島国であり山と森林の多い日本には戦車は不要である。
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『防衛白書』『世界国勢図会』
島国であり、山と森林の多い日本には戦車は不要である。さらに道路も狭隘な日本にはやはり戦車は不要である。
上にあげた本などを読んで考えたら、そんな結論が出たので、考えをメモしておく。
お断りしておきますが、私はアカではないのでご安心ください。(どうでもいいね)
イラクやその周辺の国々では国の防衛には戦車は必要かもしれない。後で考えたらそういう地域でも不要と考えられるかもしれないが、中東諸国では一応戦車は必要と考えておく。
なぜだろう
地形と気候で考えると、イラク国土には山岳地帯がほぼなく、森林もほぼない。年間降水量がかなり少ない。
そして、自動車が少ない。
イラクは自動車一台あたりの道路延長は43m。道路密度は0.10km/k㎡(世界国勢図会420ページ参照)
こういう場所では戦車部隊やAFVの部隊が横方向に展開しながら進攻できる。車間距離も十分に開けられる。戦車など装軌車両の履帯の消耗率もそれほど高くならないだろう。
イラクは戦車や装軌車両が扱いやすい地域である。
それに対して日本は国土に山が多く起伏に富んでいるし森林も多い、年間降水量もイラクとは比較できないぐらいに多い。
道路は狭い。そのうえ自動車が多い。
日本の自動車一台あたりの道路延長は16m。道路密度は3.22km/k㎡(世界国勢図会420ページ参照)
日本の国土では、戦車や装軌車の履帯にかなり強い負荷がかかる。道路は総延長距離は長いが、戦車が移動できる道路の比率が低い。戦車は種類によって多少違うが幅が3.4mぐらいするし車体長は7mから7.6mぐらいはする。主砲の長さを考えると9m~10mぐらい。それよりもいくらか大きい戦車もある。
ここまで大型の車両は日本の道路を自由に走れないので、使いようがないでしょうね。
戦車が単独で走行するのでなく4両や8両などの部隊で移動しようと考えたら日本の道路では戦車部隊は非常に不自由するでしょうね。戦車よりはいくらか小型の歩兵戦闘車などが混じっていても、移動の大変さは、ほぼ減らない。
16両の戦車部隊だとさらに大変になる。車両が増えれば増えるほど移動の困難さは跳ね上がる。
隊列が長くなるし部隊が横方向に展開できる機会があまりない。これだと先頭の戦車の履帯がいかれたら、後ろの戦車は行動不能となる。
だから、乗用車を路肩に20台ぐらい(1,2両だと戦車が乗り越えてしまうので20台としました)道沿いに並べておいたら、戦車部隊がそんな道路には入れなくなる。その自動車群を取り除くことはできるかもしれないが時間がかかるので、進攻は大幅に鈍る。
ということは日本列島に敵が進攻(私は日本列島に上陸できる地上軍はない、と思いますが仮の話です)したとしても日本各地の主要道路に自動車を乗り捨てれば、戦車が進攻できなくなる。ということです。それら自動車を全部片付けながら進攻するのは無理でしょうね。
道路が使えないと、戦車でも日本列島内では行動範囲が大幅に下がる。
それ以外にも戦車部隊が機能不全をおこす罠の仕掛けようはあるのですが、面倒なので割愛。(考えられる人は考えてください)
だから、日本列島内に大量の戦車は持ち込めない。ということです。
敵が大量の戦車を列島内部に持ち込めないということは、日本の陸上自衛隊の戦車はいらない。ということです。
いまは陸上自衛隊の戦車の保有数は90式が300両ぐらい74式は500と少しぐらいでしょうね。
上に日本列島内に戦車は大量に持ち込めないと書いてしまいましたが、北海道は平野部が多いし冬は雪で大地が覆われるので、戦車部隊も活躍できる。だから90式のほとんどが北海道にある。しかし、いまの極東ロシアは、戦力が大幅にダウンしたので、北海道の90式は存在意義を失っている。南の方角から海を渡って大量の戦車を北海道に持ち込む国は無い。ですので、日本列島内に大量の戦車は持ち込めない。と書いても無理が生じない。
戦車は日本列島には要らない。陸上自衛隊の戦車はすべて取り除くべきだ。すぐには無理でもいずれは戦車保有数を0にするべきでしょうね。いまの戦車は1両あたり8億円ぐらいする。こんなに高価な割には役立たずの戦車は日本からはなくすべきだ、戦車がなくなれば軍縮をアピールできるしね。戦闘機は1機100億円や120億円あるいはそれ以上しますが、これは仕方がない。空の守りは重要なので、戦闘機は保有している必要がある。陸の守りも重要ですが、それであるがゆえに日本の道路事情を考えて役立たずの戦車は要らない。
戦車は単体で考えたら、防御力は高いのですが、都市部で使用するのには不向きだ、守りたい都市の施設がダメージを受けたのでは、戦車内部の乗員が生き延びても、さしたる意味はない。
装輪装甲車は装甲が戦車よりかなり脆弱なので、戦車と戦うときに装輪車両の96式装甲車を使えばいいではないか。という意見をいうと笑い出す人がいます。しかし、日本の道路は96式が走行するのに向いているので、もし敵が攻めてきたら96式やその他の車両とヘリを使用することになるでしょうね。上に書いたような日本の地形の特性を生かせれば、戦車と正面から撃ち合わなくとも勝機は十分にあるでしょう。
戦車と正面から撃ち合うなどということは誰も考えないでしょうね。
日本の陸上自衛隊には戦車の重要性は低い。戦車は日本国内では小銃よりも使いでがない装備かもしれない。
だから陸自には戦車はいらない。防衛大綱で戦車の保有数をを900両から600両に減らすとあるが方向性は正しい。いずれは戦車の保有数を0にして欲しい。
あまり纏まりはついていないが日本国内で戦車は使えない装備だ、という私の意見は、簡単に覆らない。
『防衛白書』を読んでみると自衛隊の即応能力は高い。災害がおきてから2時間以内に約2700名と約30機のヘリと約410両の車両が出動できる態勢を整えている。ということは、災害以外の緊急時にもそれに匹敵する車両等が駆けつけるということなので、日本がどこかの国に上陸されて攻められる。という心配はあまりする必要がない。
四川省の大地震に救援活動がすぐできない国の軍隊には海を越えた大規模な作戦を実行するのは無理がありそうだ。脅威論は真に受けてはいけない。
追記
戦車不要論。戦車無用論は日本の国土の性質を考えれば正しい。わからずやを説得しようとすると長くなるが、ここまで丁寧に書けば、理解してもらえると思う。
自衛隊の戦車800だか900両を全部なくして、かわりに海自の掃海部隊の強化でもしたほうが、よほど役に立つ。仮に敵が攻めてくるとしても揚陸艦や輸送艦からの上陸を防げる。掃海能力が上がるということは機雷の敷設能力も向上するということになるし、機雷除去なら平和維持活動にも貢献できる。それから平時にも国内の救助その他の任務でも掃海部隊は何事か役に立つだろう。
さまざまなタイプの輸送機もいくらか増やせば国内外の救助活動に使用できる。これも役に立つ。
要するに戦場で陣取ったり撃ち合いをするぐらいにしか役に立たない戦車はコストパフォーマンスが悪いのでいらない。掃海部隊や輸送機なら平時にも重宝する。
さらなる追記
どうやらこの記事を検索してまで見ている人が数人以上いるようなのでいくらか付け足す。
戦争の抑止に最も効果があるのは、都市の耐久性を向上させることです。都市の建築物の耐震化を進めるなどの対策も、いざ爆撃されるとなったときに、建物のダメージが小さくなるので、敵方の国は用意しなければいけない爆弾の量を増やさなければいけない。雪国では地震が起きても民家などの建物が壊れにくいですが、雪国の民家は雪によってつぶれないように柱が多めのつくりになっている。それと似たようなことです。それからそういうハードの強化のほかにも、ソフトの部分の強化も必要でしょうけども、私は都市論には疎いので書けないですね。残念。
それから、攻撃側は都市の他にも、製鉄所や主要な工場、発電所、燃料備蓄施設、避難所に使用できる学校、飛行場、港、主要な橋、TV局、自衛隊の基地、駐屯地などの施設を爆撃する必要がありますが、日本にはそれらの施設が、それなりに多いですね。誰でも知っていると思いますが製鉄所はかなり広いですので2,3発爆弾を落とされても、短期間にある程度は修復可能です。だから機能を長期にわたって停止させたければ精密誘導爆撃で数十発(あるいはもっと)は爆弾を使用しなければいけない。日本のすべての主要施設を爆撃しきるには膨大な量の爆弾が必要になる。
日本から戦車がすべて消え去って、攻撃側の対戦車爆撃用の爆弾が0になったとしても、日本を制圧する目的で使用しなければいけない爆弾の総量は、たいして減らない。戦車があると戦争の抑止になるという意見は苦し紛れのごまかしだろう。
だから戦車はなくして税金の節約を図ればよい。そして都市を整備する目的では国防費は使用する必要がない。都市の整備は国防費を使用せずに戦争の抑止になるので意味がある。戦車は平時には役立たずだが、都市は平時にも戦時にも役に立つ。
それからやはり、敵軍が上陸するということは、空軍兵力と海軍兵力が自衛隊の防空能力と海上防衛力を大幅に超えているのでなければいけない。しかし、そんな兵力を保持するには金がかかりすぎるので、アジアにはそんな金の用意できる国はないです。中国でも無理です。
http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/h20_PRC/Military_Power_of_PRC_2008.pdf
別の場所でも紹介しましたが↑を見てください。この程度の上陸能力しかない国の軍隊が日本に上陸することはない。10年たっても日本に上陸する能力はないであろう。20年後ではどうかというと、わかりませんが、たぶんないと思います。
アメリカは大型の揚陸艦とLMSRなどの輸送艦を多数持っていますが、そういう艦艇を多数保持するためには海軍の絶対的な規模が大きくなければいけない。揚陸艦や輸送艦がありさえすれば地上部隊を上陸させられる、というので海軍を揚陸艦、輸送艦だらけの編成にする間抜けた国はない。それでは海戦に勝利できない。多数の輸送艦を抱え込めるぐらいの規模の大きい海軍を用意できる国はアメリカ以外どこにもないでしょうね。海軍ほど金のかかるものはないのです。
繰り返しになりますが戦車があると戦争の抑止になるという意見は、ごまかしに過ぎないと思います。とくに強調したいのはそのことです。
旧ソ連は一つ覚えのように戦車を大量に製造した。アメリカ陸軍の戦車保有量を大幅に超える戦車を持っていた。軍事費がGDP比で考えても異常に多かった。そんな無理をするからアメリカとじかに交戦しなくとも、冷戦に敗北して体制がくずれた。
戦車だけでなくて軍事費を増やしすぎた国家はつぶれます。中国も軍事費を増やしすぎれば旧ソ連の二の舞になりかねない。たいした脅威にはならない。
もう少し付け足し。
戦闘機や偵察機などの航空機ならば、平時でも役に立つ。日本の領空内やそのすぐ近くに他国の航空機がやってくるケースは平時でも、起こりえますので、そのときに戦闘機などがスクランブル発進しなければいけない。だから日本国防においては航空機は重要だし、島国でなかったとしても、どこの国でも制空権を取る、または自国の制空権を他国に侵犯させないように空の守りを固めるのは重要だ。自国の領空が航空機に侵犯されたときに戦車がスクランブル発進することはありえません。それを考えても、制空権が重要な現代の戦争では戦車の使い道はあまりなさそうですね。
ヘリは島国であり山がおおい日本に、どうしても必要な装備でしょうね。四国と本州にかかる橋が爆撃やミサイルの攻撃などですべて落とされても、ヘリがあれば、四国と本州を行き来できます。戦車は橋がないと四国と本州を行き来することはできません。砲塔を猛スピードで回転させても飛びたてません。
もし、日本の陸上自衛隊の戦車の保有数が800両程度から、5倍に増加し4000両程度になって、航空自衛隊から戦闘機の保有数が0になったらどうなるか。そんなふうになったら、国防が立ち行かなくなる。
戦闘機が今の定数のままで、戦車の保有数が0になっても、国防には問題は起きない。そもそも、陸上自衛隊の戦車保有数ははじめから大した数でもないのだから、それが0になっても、国防が揺らぐことはないでしょうね。以前61式を退役させてから、戦車の保有数は減る一方ですが、特に問題は起きていない。
戦争の抑止に戦車が使用できるのであれば、在日米軍が日本各地に戦車を入れてもよさそうですが、そういうことはありません。だから、戦車で戦争を抑止できるということはない。在日米軍は航空機と艦艇、対空兵器などを日本に持ち込んでいますが、戦車はないでしょうに。
ずいぶん付け足したものですが、ここまで書けば理解していただけるだろう。
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1 ■もしかしたら
上の記事に2時間以内。と書いた箇所が正しかったかどうか不安になったが、たぶん正しいと思います。