『MOONくらいしす。#3』
原作: MOON.RENEWAL ©Tactics/Nexton
「次はお前だ」
わたしが由依ちゃんと今後の先行きについて話し合っていると、さっきの男の人がいきなりわたしの腕を掴んできまちた。
すると男の人は、わたしを強引に引っ張ろうとしてくるのでちゅ。
…痛いでちゅ。レディは丁重におもてなしするものでちゅ!
水も滴るようなわたしのこの魅惑的なナイスバディに傷1つ付いたりしたら、どう責任をとってくれるつもりでちゅか!!
このときは本当に頭にきたでちゅ!!
――かよわいわたしはこの乱暴な男の人の腕力には勝てず、やがて変なドアの前に連れてこられまちた。
デパートやスーパーにあるような自動ドアみたいでちゅ。
「入れ」
どこかから、そんな声が聞こえてきまちた。するとドアが独りでに開き始めたのでちゅ。
ここでは自動音声入力システムを使っているみたいでちゅ。
悪の組織にしては、なかなかハイテクなものでちゅ。
このSFちっくな演出に、わたしは胸がときめいてきまちた。
ドアから中に入ると、そこは何もない密室でちた。突然後ろのドアが閉まりまちゅ。何から何まで本格的でちゅね。
横に寝ころべば頭と足が端っこから端っこに届くくらいの狭い部屋。
とても息苦しい場所でちゅ。
わたしの身体がここから落ちていくような感じがしまちた。まるで遊園地のアトラクションじゃないみたいでちゅ。
ヴウゥゥン――――
何か機械が作動する音でちゅ。
「…よく来たな」
さっきとは違う、男の人の声がスピーカーから聞こえてきまちた。
「こんにちはでちゅ」
明るく元気に挨拶をしても返事なしでちゅ。サービスの悪い遊園地でちゅね。
とりあえず、わたしは質問をすることにしまちた。
「ここは無重力体験ゾーンでちゅか?」
「…違う」
「じゃあ、何のアトラクションなんでちゅか?」
「……」
相変わらずつれないでちゅ。何の返事もありまちぇん。
「…今からお前の適性を調べさせてもらう」
「てきせい?」
「そうだ…静かに目を瞑っていろ」
わたしは言われるままに目をつぶりまちた。
そうするとしばらくの間、落ちてゆくような浮かんでいるような変な感覚に包まれまちた。
とても不思議な感じでちゅ。ずっとこうしていたいような…
――ジュッ。
突然、左手が灼けるように熱くなりまちた。見ると腕を火傷したみたいでちゅ。
火傷したところの文字を見ると、『A・12』と読めまちた。
「ほう…ClassA か」
「クラスAって、何でちゅか?」
「生まれながらにして神に近い資質(もの)を持っている、という意味だ」
「わたしにそんなものなんてないでちゅよ?」
「私も信じたくはない…もとい、それが真実なのだから認めるしかなかろう?」
…なんだか投げやりな言い方でちゅね。
「まぁとにかく、精進するがいい――」
それっきり、男の人の声は聞こえなくなりまちた。
――変な部屋を出ると、さっきのトラックの停めてある場所で晴香お姉さんと由依ちゃんに会うことができまちた。
「あんたのClassは何だった?」
さっき無視したことを根に持っていたのか。お姉さんはわたしを見るなり、左の袖を無理矢理まくしあげてきまちゅ。
「ClassA、か――あたしはClassCよ」
「私はClassBでした」
「クラスってなんでちゅか?」
「なんだか、A・B・Cのランクであたし達は格付けされたみたい。Classによって、これから過ごす場所とかが分かれるらしいのよ」
「見事にバラバラになっちゃいましたね…」
「…とりあえず、私達が互いに連絡を取り合える手段を見つけることが先決ね」
「じゃあ、みんなで早く"不可視の力"を手に入れて、テレパシーで連絡できるようにするでちゅ!」
「あ、それ却下」
「もっと現実的な手段で! 何かない?」
「うーん、それじゃあ…」
「何かあるの?」
「はい、携帯電話でお互いに情報交換を…」
「ごめん、あたし携帯持ってないの」
「わたしも持ってないでちゅ」
「うぐぅ…」
わたし達がしばらく考え込んでいると、黒づくめの男の人たちがやってきて、クラス別にわたし達を分けはじめているみたいでちた。
「…まぁ何とかなるでしょ。各自連絡手段を確保したら、互いに連絡を取り合うようにすること。いいわね?」
「わかりました!」
「お互い目的のために頑張りましょうね。それじゃあいったん解散っ」
――こうしてわたし達は、いったん分かれることになりまちた。