスやドイツなどの北欧諸国に対し、フランスやスペインやイタリアなどの南欧諸国には自分たちのクロマグロ利権は守りたいという姑息な計算があったわけです。
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■なぜ北欧と南欧で対応がわれたのか〜問題の根は実は深い=「食文化」の決定的な差異
なぜ北欧と南欧で対応がわれたのかと言えば、表層的には先ほど指摘した地中海沿岸諸国の漁業権の問題であります。
しかし、問題の根は実は深いのではないかと私は考えます。
この問題を少し別の角度からアプローチしてみたいです、北欧と南欧の歴史的な「食文化」な差異からです。
一般論ですが、南欧ラテン諸国はフランス料理、イタリア料理、スペイン料理等々、世界的にも有名な食文化が見事に熟成・開花しています。
豊かな土地にはおいしい麦が育ち、地中海の海の幸も取り入れた豊富な食材を元にすばらしい「食文化」が発展してきました。。
対して、ヨーロッパ北部のゲルマン・アングロサクソン諸国は、寒く土地もやせ麦もほとんど取れず(せいぜいライ麦)、主食のパンですらまずいモノでした。
ドイツやイギリスがジャガイモで有名なのは、ジャガイモが寒さに強いからで、南米からジャガイモがやってきてそれが副主食の地位をすぐに得たわけです。
今日に至るまで北欧ゲルマン・アングロサクソン諸国の「食文化」が南欧ラテン諸国に比較して貧相であるのは、このような歴史的・地理的背景があったわけです。
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■食文化が熟成できなかったゲルマン・アングロサクソン文化〜プロテスタンティズムの倫理感の影響
さらに考察を深めれば、南欧ラテン諸国はカソリック(旧教)なのに対し、北欧ゲルマン・アングロサクソン諸国はプロテスタント(新教)であるという宗教の違いが挙げられましょう。
北欧においてカソリックからプロテスタントが分派した経緯の中で、注目したいのはプロテスタンティズムの倫理感、世俗禁欲主義です。
ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーは、有名なその著書「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」の中で、「プロテスタントの世俗内禁欲が資本主義の「精神」に適合性を持っていた」ことを唱えているわけです。
例によって、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から。
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」ドイツ語初版本「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」(Die protestantische Ethik und der 'Geist' des Kapitalismus)は、ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーによって1904年〜1905年に著された論文。研究者や学生はしばしば略してプロ倫と呼ぶ。
プロテスタントの世俗内禁欲が資本主義の「精神」に適合性を持っていたという、逆説的な論理を提出し、近代資本主義の成立を論じた。
(後略)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より 抜粋
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%86%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%80%AB%E7%90%86%E3%81%A8%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%AE%E7%B2%BE%E7%A5%9E
禁欲主義とは結局は我慢のことなのです。
「食」に関しても、不味くても喰えるだけ、死なないだけ神に感謝しろ、という主義です。
プロテスタントの国々を見渡せば、ゲルマン系ドイツやオランダにしろ、アングロサクソン系のイギリス、その植民地から発展したアメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドにしろ、土地のやせている・やせていないに関わらず「食文化」は熟成されてきませんでしたことを考えるとこのプロテスタンティズムの倫理感の影響は大きいといえるのではないでしょうか。
そもそも歴史的・地理的に麦もろくに育たない寒く痩せた土地で暮らしてきた北欧諸国には、南欧ラテン諸国のような豊かな「食文化」が開花するには不利な条件がそろっていました、そして輪をかけたのかそのような土地柄だから発展したのか微妙かも知れませんが、プロテスタントの「粗食に耐えよ感謝せよ」という世俗内禁欲主義が「食文化」の発展を抑制してきた要因のひとつのように思われます。
カソリックの一派であるロシア正教のロシアが、北欧と同様、厳しい環境であるにもかかわらず「ロシア料理」をしっかり発展させてきたことからも、宗教の「食文化」に与える影響は少なくないのでしょう。
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■反捕鯨にみる強硬派アングロサクソン諸国の行動原理
さて「食文化」が未熟なゲルマン・アングロサクソン諸国ですが、社会学者マックス・ヴェーバーの指摘通り、資本主義国としては見事に発展していきました。
特に、産業革命を成したイギリスとかつて大英帝国植民地であった、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、いわゆるアングロサクソン諸国は、今日世界の重要なステークホルダー国家となっております。
ここで興味深いのはこれらアングロサクソン諸国がすべからく反捕鯨強行派である点です。
私は思うのですが、そもそも「食文化」が未熟なこれらアングロサクソン諸国の人々には、他の国の「食文化」への理解・敬意、その「食材」への理解・敬意を深めることが難しいのではないのでしょうか。
私たち日本人は鯨を含め海洋資源を「海の幸」と称して慈しみ食すわけですが、実はこの感覚はアジア全般に共有されており、さらに地中海沿岸のフランス、イタリア、スペインと言った成熟した「食文化」を有する南欧ラテン諸国の人々とも共有されている文化であるのに対し、ゲルマン・アングロサクソン諸国とは共有しづらいのだと考えます。
つまり彼らにとり「くじら」を食材として考える「食文化」があるとは、自分たちにろくな「食文化」がないがゆえに相対化して判断することができない、「くじら」はあくまで保護の対象でしかないんだと思います。
アングロサクソンは「食文化」がないから彼らは反捕鯨に走るのではないかと考えます。
[サンデー放談]第一回:アングロサクソンは「食文化」がないから反捕鯨に走る?(了)
(木走まさみず)
<関連エントリー>
[考察]豪・加・米・ニュージーランドだけが「先住民族の権利に関する宣言」に反対した歴史的背景
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20080327
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