北九州市若松区の市立青葉小5年、永井匠(たくみ)君(当時11歳)が担任の叱責(しっせき)を受けて自殺してから4年目の命日に当たる16日、母親の和子さん(48)が子宮がんで亡くなったことを受け、残された父親の昭浩さん(49)は「遺志を受け継いでいかんと、2人は死んでも死に切れん」と語った。いったんは市を相手にした裁判で和解を受け入れる考えもあったが、訴訟を継続する姿勢を鮮明にした。
匠君の両親は、自殺の原因が担任の体罰にあると主張した裁判の1審で勝訴。市の控訴により福岡高裁で係争中だ。高裁は1月、原告、被告の双方に和解を打診した。しかし市が担任の行為を体罰と認めることをかたくなに拒み調整が難航。原告側は和子さんの存命中に裁判を終わらせるつもりだったが、和子さんが亡くなった以上、1審と同様に自殺原因の責任を徹底追及する方針だ。
16日、入院先から帰宅した和子さんの遺体は、匠君の仏壇の前に安置された。「命のあるうちに片を付けたかったけんね、無念さはあると思うよ」と昭浩さんは唇をかむ。和子さんの遺骨は、まだ真新しい匠君の墓に一緒に納められる。命日のこの日、墓には同級生が訪れた跡があり、好物だったコーラがたくさん供えられていた。【朴鐘珠】
毎日新聞 2010年3月17日 西部朝刊