MIO 〜輝く季節へ〜
第2話 『予感』
ここは、とある家の一室。
家具や調度品などが整然と並べられた静かな部屋で。
そこで机に向けて座る一人の少年の姿があった。
彼の名は住井。浩平とは同じ学校のクラスメイトで親しい友人の仲。
彼は一人思案していた。
(…オレは今、ある女の子の事で頭を悩ませている。
学校で会った、スケッチブックを持った女の子…名前はまだ知らないけど、
あのコとあの日、偶然出逢ったあの時からオレはあの子の事が気になって…
いわゆる"一目惚れ"ってヤツをしてしまったらしい)
どうやらここにも彼女の魔性に囚われた犠牲者が…
もとい、彼は澪に恋をしているようだった。
(朝の靴箱で見かけたのが最初で、次の日の放課後に階段の曲がり角で
いきなりあの子がオレにぶつかってきて、それからなんだよなぁ。
オレがこんな風に悩むようになったのは)
それはまさに、若さ故の過ちであった。
(生まれてこの方17年! やっと…やっとの思いでオレは、
理想の女の子に出逢うことができたんだ。
保健室で見せてくれたあの笑顔が、天使みたいに可愛くて。
あれからオレの瞳に焼き付いて離れないんだ。
これってやっぱり恋なんだよなぁ。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ。
神様、本当にありがとうっ!!)
…そういって手を合わせ、心からその出会いを喜ぶ住井を見て、
"この世には神も仏もないのか"と思ってしまう。
「…? そこに誰かいるのか?」
住井がこちらの方を見て言う。我々はさっと身を隠す。
・・・・・・・・・・
…何とかやり過ごせたようだ。
我々の姿をまだ一般人に知られる訳にはいかない。
そうなれば、お互いにタダでは済まなくなってしまうからだ。
「しかし世界中どこを探しても、あんなコは見つからないだろうなぁ…」
確かにどこを探しても、あんな娘が見つかるはずはない。
「あぁ…君の笑顔はどうしてそんなに美しいんだ?」
若さとは、そこまで人を盲目にさせるものなのだろうか。
もしもほかの女の子に恋を感じていれば、
彼だって人並みの幸せを掴むことはできたはずなのに…
その事が非常に悔やまれる。
「…やっぱり誰かそこにいるんじゃないのか?」
・・・・・・・・・・・・・・
私的な事で言えば、今すぐにでも彼のことを止めに行ってあげたいのだ…
しかし彼はこれから起こるであろう惨劇を、不幸な運命を、
その身をもって思い知るしかないのだろうか……
「まだ名前も知らないあの女の子…絶対に仲良くなってやるぞー!!」
そう己に宣言し、気合い充分の住井。もはや何を言うまい…
我々取材班は彼の家を後にした。
(…はっくしょんなの!!)
澪がくしゃみをした。
(むずむず…きっと誰かが私の噂話をしているなの。今夜は早めに眠るの。
おやすみなさいなの)
月明かりに照らされた夜空の下で、
またひとつの新たな悲劇→恋の予感がしていた……