Ragnarok Online - IF - どじっ娘アコシリーズ
第2話 『砂漠の都モロク編』
ということで、私はお兄さんと一緒に砂漠地帯の中にある砂の都モロクを目指して歩いている。
レベルの高い修道士は、一瞬にして記憶した場所に移動できるという魔法が使えるらしいけれど、お兄さんに聞いたら。
「そんな楽ばっかりしていたんじゃ修行にならん。自分の足で歩け歩け」
などと言って、聞いてくれない。お兄さんは何かを誤魔化すとき、決まって開き直ったような物の言い方をする。
まぁそんなことはおいといて。
暑い、暑い、もの凄く暑い。茹だる様な暑さ。炎天下の砂漠の中だけあって、気温は物凄く高いわけであって。
フードを被っているのに、私の身体中から汗がだらだらと零れてる。蒸れてるなんてレベルじゃない。
そんな私に比べてお兄さんは流石だった。こんな暑さの中、汗ひとつかかずに砂漠の中を歩いている。
お兄さんの両手には“クリスタルブルー”っていう青い色をした石が握られていた。水属性を持つ石?っていう事を何かの本で読んだことがあるけれど、そんなに大事そうに持って、いったい何をしているんだろう? お兄さんのことだから、きっと深い考えがあってのことだと思うけれど。
と、あれこれ考えているうちに、私達はモロクの街にたどり着いた。
砂の都って言われているだけあって、石造りでできた建物の佇まいが、砂と見事に調和していた。すごくキレイな景色――
見ると、すっごくキレイに輝いている河があるじゃない。あの砂漠を歩いてきた先で、ようやく水にありつけたのよ!
私は思わずその河の中に飛び込むと、まるで子供のようにはしゃいでいた。
「むぐむぐむぐがつがつがつ・・・」
水浴びをしてさっぱりした後はやっぱり、美味しいフルーツよね!私はお兄さんが街で買ってきてくれたモロク名産のフルーツを平らげていた。
「おいおい・・・ちゃんと良く噛んで食べろよ」
「ふぁひ? はむはむもがもがもが・・・・」
「はぁぁ・・・・・」
お兄さんの大きな溜め息。だって仕方ないじゃない。このフルーツが美味し過ぎなのよ。多少のことは多めに見てくれたって良いじゃない!
「・・・いいか、俺以外のヤツの前で、そんな元気いっぱいな喰い方はするなよ――?」
???
言っている意味は分からなかったけれど。お兄さんはとても哀しそうな顔で私にそう言っていた。
お腹一杯になるまでたっぷりと食べた後。私達はピラミッドと呼ばれる場所に来ていた。
四角錐の形をした大きな建物。中ではオシリスっていうとても偉い王様が眠っているって話だけど――
お兄さんから祝福儀礼をかけてもらってから、私達はピラミッドの中に入る。
中はまるで迷路のように入り組んでいた。
「ここはいったん迷ったら大変だからな。俺の後をついて来い」
私は黙ってお兄さんの後をついていくことにした。
というか、案の定――私は道に迷ってしまった。
『バカヤロー!あれほど俺の後をついて来いって言ったのに!』
念話を通じて聞こえてくるお兄さんの声はカンカンだ。私の耳が潰れちゃうかと思った。
『ったく――仕方ないな。ナビしてやるから、お前の現在位置を言え』
しおしおになって私はお兄さんから教わった現在位置の調べ方をやってみる。
『じゃあ、道なりに進んだ突き当たりを左に――次は2番目の分かれ道を右だぞ』
お兄さんに言われるとおり、私は迷路みたいな通路を進む。――と。
行き止まりにぶつかってしまった。
『――すまん。途中でMAPを読み間違ってしまったみたいだ』
ていうか、今来た道をまた逆戻りですかー?
ふと気がつくと、行き止まりになってる壁の向こうからお兄さんの声が聞こえてくる。
なーんだ。それなら話は早いじゃない。
どかん。がらがらがら・・・
私は壁にめがけてメイスを振るった。建物が揺れるくらいの衝撃が走ると、ひびの入ったところからガラガラと壁が崩れていく。
「・・・さすがだなアコライト・・・・・・」
崩れ去った壁の向こうには、大きく溜め息をつくお兄さんが立っていた。
「――ついたぞ」
あれから迷路のような長い廊下を歩いて、ついに目的地にたどり着いた。
ここにはアンデッドと呼ばれる魔物がいて、そこで私のヒールの魔法を鍛えられる、というのだ。
お兄さんの支援を受けながら、私は修行を始める。
ヒール!ヒール!ヒールっ!
アンデッドにヒールをかけ、次々とやっつけていく。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
重ねて言うけど私はアコライトなのに生まれつきSPが低い。こんな風に何回かヒールを撃っただけで疲れてしまうの。
「――マグニフィカート!!」
お兄さんが祝福の魔法をかけてくれる。私の身体は光に包まれ、疲れがみるみるうちに回復していく。
やっぱり支援って凄いんだ。
――そうしてアンデッドにヒールをかけ、疲れたらお兄さんに支援をしてもらうことをしばらく繰り返して。
「そろそろ日も暮れた頃だろう。帰るか?」
「うんっ」
私達はモロクの街に帰ることにした。
――けれど、帰り道の途中で。
どどどどどどど・・・・・・
地響きが聞こえてきそうな勢いで、
どっどっどっどっどっ・・・・・・
蛇女やミイラ、骸骨や猟犬の姿をした――モンスターが大勢で押し寄せてきていた。
「自動人形どもが! なんでこんな時に大量のモンスターを引っ張ってくるんだ」
お兄さんは舌打ちを鳴らしていた。
「いいかこういうときは落ち着いて逃げろ。焦ったら負けだ。」
そういうとお兄さんは、たくさんの支援魔法を私にかけてくれる。「GO!」
お兄さんと私は、大勢のモンスターから逃げていた。
私達のほかにピラミッドに入っていた冒険者達が私達の方を訝しげな目で見ている。
「馬鹿野郎!ジロジロ見ている暇があったら助けやがれぃ!!」
お兄さんは叫んでいた。私も思いっきり叫びたかった。
逃げても逃げても追いかけてくるモンスター。ハッキリ言って、怖い、怖すぎる。悪い夢でも見ているようだった。
逃げ場の途中で、分岐路を曲がり損ねた私は、お兄さんとはぐれてしまう。モンスターの半分がお兄さんを追いかけていった。
残りの半分は、当然私を追いかけてくる。
「いや〜〜〜助けて〜〜〜〜〜〜!!」
もう無我夢中で逃げていた。もう頭の中はからっぽの状態だったのかもしれない。
速度増加をかけなおし、私はひたすら逃げる、逃げる、逃げる!
走る先に別のモンスターの群れがあった。王冠を被ったミイラと、それを取り巻く蛇女達。
――挟まれちゃった??
もう絶体絶命のピンチってやつ? 私の短すぎる人生はこんなところで終わってしまうのかしら。
私の口は無意識のうちに私自身へのレクイエムを唱え始めていた。
もうこうなった前に進むしかない!そう決めた私は、メイスを片手に目の前にいる王冠をかぶったミイラに殴りかかる。
ばきっ!!
ぱたん。
――え?
何が起こったのか信じられなかった。ミイラは私のメイスの一撃で倒れ、それを見た他の魔物達が恐れをなしたように私から逃げていく。
倒れているミイラの足元には、キラキラと輝く王冠が落ちていた――
私はそうしてモロクに戻ってきていた。お兄さんはというと、あれから必死になって自動人形っていう機械を探しあて、モンスターをのしをつけて送り返してあげたそうだ。
自動人形は瞬く間に壊されて、ジ・エンド。めでたしめでたし、だったのかな。
「ところでお前が持ってるその王冠――オシリス王のクラウンじゃないか。なんでお前がそんなのを持ってるんだ?」
私は正直にお兄さんにはぐれてからの経緯を話した――
「――――はぁぁ・・・」
案の定、お兄さんには溜め息をつかれてしまった。
どうして? 私はただモンスターを一匹やっつけただけなんだよ? それがどうしていけないのよ!?
「やっぱり、お前には殴りのほうが向いてるわ――」
お兄さんはそれだけを言い残すと、フラフラとした足取りで予約を入れた宿へ向かっていった。
ふーんだ。私は絶対支援アコライトになって見せるんだから!