自殺対策について意見を交わすパネリスト=20日午後、大分市の県総合社会福祉会館
国内の年間自殺者は1998年から12年連続で3万人を超え、県内でも300人前後の高い水準で推移している。このような状況を受け、県弁護士会は関係機関と連携を深め、自殺対策について考えようと20日、大分市の県総合社会福祉会館で、初めてのシンポジウムを開いた。
警察庁によると2009年の全国の自殺者は3万2753人。県内は332人で前年より29人多い。76%が男性で、健康や経済上の理由が主な原因とされる。
県弁護士会は「弁護士は多重債務に苦しむ人など、自殺の恐れが高い人から相談を受ける機会が多いが、対策が不十分」として、昨年8月に「貧困と人権に関する委員会」を新設した。
シンポジウムには約70人が参加した。長崎県などで活動するNPO法人「自死遺族支援ネットワークRe」の山口和浩代表が基調講演。「自殺はさまざまな問題で追い込まれた末の死。社会問題としてとらえ、相談できる環境を整えることが大事だ」と主張。父親を自殺で亡くした経験を語り「毎年14万人が自死遺族となり、その4人に1人は『自分も死にたい』と追い詰められている」と訴えた。
県自殺対策連絡協議会長で、大分大学医学部の寺尾岳教授は、うつ病から自殺に至るケースが多いとし「最近の研究では、うつ病の原因は脳細胞の栄養不足と考えられている。坑うつ薬で栄養分を増やすことができる」と説明した。
この後、「治療・相談現場における自殺対策」をテーマに4人がパネルディスカッション。大分財務事務所多重債務相談窓口の村上美佳子相談員は「貧困や経済的に追い詰められた人からの相談が多い。自己破産してもその後の生活が成り立たず、自殺を考える人もいる」として、背景にある厳しい経済状況を指摘。山口代表は「自殺対策の窓口にたどり着きながらも苦しんでいる人を、どうやって救うかがこれからの課題」と述べた。
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