<リプレイ>
●森を抜けて 「正門の巡礼士たちを指揮しているのは、ランドルフさんみたいね」 聞き覚えのある声に篠宮・沙樹(死ノ宮ニ咲ク沙羅樹・b18858)がいう。 「派手にやってくれている間に通り抜けるぞ」 打ち合わせをした通りに動きだす。 既にイグニッションをし、すぐに戦闘出来る様、準備万端だ。 通り抜けやすい場所を選ぶ。 (「島に残って加勢したいけど、連絡役も大事なんだよな。連絡終わったら、ケリつけに戻ってきてやるからな!」) 鏡・流刃(真猫・b00137)は振り返り、本館を見上げた。 (「…聖杯、奪われちゃったけど、まだ、間に合う。…ううん、間に合わせる為に、頑張らないと、ね。…行こう、とりさん」) 儀式を行うまでまだ時間があると、風嶺・桜花(使役ゴーストの名前はとりさん・b04465)は真シャーマンズゴースト・シャドウのとりさんをみる。 「まだ、わたしたちは負けてないよ〜! 銀誓館のみんなに、伝えないとね!」 暗くなりがちな雰囲気を払拭するように、水原・椎奈(陽だまりの姫君・b31817)が、まだまだ大丈夫だと、出来るだけ明るい声で皆を元気づける。 「絶対諦めない」 (「笑顔だって絶やさないわ」) ホーリィも笑顔で応える。 「…皆、絶対、生きて帰ろう、ね」 桜花の言葉に皆頷く。 (「最後の一人になっても、連絡が取れれば此方の勝ちです。その一人が自分でなくても」) 不破・恭也(操り手が居なくなった操り人形・b24561)は、全員で戻るのが最善だけど、いざとなれば…と考えていた。 「この島の詳しい地図をもらえないか」 ルーベット・アキモト(気儘勝手・b22039)は、迷ったり遠回りにならないようにと、自身の本業能力であるスーパーGPSで位置確認しつつ進めれば、無駄な時間を消費せずに済むと考え、森を少し入った本館に近い場所で守っている巡礼士に訊ねる。 「島と島の周囲の物になりますが…」 そう言って巡礼士が取り出したのは、プリントアウトされた地図だった。 巡礼士たちの通常時の人員配置の物らしかった。 「助かる」 ルーベットは礼を言うと、巡礼士が頷き返すのを視界の端に捉え、静かな緊張感の中、遠くに剣戟の音を聞きながら、行動を開始した。 陽の当たらない地面は湿気を含んで、足が僅かに沈み込む。 本館の正門にあたる側面に広がる森の中を迂回し、ナイトメアビーストたちの背後に出る予定だ。 森はその辺りまで続いているが、細長く延びているため木々の層としては薄い。 森の中で戦闘となれば、森の外にいるゴーストやナイトメアビーストたちに気づかれる可能性があった。 (「王子様、巡礼士の皆様、必ず助けを呼んでまいります。どうか、どうかご無事で…!」) 紫堂・小夜(小学生水練忍者・b26122)は、籠城戦を始めた巡礼士と本館の一室に留まっている団十郎の事を思う。 できるだけ敵と遭遇しないよう祈りながら、先へと急ぐ。 (「繋ぐの。笑顔、希望…そして、生命。必ず…!」) 言葉を交わした巡礼士の人々の犠牲が少ないよう祈り、ホーリィ・ランプフィールド(インビジブルスマイル・b18301)は駆ける。 (「希望は最後まで持ち続けるわ」) 紗白・波那(輝ける花・b51717)は、彼らなら持ち堪えてくれると信じている。 そして揺籠の君の企みを潰して、穏やかにまた皆で一緒にシフォンケーキ食べたりして、話をしたいと思う。 (「籠城がいつまで持つか判らない。早く学園に連絡を取らなければ…待っていろよ!」) 渡辺・拓己(中学生呪言士・b56301)自分たちを送り出す為に言った訳ではなく、団十郎も言っていたから大丈夫だと思うが、それでも出来るだけ早くするに越した事はない。 木々という障害物がある為、視界は悪い。 死角から飛び出してきた場合に備えて強化は済ませてある。 ルーベットのスーパーGPSで位置を確認しつつ、十分に周囲を警戒。 体力のある者が前衛に、使役たちは前衛や側面にあたる場所に居て貰っている。 「出会わない様にと祈っていたけど、そうはいかない様ね」 戦闘が多ければ、それだけ時間をロスするからだ。 沙樹は冷静さを感じさせる声音で周囲に喚起した。
森にいるのは妖獣で、狼型が3体襲いかかってきたが、回避することなく戦う事を選択する。 数が多ければ、被害を最小限になるよう、層の薄い所を強行突破する方針だった。 3体なら、そう時間を掛けずとも倒せるという判断。 とはいえ、戦っている内に他の妖獣も集まってきた場合、厄介なので1体に集中して攻撃し、倒れたら次の標的と数を減らし、こちら側の有利を保持しつつ戦闘維持する。 眼前の敵を葬り去ると、妖獣と遭遇する事はあったが、数は少なく滞りなく倒し、森を抜ける事が出来そうだった。
●本館内 「銀誓館の方々は出発されました」 「無事に辿り着いてくれるといいが」 戻ってきたアエアネスの言葉に王子団十郎は皆の無事を祈る。 それから一言二言バルナバスと言葉を交わし、会議室を辞していった。 「じっとして待つのは苦手かね?」 「いつも運命予報士として送り出す側で、待つのは慣れているのだが…」 「ほう」 興味深げに、バルナバスが団十郎を見た。 「黙っているのも気詰まりじゃろうから、話でもどうかの」 さぁ、話をしろと催促されている様な気持ちを少し感じながらも、おじいちゃんに話をする孫の如く、団十郎は話し始めた。 沈黙したままで居るよりは会話の成り立つ方が、気が紛れていいと思ってはいたので。
●ナイトメアビースト8人衆 森の中を抜けると、桟橋まで続く道の出来るだけ端に出る。 本館側へと目を向ければ、黒服達をけしかけ、ずらりと並んで偉そうに胸を反り返させている8人のナイトメアビーストの姿があった。 後ろ姿からして、黒服の戦う様子を見ているのだろう。 森の中を抜ける場所の近くに潜んでいた妖獣との戦闘で気づいたのか、数人が周囲を歩き回っている。 (「油断ならない状況と敵ばかりなんだが…なんかあいつ等が…やめた、気を入れ直す!」) ルーベットは突っ込んでやりたい衝動に駆られつつも、時間が惜しいと自身に言い聞かせた。 皆の回復を出来るように、小夜を中心とした戦闘配置だ。 固まらないようにばらけて戦闘行動を開始する。 お腹が空きすぎて、樽のような身体をごろごろと地面を転がっているのは森畑一だ。 拓己が、一の前に波那が持っていたチョコレートの包みを投げ落とす。 「わ、甘いにおいだー」 たぷんたぷんと大きな腹を揺らして、地面にしゃがみ込み包みを拾う。 「…ビーストになってまでデブって、救いようがない、の」 ぐさっと鋭い言葉を吐く桜花に、一はぎゅるるるると腹の音で応える。 戦いより甘い物らしい。 その間に、距離を詰める。 余裕なのかバカなのか、ナイトメアビースト8人はマイペースだ。 相手に合わせる事はないと、皆は万全の配置完了。 後は倒すだけ。 「ちょっと、なに拾い食いしてるの!」 攻木可憐が一をしかる。 何故、私が拾い食いを注意しないといけないの!? と、不満顔だ。 「悪いな」 拓己はパラノイアペーパーを周囲に飛ばし、波那が可憐の胸を夢詠の鍵と銘のあるGペンで指し、コミックマスターの本領発揮とばかりに、スピードスケッチでSDキャラの可憐を描き出す。 「あんたら邪魔よ! この残念胸! バーカバーカ!」 「なんですって!?」 きぃっ! 可憐が地団駄を踏む。 一の手にあるチョコレートが小さく切り裂かれ、地面に落ちた。 「あ。チョコ〜」 「拾い食いは、止めなさいって言ってるでしょ!?」 「うざい」 一が悲しそうな声をあげるのを、黄昏峰男が嫌そうな目線で投げかける。 「名乗りをせずに攻撃を仕掛けてくるとはァ! 俺たちが怖いのかァ! 何てったってショートォ・ロンドで逝かせてやるか…ぐは!?」 ショート・グッドモーニングが、ふはは! と高笑いをした後、もったいぶった長口上を述べている間に恭也はクレセントファングで蹴りつけた。 「お約束は守らねばならない形式美だぞォ!?」 衝撃を受けた! とオーバーアクションでうちひしがれるショートさん。 放っておけば、のの字を書き出しそうな勢いだ。 「お約束? そんなに付き合っている暇はないです」 「くっ」 ばっさりと切り捨てる恭也。 ルーベットの放ったライトニングヴァイパーがショートさんと可憐、一を巻き込み直線に奔る。 「何すんのよ!?」 切れっぱなしの可憐に持木毛里が宥める。 「可憐ちゃん、そんなに切れないで。みんなもっふもふになるとしあわせだよ!」 「生温い、わ。ぐーちゃんに勝るもふもふなど有り得ないのです!!」 ホーリィはさあ見なさい! と凄くイイ笑顔で、真モーラットピュアのぐーちゃんを掲げる。 「何というもふもふ具合…! そのもふもふを渡すんだ…!」 毛里が声をあげる。 ぐーちゃんのもふもふ具合にすっかり魅了されまくりの所をホーリィは、白銀の枝を振り上げ、炎の魔弾を撃ち出した。 「よし、こいつで墜ちろ!」 流刃のちょっと物騒な銘のマジカルロッド、地雷探知機から炎の魔弾が弧を描いて一に着弾し、同時に真ケットシー・ガンナーのぷちりゅーの二丁拳銃が止めを刺す。 ミストファインダーで射程を伸ばしている沙樹は、毛里に遍条と鴛魔の双剣で、黒影剣を使い、斬りつける。 後で演技をするので、彼らの動きを追っている。 これを真似るのか…と少し悲しい気持ちになるが、それはソレ。 「…絶対峰男は、醜いから爆破したいって思ってる、の。…間違いない、の」 「…んだと、コラ」 桜花の言葉に沸点低すぎな峰男が、ホイホイと引っかかる。 「こいつらと一緒にするんじゃねぇよ。見ろ、この俺様の美貌!」 うっとうしげな前髪を掻き上げ、さあ見ろと威張り気味で桜花を見る。 突き刺さる視線。 「…格好良くない…の」 グサリ。 「な…んだと!?」 「…この地に揺蕩う同胞よ、我が求めに応え敵を撃て!」 ナルシストな分、否定されるのはかなりのショックらしく、峰男は身体を揺らす。 続けて、その身体に桜花の放った雑霊弾が衝撃を与えた。 「後ろでブルブルしてるなんて、いかにも雑魚なのです」 黒服たちを戦いに行かせ、その様子を後ろで見ているなんて、と小夜は可哀想な人を見るような目線を投げかける。 「雑魚…!? ねーちゃん、雑魚っていったよ、このこ!」 上半身のつやつやボディを晒す攻木亜蓮が、小夜を指さした。 「うるさぁーい! やっつけてしまえば、静かになるわよ!」 可憐が段々荒れてきている。 小夜は水刃手裏剣を投げつけ、ダメージを重ねているショートさんに当てる。 良い具合にさっくりと刺さった。 「痛いィ!」 「ゴーレムの方が、あんなのより、ずっとたくましいよね〜!」 椎奈の視線の先にいるのは亜蓮だ。 「ねーちゃん、ねーちゃん!」 存在を全否定された様な気持ちになったのか、亜蓮が涙目だ。 「黙りなさいよ!」 「邪魔はさせないよ〜! やっつけちゃえ、ゴーレム!」 真フランケンシュタインBのゴーレムが椎奈の号令を受けて勢いよく、サンダーブラストを放った。 「黒い胸板ー!」 亜蓮はゴーレムの攻撃を受けて傷つく自分にショックを受けている。 そこに椎奈は遠慮無く雑霊弾で衝撃を与えた。 急いでいるので皆、かなり容赦ない。 「く、なかなかやるなァ! 俺たちィのショートォ・ロンドを食らえィ!」 ショートさんの号令で全員同じ攻撃を仕掛けて来る。 「シ」 「ョ」 「ー」 「ト」 「ォ」 「ロ」 「ン」 『ド』 一は倒れているので欠番。 でも昇天してる所から電波受信。 主にナイトメアビーストたちの心の中で。 皆の心の中で思ったのは屹度同じ。 (「凄く…面倒な敵…。戦力とかじゃなくて、性格のうざさ加減で」) 悪夢爆弾より良いかなと思ったが、口上を述べつつ仕掛けてくるのでうっとうしい事この上ない。 もう一度聞くのはイヤだと思った一同は、集中力が増し精度も上がったのか、ばしばしと攻撃を当てて数を半分に減らす。 その間にも傷ついた分は、その都度回復して動きに支障がないように保つ。 「…ゆりゆりのどこがいいか、理解に苦しむ、の」 「ゆり姫さまの美しさが分からないとは、愚か者め…!」 峰男は、乱暴に言い捨てると倒れた。 更に半分に減ると、比較的静かだった面々が残り、戦いらしい状況下で仕掛け合うのは、どこか清々しい。 五月蠅い面々が居なくなると、有木あきらや赤樹川紅水の勢いが無くなり、集中攻撃を受け、一気に頽れた。 負け方もあっけない面々だった。
●電光石火 桟橋に何艘かのボートが動かし易く、陸側に向いている。 桟橋のボート管理用の小さな小屋の中や周辺にリビングデッドは居た。 襲う相手も居ない為に、かなりのんびりだ。 湖側を向いているのは、湖上にあるクルーザーでリリスたちが遊んでいる様子をぼーっと眺めているからだろう。 島には本館にしかゴーストにとって敵は居ない訳で、ハッキリ言って何もする事が無い。 警戒する相手も居ない為に、注意力散漫になっている分、襲いやすいといえた。 沙樹がどのボートにするか選ぶと、目線で頷きあい速攻で制圧に掛かる。 視界に入らないように身をかがめながら走り、小屋に近づく。 小屋の中にいるリビングデッドは拓己と波那がスピードスケッチで攻撃を仕掛け、その中を恭也とルーベットが傍を抜けクレセントファングを食らわせる。 これで小屋の中にいるリビングデッドは倒した。 沙樹はボートの運転席に飛び乗り、流刃がロープを解いて準備を手伝う。 勿論、周囲への警戒を忘れない。 「いけるか」 「ええ」 残るは、湖側でぼーっと佇んでいた2体。 距離的には乗り込んでいる時に追いつかれそうだと判断すると、ホーリィは炎の魔弾を撃ち込み、先制攻撃。 小夜は水刃手裏剣を打ち込み、続けて桜花と椎奈が雑霊弾で衝撃を当てた。 追いつかれそうなリビングデッドはこれくらいかと思った時、のそのそと騒ぎに気づいたリビングデッドが集まりだした。 中にはやたらとフットワークの高いリビングデッドもいる。 追いかけっこの開始だ。
●島を離れて 「急げ!」 流刃が仲間を呼ぶ。 「行こう!」 とりさんとゴーレムには全員がボートに乗り込むまで、リビングデッドが追いついて来て行動阻害された時の壁役として殿について貰う。 「動かせそうですか」 「ええ、いけそうよ」 恭也の言葉に沙樹が応える。 制服は少し目立つので、周囲から判別しにくいように内側になるように乗り込む。 船の縁に近い所にくっついてるのはとりさん。海棲生物のゴーストや、追いついてきたゴーストを弾き飛ばして貰う為だ。 「問題は明らかに定員オーバーだからさっさとクルーザーに乗り換えないと、追いつかれるって事だ」 「と言う事で、次の準備よろしくね!」 「…頑張る」 「ナビゲートお願い」 沙樹がボートのエンジンを掛ける。 「ああ、任せてくれ」 ルーベットが巡礼士に貰った地図を手に、スーパーGPSで確認する。 「行くわ。振り落とされないように確りと掴まっていて」 スピードは最初出にくかったが、距離を進めば安定したスピードが出た。
段々と島が小さくなる。 (「今回は退くが、これ以上、好きなようにさせるかっての」) 流刃は島にいる巡礼士の人々、そして団十郎の無事を願い、次に島へ上陸する時には蹴散らしてやると決意して、島を見送った。
●一芝居打ちます 「乗っている数の少ないのは…、あの端のクルーザーですね」 小夜が他の船より離れているのを指す。 椎奈はゴーレムとゴースト合体し、ぐーちゃんはホーリィの服の中に隠れている。 その間に流刃は後ろ手にされ、ロープでぐるぐる巻きにされていた。 イグニッションは解いている。ロープ自体は、後ろ手で流刃が上手く持って居るだけだ。すぐに行動に移れる様に。 小夜と拓己、ルーベットも同様にロープを巻かれている、
「おぉ〜いィ!」 滑らかな運転でクルーザーに横付けすると、船体についた梯子にロープを括り付ける。 ゴーレムは合体を解いて、とりさんと一緒に湖面すれすれに潜って隠れている。 「歯向かわないようボコってんで、引き上げ頼むわ」 口を布で塞がれた流刃を示す。 仕草は先程戦ったナイトメアビーストのショートさん他の口調を真似る。 「あらぁ、美味しそうね」 「…!」 何か言おうと流刃が演技して反抗的な態度を取る。すかさず沙樹が殴りつけると、おとなしくなった。 「貴様ら! 後で必ず聖杯を取り返し退治してやる!!」 ルーベットが反抗的な台詞で煽る。 「何て反抗的なのかしら」 「ホントね。食べても良いかしら」 「かしら」 「小さいのが良いわ」 よく似た容姿のリリスが3体、覗き込んで舌なめずりをする。 「乗せて良いわよ」 島や周辺にゴーストが多く、リリスは能力者だと判別出来ないのか、それとも仲間のナイトメアビーストとでも思っているのか、気軽に言う。 捕虜と言っても、食べてしまった場合には、食べちゃった♪ で終わりなのだろう。 捕虜を1人につき1人が担当して、クルーザーに乗り込む。 4人の捕虜役、流刃と拓己、小夜とルーベットがロープを放し、流刃はイグニッションする。 沙樹は、クルーザーの操縦をすべく運転席に向かう。拓己も邪魔が入らない様に露払いの為に同行する。 その間に残りの仲間が乗り込み、とりさんとゴーレムも戦闘に加わる。 小夜は停泊して下ろしているボートの船底を水刃手裏剣で穴をあけて使えない様にし、錨の鎖はホーリィが切り落とした。 「な、なによう!」 「捕虜を解放しろだなんて言ってないー!」 「面倒じゃない、捕まえるの!」 「それとも苛められたいのかしら?」 「残念、苛められるのはそっちだ」 演技とはいえ、殴られた分はそっちに八つ当たりだと、流刃がとてもイイ笑顔で言い放った。 リリスの身体を湖に突き落とし、出発した。
●湖上チェイス 「わ、わ、一杯くるよー!」 椎奈が雑霊弾を飛ばしていう。 「大丈夫、振り切るまで頑張れば大丈夫!」 ホーリィは炎の魔弾でリビングデッドにあてて、ポジティブに返す。 攻撃範囲内に入った者には全て攻撃を仕掛けていく。 一艘のクルーザーを機動力の高いボートが追いかけている。 停泊していたクルーザーは動かすのが面倒だったのか、追いかけてくる数は少ない。 沙樹がクルーザーを動かして、その周囲を守る様に皆が左右に展開する。 とりさんは船外から乗り込もうとするゴーストを突き落とし、桜花は雑霊弾で操縦者を狙う。 ゴーレムは、追いついてきたリビングデッドの乗り込んだボートに、サンダーブラストを放つ。 徐々にクルーザーのスピードが上がっていく。 取り付いてなかなか落ちないのは、小夜が爆水掌で吹き飛ばす。 ぐーちゃんは可愛い仕草で傷ついた仲間の傷を癒してまわっている。 ぷちりゅーはボートやクルーザーの運転席に居るゴーストを撃ち抜き、追っ手の数を減らしに掛かる。 数が多く乗っているボートには、恭也が地獄の叫びで攻撃する。 回るような忙しさとは、こういう事をいうのだろう。 沙樹は出せる速度一杯まで出し、追いかけてきていたボートを振り切った。 続くのは水の白い泡。 「見えた!」 ルーベットの誘導で最短ルートを進み、桟橋にクルーザーを横付けし、小夜と波那が飛び降りた。
残りのメンバーが追いつく中、小夜が銀誓館学園に繋がる電話番号をコールする。 (「お願い、早く助けにきて!」) 繋がるまでのコール音がもどかしい。 1回。 2回。 ぷつん。 止むコール音。 応えるのは落ち着いた声。 「繋がりました!」 小夜の声に、波那が笑顔で応え、皆の方へと振り返る。 その笑顔を受けた皆の顔が達成感で満たされようとした時、波那の顔は唐突に強張った。 「え……何、あれ」 彼女の視線を追って振り返った皆の視線は、琵琶湖の中央へと吸い寄せられる。そこでは、天へと向けてそそり立つ、巨大な建造物が築き上げられようとしていた。 「聖杯の、塔……」 誰かが呟く。 湖面に威容を映してそびえ建つ、巨大な塔。 それが揺籠の君の勢力によって築かれたことを、疑う者は誰もいなかった。
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参加者:10人
作成日:2010/03/19
得票数:カッコいい1
知的1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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