2010年3月20日0時6分
例年、この時期になると、ブラックスーツに身を包んだ学生たちの姿がオフィス街で目につくようになる。3年生の秋ごろから始まった就職活動が年明けとともに本格化。これからゴールデンウイークごろにかけて面接を重ね、内々定へとつながっていくのである。
しかし、今年は例年とは若干様相が異なる。本来なら半年以上も前に就職活動を終えているはずの4年生がまだ必死に就職活動をしているのである。
厚生労働省と文部科学省の共同調査によると、今春卒業予定の学生の2月1日時点の内定率は80%にすぎない。これは2000年以降で最悪の数字だ。
景気悪化による企業の採用抑制が主な理由とされる。確かに多くの企業が採用数を絞り込んでいるが、原因はそれだけではないようである。
就職あっせん会社が行った就職活動をしている大学生の意識調査によると、サラリーマンがリストラなどに苦しむさまを見て、安定した大企業や公務員を希望する傾向が一層、強まっているという。
独自技術やマーケティング力を背景に、確実に業績を伸ばしている中小企業などでは、この機をチャンスと見て採用拡大に踏み切っているところも多いが、学生たちはより安定した大企業を求めるため、そうした企業に人材が集まらないミスマッチが発生しているのである。
ミスマッチを解消するためには、産業界としての努力はもちろんだが、学生の意識改革も必要である。先が見えない時代といわれるこの時代こそ、ハイリスク・ハイリターンとまでは言わないが、一定のリスクをとってもチャレンジする意欲を育む人材育成が求められているのではないだろうか。(H)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。