『MOONくらいしす。#10』
原作: MOON.RENEWAL ©Tactics/Nexton
カシャアッ!
勢いよくカーテンが引かれる音。
窓の向こうから降り注ぐ陽光がレースカーテンを優しく貫き、真っ暗だったわたしの視界を明るい白に染めていきまちゅ。
まぶたを開けてゆっくりと身体を起こすと、そこには幼なじみのあの人が…
…なんてことがあったらいいのに。
相変わらずの殺風景なベッドの上で、わたしは目を覚ましまちた。
窓ガラスもないから、今が何時なのかも分かんないでちゅね。
ちゃんとお陽様の光を浴びないと、身体に良くないんでちゅよ? ブツブツ言いながら、わたしは身体を起こしまちゅ。
ふあぁ〜っ。
まだおねむでちゅ。どんなにお目目を擦っても、まぶたが重くて、あくびが止まりまちぇん。
昨日は全然眠れなかったから、今すっごく眠いんでちゅ。
ちゃんと寝ないと、美容にも悪いでちゅし…
そう言って睡魔に負けたわたしは、そのままぱたりと二度寝することにしまちた………
次に起きたのは、いったい何時だったのでちょうか。
今日は"みんめす"とか"えるぽっど"に行くのは"さぼたーじゅ"しちゃいまちゅ。
だって、もっともっと気になることがあるんでちゅから。
それは、C棟のことでちゅ。
晴香お姉さんに会っておきたいでちゅし。
そして、由依ちゃんのお姉さんがいるかも知れない場所…
ママの手がかりも、そこにあるかもでちゅ。
わたしはさっそく部屋を出ると、隠し通路を使ってC棟に行くことにしまちた。
――昨日の分かれ道を反対方向に曲がるだけで、すぐにC棟に着くことができまちた。
C棟は、B棟でそれを感じた以上に何かがざわめいているような感じでちゅ。
あまり長くいて気分のいい場所じゃないでちゅね。
とりあえず晴香お姉さんに会うでちゅ。そこでわたしはC棟のみんなが集まっていそうな場所を探しまちた。
食堂には、たくさんの女の人達で埋め尽くされていまちた。
でも、みんなどこか様子がおかしい…
生きているようで生きてないような、変な感じ……
肩がぶつかっても、まるで気がつかなかったように立ち去っていく女の人。
声をかけても、心がそこにないみたいで…虚しいでちゅ。
そうして食堂を歩いていると、突然後ろからかかってくる声が。
「あんた、そんな所に突っ立ってると危ないわよ?」
それは晴香お姉さんでちた。
「どうやってC棟に潜り込んだのよ。あんたは?」
「ちっちっち、それは企業秘密でちゅ」
「…まぁ、それは後で必ず訊かせてもらうけどね」
拳をパキパキと鳴らしながら、晴香お姉さんは妙に優しい笑顔で質問を続けまちゅ。
「あんた、身体は何ともないの?」
「え、何のことでちゅか?」
「…そっか。ClassAの子は、男どもから何もされていないのね。それがせめてもの救いだわ」
言ってお姉さんは辛そうな顔で視線を逸らしまちゅ。
由依ちゃんと言い、晴香お姉さんと言い、いったい何があったのでちょうか?
「えっと、ママについて何か分かったことがあったら教えてくだちゃい」
「…ごめん、そういう情報はまだ掴めていないわ」
「そうでちゅか……」
手がかりなしでちゅか…残念でちゅ。
「そういえば、晴香お姉さんのお兄さんみたいな人を見まちたよ?」
「それ本当なの!?」
お兄さんの話をしたら、途端に晴香お姉さんの目の色が変わりまちた。
「でも、もう逢わない方がいいかもでちゅ」
「それどういうこと?」
晴香お姉さんはきょとんとしてわたしに質問を返してきまちゅ。
だって、だって……
≪ぐっへっへっへぇ、子猫ちゃ〜〜ん……≫
ぶるぶるぶるぶる。
あの下品な顔を思い出すだけで、鳥肌が立ってきちゃいまちゅ。
「???」
「とにかくあんたが義兄を見たという場所を教えて! どうすればそこまで行けるの!?」
「く、苦しいでちゅ…苦しいでちゅ…」
お姉さんはわたしの返事を待たずに襟首を掴んでぶんぶんと揺さぶりまちゅ。
すっごく強引なお姉さんでちゅ。
「ありがとう。今から義兄の所まで行って来るわ、じゃあまたね!!」
訊きたいことだけを訊いていくと、晴香お姉さんは青いハリネズミさんのような猛スピードで食堂を出ていちゃいまちた。