『MOONくらいしす。#11』
原作: MOON.RENEWAL ©Tactics/Nexton
そんな晴香お姉さんにすっかり呆れていたわたし。
すると、目の前には昨日由依ちゃんから見せてもらった写真の女の人がいたではないでちゅか。
わたしはそのお姉さんの側まで行くことにしまちた。
「こんにちわでちゅ」
「……」
「名倉友里さんでちゅね?」
「……」
返事がない。ただの屍のようだ。
…ということで、普通に話してもダメみたいだから言い方を変えてみることにしまちた。
「由依ちゃんのお姉さん…でちゅね?」
「!!」
由依ちゃんの名前を出した途端、女の人がぴくんと反応しまちた。
どうやらビンゴのようでちゅね。
「……あたしに妹なんていないわ……」
女の人はそれだけを言うと、わたしから逃げるようにどこかに消えようとしてまちた。
「待つでちゅ」
わたしはお姉さんの手をがっしりと掴みまちた。
しかしお姉さんは、わたしの掴む手を振り解こうとするのでちゅ。
「離しなさいよっ!!」
「離しまちぇん!」
「いったい何なのよ、あんたはっ!」
「由依ちゃんがお姉さんに逢いたがっていまちたよ?」
「あんなやつ妹でも何でもないわ! わかったらさっさとその手を離しなさいよっ!!」
うぬぬぬ、強情なお姉さんでちゅね。こうなったら作戦変更でちゅ。
――わたしはB棟から由依ちゃんを連れてきて、もう一度C棟の食堂にやってくることにしまちた。
ちなみに、悔しかったからお姉さんの食事にタバスコをたっぷりと振りかけたことはここだけの秘密でちゅ。
食堂に戻ってきた時、予想通りお姉さんはテーブルの前でもの凄い量の火を口から噴いてまちた。
「友里お姉ちゃん…逢いたかった」
「…誰よあんた。あたしを姉なんて馴れ馴れしく呼ばないでくれる?」
「そんな事言う人嫌いですっ!」
「ふん…」
「ここで姉妹は抱き合って、感動の再会に涙するのが王道のセオリーなんですよっ!?」
「知らないわよ、そんなこと」
こんな調子で、いつまで経っても二人の話は平行線を辿っていまちた。
「ふふ、ふふふふ……」
そこで由依ちゃんの表情が変わりまちた。どこか様子が変でちゅ。
「私、知っているんだから…」
「なにをよ?」
「お姉ちゃんの弱みについて色々と…くすくす」
「え、それってまさか…」
その言葉に、お姉さんの顔が青ざめていきまちゅ。
その反応を見た由依ちゃんは確信を持って天使のように微笑むと、お姉さんの耳もとに口を近づけ、ぼそぼそと何かを囁きまちた。
「…いやあぁあぁぁあああーーーーーーーーっっ!!!!!」
お姉さんは突然狂ったように叫び声をあげまちた。
耳を塞ぎながらその場に倒れ込むと、地べたで苦しそうにのたうち回ってまちゅ。
よっぽど知られたくない弱みだったみたいでちゅね。
その時、由依ちゃんが浮かべていた満足げな表情が、どこか途轍もなく怖かったんでちゅけど。
…ともあれ、あとは由依ちゃんとお姉さんとの問題でちゅ。
わたしはママの手がかりを探すため、食堂を後にしまちた。