県内で初めて起訴内容を争う裁判員裁判で殺人罪に問われている植木町投刀塚(なたづか)、無職、上野祐斉被告(43)の公判は17日、熊本地裁(柴田寿宏裁判長)で結審した。検察側は懲役12年を求刑、弁護側は「懲役3年、執行猶予5年が相当」と訴えた。
上野被告は「自分より体の大きい被害者に左右に振り回されて怖くなった」と話した。裁判員から包丁を準備した経緯を聞かれ「被害者を脅そうと思って事務所を見回したら包丁が目に入った」と語った。
被告の娘(16)はプライバシー保護のため特別な仕切りを立てて証言した。「被害者からは暴力を振るわれたり、金を貸してくれと言われたりした。事件を聞いて解放されたと思った」と語った。
検察側は論告で「極めて殺傷能力の高い凶器で力いっぱい腹部を刺しており、殺意はあった。被害者と被告の娘は真剣に交際していた」と訴えた。弁護側は「身を守ろうと刺してしまった。被害者がもう会わないという約束を破るなど落ち度が大きく同情すべき点がある」と主張した。
起訴状によると、09年9月8日午後11時20分ごろ、植木町の会社事務所で、娘の交際相手だった被害者の男性(当時38歳)に殺意を持って包丁(刃渡り20センチ)で腹を3回刺すなどし、出血性ショックで死亡させたとされる。【遠山和宏】
毎日新聞 2010年3月18日 地方版