『MOONくらいしす。#5』
原作: MOON.RENEWAL ©Tactics/Nexton





 目が覚めるとわたしは、ベッドの上に横になっていまちた。
 窓もないお部屋だから、朝なのか夜なのかもはっきり分かりまちぇん。
 いま何時でちょうか……
 まだおネムな目をゴシゴシと擦っていると、とんでもないものが横になってまちた。
 なんとわたしの隣で…

「ZzzZzz…」
 昨日のチカン男が、気持ちよさそうにいびきをかいて寝ていたのでちゅ。
 "身体に電撃が走る"というのは、このためにある言葉でちゅね。背筋にきょーれつな悪寒でちゅ。わたしはあっという間に目が覚めまちた。
 そしてわたしは、さっきまで使っていた枕をそーっと手に取って、男の顔の上に置くとわたしは、その上に座って思いっきりプレスをかけまちゅ。

「モ、モガモガモガッッ!??」
 ようやく最期の夢から目が覚めた男はじわじわと苦しみだしまちゅ。手足をばたばたと動かしながら男は足掻いていまちた。
 でも、時はすでにおそし。
 そしてその叫びは間もなく、断末魔の遺言へと変わっていくんでちゅよ。
 こんなか弱い女の子を襲おうとしたのが運の尽きでちたね。
 その罪の数々を、地獄の釜の中でたっぷりと反省しているがいいでちゅ。



「――クロムウェル3号解放ッッッ!!!!」
 一瞬、チカン男の髪の毛が金色に輝いた気がしまちた。

「せいやー!!」
 突然光がぱぁっと放たれて、それに身体が反応するよりも早く、わたしは男に枕ごと大車輪のように投げ飛ばされまちた。

 どんがらがっしゃん!!!!!!

 昔なつかしの音を立てながらわたしは、壁をずるずると滑り落ちると、たれたお人形さんのような姿勢で横たわってましゅ。
「…朝っぱらから威勢がいいね、キミは」
 ゆっくりと近づきながら男は、わたしに笑顔を向けてまちた。
 でも声が全然笑ってないでちゅ。
「コホン、まぁそれはいいとして――」
 男の殺気が消えまちた。ほっ、命拾いしたでちゅ。

「これからさっそくキミは、MINMESに行かなくてはならない」
「みんめす?」
「うん、そこで魂の精錬を行うんだよ」
「たましいのせいれん? それってまるで信者さんみたいでちゅね」
「キミはまるで、このFARGOの信者じゃないみたいな言い方だね?」
 !! しまったでちゅ。
「そ、そそ、そんなことはないでちゅよ?」
「…??」

 ふぃ〜。
『…いい? 何があってもあんたは信者じゃないってこと、他の奴らにバレないようにするのよ?』
 ――昨日トラックの前で、晴香お姉さんから頭を拳でグリグリされながら言われた言葉を思い出しまちた。
 このとっさの機転がなかったら、とてもあぶないところでちた。

「その"みんめす"って、どこにあるんでちゅか?」
「部屋を出て通路をまっすぐに歩けば、"MINMES"と文字の書かれた扉があるから、そこに入るといい」
「わかったでちゅ、それでは行ってきまちゅ!」
 そう言って、わたしがお部屋から出ていこうとしたとき。

「そうそう、言い忘れていたことがあったよ」
「何でちゅか?」
「…さっき枕でボクの顔を押さえつけてたこと、二度目はないからね?」
 その時向けてきた男の人の視線がとても恐ろしくて、しばらくの間わたしはそこでガタガタブルブルと震えてまちた。





「…ここでちゅね」
 わたしは"みんめす"という場所のドアの前にやってきまちた。
 ドアに手を触れると、ひとりでにドアが開いていきまちゅ。

 そこは、不思議な感じのするお部屋でちた。
 真っ暗なお部屋で、真ん中に描かれた模様が目を引きまちた。
 そこから青白い光が出ていて、見ているとくらくらと変な気持ちになっちゃいましゅ。

『"認識番号照合…A-12と確認"』
 きょろきょろと辺りを見渡していると、今までとはまた別の男の人の声が聞こえてきまちた。
 重い感じの声でちゅ。

『"A-12よ、これから精神の鍛錬を行う"』
「A-12って何でちゅか?」
『"お前のことだ、A-12よ"』
 むかむか。
 その言い方にわたしはぷちんとキレまちた。
「わたしには、郁未というママからつけてもらった立派な名前があるんでちゅ! だからちゃんと名前で呼ぶでちゅ!」
『"……"』
「初めてお話しするのに"いくみん"じゃ馴れ馴れしすぎるから、せめて"いくみ様"と呼ぶでちゅ!!」
『"……"』
 わたしがいくら言っても、何の返事もないでちゅ。自分の都合が悪くなるとすぐにダンマリでちゅか?
 あんなひきょーなオトナにはなりたくないものでちゅ。

『"ならばA…もとい郁未よ、円陣の中央に立つのだ"』
 言うに事欠いて呼び捨てでちゅか。…まぁいいでちゅ。
 わたしは言われた通りにすることにしまちた。

『"それでは精神の鍛錬を始める"』
 声がしなくなった後。
 ふっとわたしの目の前が真っ暗になって、そのままわたしの心が落ちていく感じがしまちた。


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