県内7例目で、殺意の有無が争点となっている裁判員裁判は17日、熊本地裁(柴田寿宏裁判長)で2回目の公判があり、審理は結審。殺人罪に問われている植木町投刀塚(なたつか)の会社役員、上野祐斎被告(43)に検察側は懲役12年を求刑。弁護側は「懲役3年、執行猶予5年が相当」と意見を述べた。判決は19日午後に言い渡される。
この日、被告の娘が弁護側の証人として出廷した。傍聴席から姿が見えないよう、囲いが立てられた。未成年である自分の交際に反対し、当時38歳だった交際相手を殺害したとされる父親が被告席に座る。
弁護人が「父親に対して今、どういう思いか」と問うと、「私を守ってしてくれたこと。私がお父さんと代わってあげたいです」。
娘は約20分の証言中、終始涙を流しながら答えた。傍聴席の家族からもすすり泣く声が漏れた。娘は最後に、「私のせいで、ごめんなさい…」と消え入るような声で話した。
午前と午後の2回にわけて行われた被告人質問では、検察と弁護側の双方が、犯行状況など質問した。
上野被告は「被害者を包丁で脅してでも、娘と別れてもらいたい気持ちだけだった。(包丁で)傷つけようとしたのではない」と一貫して殺意を否認した。
論告で検察側は犯行状況、動機などから、「被告に殺意があったのは明らか」と述べた。弁護側は「殺意はなかった」と傷害致死罪の適用を求めた。さらに、過剰防衛による減軽に加え、「交際状況などから、娘を命懸けで守るために犯した犯罪」として、情状酌量も求めた。
=2010/03/18付 西日本新聞朝刊=