2010年3月20日
福岡県内で英会話教室を経営する米国人の男(69)が教え子の女児にわいせつな行為をしたなどとして逮捕された事件で、県警が2006年ごろ、男が女児を自宅に連れ込んでいるという情報を把握していたことが、県警への取材でわかった。犯罪行為の確証が得られずに立件には至らなかったという。その後も被害は続いたとみられる。男は10年以上前から、「性教育の一環」などと保護者に説明して教え子を自宅に招く了解を得ていたらしい。
県警によると、男の自宅近くの人らが06年ごろ「男が女の子を車に乗せて自宅に出入りしているのをよく見かける」と地元の駐在所に数回相談した。駐在所は警察署に情報を上げ、捜査員が聞き込みや張り込み捜査をしたが、立件には至らなかったという。
男や連れて行かれたとされる女児からは直接話を聞かず、捜査は数日で終わったという。県警は「男が英会話教室の経営者で、(自宅に招くのは)研修の一環ということだった。無理やり連れて行かれる状況も見あたらなかった」と説明する。一方、近所では「情報を上げていたのに。警察には憤りを感じる」と話す人もいる。
県警は新たに08年、男から性的被害を受けたという女性からの情報を入手。今年1月に男を児童福祉法違反容疑で逮捕。同容疑は処分保留となったが、2月に児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑、3月に性的暴行の容疑でそれぞれ逮捕した。逮捕容疑はいずれも数年前の行為で、被害にあったのは当時9〜11歳の女児だった。
男は英会話教室で気功に関する教室も開いていた。気功の教室に通う親に、男は「性教育の一環」などとして「体に触ることもある」といった承諾書を交わして了解を得た上で、英会話教室に通う子どもを自宅に連れ込んでいたという。県警は「親が男を信頼しきっていた面もある」とみる。男は逮捕後、事実関係は認めているが「将来の性生活がうまく行くためにやったこと」と説明しているという。
県警は男の自宅から、男が撮影したとみられるわいせつなビデオ600本以上を押収。教え子数十人がわいせつ被害にあったとみている。ビデオが外部に流れた形跡はないという。
被害は長期間、多数にわたっていた疑いがあるが、被害届は極めて少ないという。県警は、事件の全容解明のためにも、被害届の提出を呼びかけている。