『MOONくらいしす。#1』
原作: MOON.RENEWAL ©Tactics/Nexton





 ――ごとんっ。

 車が大きく揺れた。
 ここは薄暗いコンテナの中。

 FARGO(ファーゴ)…
 ママがずっといたところ。ママはそこに入信したまま、家に帰ってこない。
 気になったわたしは、FARGOに乗り込んで、ママを助け出すことにしたんでちゅ。
 それにしても……

 一緒に車に乗り込んでいるお姉さん達。
 なんだか、みんなどこか様子が変でちゅ。
 生きているのか死んじゃっているのかも分からないくらい。まるでお人形さんみたいでちゅ。
 わたしは指をお口にくわえながら、そんなことを思っていまちた。



「…あんた、他のやつとは違うわね」
 突然、わたしの隣にいるお姉さんから声をかけられまちた。

「あたし巳間晴香(みま はるか)。あんたの名前は?」
「天沢郁未(あまざわ いくみ)でちゅ」
 いきなりわたしの名前を訊ねてくるお姉さん。
 それは気の強そうなお姉さんでちた。

「あんた、何か目的があってここに来たみたいね。目を見れば分かるわ」
「わたしの目に何かついてまちゅか?」
「…こんな所にやってくるヤツなんて、"不可視の力"を求めてくるような頭の相当イカれたヤツか、何か目的があって此処までやってきたのか。2つに1つしかないもの」
「その"フカシのチカラ"って何でちゅか? それでスプーン曲げとか手品ができるんでちゅか?」
「………」
 そのお姉さんは一方的に質問をするだけで、わたしの質問には何ひとつ答えてくれまちぇんでちた。
 怖かったでちゅ……

「…ねぇ。ところであんた、いくつ?」
「レディに歳を訊くなんて、失礼なお姉さんでちゅ!」
「…どう見ても、まだ幼稚園か小学生くらいよね?」
 どこまでも失礼な人でちゅ! わたしはこのお姉さんに断固抗議しようと心に決めまちた。

「はいはい、飴玉あげるから良い子にしていてちょうだいね」
「わ〜い♪」
 その時お姉さんから、美味しい飴玉をもらいまちた。
 とても嬉しかったでちゅ。



「…ところであんたの目的は何なの?」
「んに?」
 飴玉をお口の中でころころと転がしていると、お姉さんが訊ねてきまちゅ。

「ここに乗り込んだ理由よ」
「いなくなったママを探しに来たんでちゅ」
「そう、いなくなったお母さんをね…あたしは義兄を捜しに来たの。このFARGOの研究員をしていると耳にして」
「ふーん…」
「よかったらあたしと組まない? こんな何があるのか分からない場所じゃ、味方がいた方が色々と有利でしょ?」
「味方?」
「そうよ。…とは言っても、あんたまだ子供だし……」
「幼児体型だからって、そんな目で見ないでくだちゃい!」
「どう見ても、完全に幼児なんだけどね…」

「とにかく、あたしの義兄らしい人間を見たって言う情報だけでも良いの。見かけたらあたしに知らせて頂戴? って…」
 腕時計を見ると、もうお昼寝の時間でちた。
 よい子は寝ないとダメでちゅ。それにわたしは、すごく合歓合歓(ねむねむ)なのでちゅ。
 だから寝ることにしまちた、おやすみなさい。
 Zzz……

「こんな時に寝るな〜〜〜!!!!」


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