乗車人数を元にした死亡率、負傷率、人身事故発生率の鉄道事業者の順位。
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国交省に情報公開請求して開示させた2008年度の鉄道人身事故リストを集計すると、首都圏38路線で自殺・事故死の絶対数が多かったのは中央線、京浜東北線、山手線の順。ところが利用者1人あたりの「死亡率」を計算すると、東武東上線がトップとなり、利用者数が多い中央線は4位に退く。東武は事業者別に集計した死亡率ランキングでもトップで、駅別でも高い傾向が出るなど、もっとも人が死にやすい鉄道会社であることが分かった。一方、6月にホームドア設置が発表された山手線は、平均よりも、むしろ安全な路線だった。(路線別・事業者別の集計データは末尾でエクセルダウンロード可)
【Digest】
◇路線別:死亡率1位は東武東上線
◇死亡率7位の中央線 毎日乗ると11万人に死者1人
◇駅別:中央線・荻窪駅、死者3人でも死亡率は10位
◇事業者別:死亡率の高い東武、負傷率の高い東急
◇原因別:「ホームから転落」で4割が死亡
◇「危険ですので絶対に線路には降りないで下さい」
鉄道駅での人身事故に関する前回の記事では、山手線と、山手線に接続する37路線を加えた首都圏の計38路線を集計し、2008年度に死亡者が多かったのは下記の通りだったと報告した。
1位:中央線21人(うち自殺20人)
2位:京浜東北線18人(自殺17人)
3位:山手線12人(全員自殺)
だが、この3路線は乗車人数でもトップ3なので、自殺や事故が多いのも不思議ではない。鉄道各社がウェブサイトで公表している駅別の平均乗車人数を路線別に集計すると、多い順に1位から3位まで山手線515万人、京浜東北線419万人、中央線314万人と並ぶ。このほか、死者の多かった東海道線(利用者順5位、死者9人)、横須賀線(6位、5人)、小田急小田原線(8位、6人)も、乗車人数の多い路線に入る。
物理的な飛び込み防止対策がなければ、利用者が多いほど死者が多くなるのは当然だ。しかし、利用者数の割に死者が目立つ路線が3つあった。東武東上線、JR宇都宮線、西武池袋線だ。2005年3月、竹ノ塚駅近くの踏切で4人が列車にはねられ死傷した東武伊勢崎線も、駅での死傷者が多い。
そこで、路線別に利用者1人あたりの死亡率を計算したところ、東武東上線がトップだった。東武鉄道は事業者別の死亡率でも1位になった。(なお伊勢崎線は山手線に接していないため集計から除外した)
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路線別の死亡率などの一覧。左上に行くほど死亡率が高い。あなたが利用する路線の死亡率を見てみよう。 |
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◇路線別:死亡率1位は東武東上線
東武東上線は08年度だけで10人の死者を出しており、路線別の死者数ランキングで4位に位置する「多発路線」だ。東武鉄道がウェブサイトで公表している08年度の駅別乗降人数をもとに集計すると、東上線の1日の平均乗車人数は97万人。これは路線別の乗車人数ランキングで38路線中20位にあたる。
東上線の年間の乗車人数はのべ約3億5408万人で、このうち10人が死亡しているから、約3541万人に対して1人が死亡した計算になる。死者数がトップだった中央線では5457万人に死者1人だから、東上線は中央線よりも約1.5倍、死亡率が高い。死者の出なかった10路線を含めた死亡率は、38路線平均で1億2518万人に1人の割合だったため、東上線の死亡率は平均より3.5倍高かった。
もっとも平均に近い路線は、1億2833人に対して死者1人の割合だった西武新宿線。1日の乗車人数は約70万人で、08年度は2人が死亡した。死者21人だった中央線は、死亡率では平均より2.3倍高い.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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駅別の死亡率などのランキング。JR蓮田駅が、死亡数年間5人で、絶対数ではトップ。 |
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事業者別の死亡率などの一覧。左上に行くほど死亡率が高い。グレーの線はJR東日本の発生率。 |
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