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大学新時代

「今後も研究を」タカラ創業者が山形大院修了 85歳で工学博士に

 

ギネスブックに申請

 玩具メーカー「タカラ」(現タカラトミー)を創業し、「おもちゃの王様」と言われる佐藤安太(やすた)さん(85)が、山形大大学院理工学研究科の博士課程を修了。21日に山形県米沢市で行われる学位記授与式に臨む。博士論文では、大ヒットした「だっこちゃん」「人生ゲーム」などを生み出した経験を踏まえ、ものづくりの創造性を後継者らに効果的に伝える方法を理論化した。同大は「名誉博士号などを除けば、これほど高齢の工学博士の誕生は例がないのでは」としており、佐藤さんは自らギネスブックに記録を申請した。

博士論文を手にする佐藤さん(東京都中央区のライフマネジメントセンターで)

 佐藤さんは、1945年8月の終戦時に米沢工業専門学校(現山形大工学部)を卒業。「リカちゃん人形」「チョロQ」などもヒットさせ、一代でタカラを日本有数の玩具メーカーに育てた。2000年に社長を退任し、現在は社会教育のためのNPO法人の理事長を務めている。「第二の人生でも社会に役立ちたい。実践的に身に着けた経営理念を、きちんとした形にまとめ、残したい」と思い立ち、07年に同大大学院に入学した。

 経営学のほか、倫理学や脳科学の理論を応用し、学生らが生活・勉強の課題や目標を具体的に書き出して仲間の前で発表する人材育成法などを研究。同大のほか、生まれ故郷の福島県いわき市にある福島高専などで、学生や生徒が実際に商品開発に挑戦する授業の講師を務め、この人材育成法がアイデアの活性化などにどうつながるかを検証した。

 約170ページにまとめた博士論文のタイトルは「創造性伝承のための思考技術(リテラシー)に関する考察」。指導した高橋幸司教授(57)は「『企業経営で培った経験でも、客観的に検証しないといけない』と繰り返し伝えた。良い出来栄えの論文になった」と評価する。

 佐藤さんは、「博士号は最終の目的ではなくて、出発点。今後も研究を改善し、学生や社会人らの能力を伸ばしたい」と抱負を話している。

2010年3月18日  読売新聞)

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