【多良間】環境省のレッドリストや県レッドデータブックで「絶滅危惧(きぐ)Ⅱ類」に指定されているヤシガニの乱獲を防ごうと、多良間村は2010年度からヤシガニ保護条例を施行する。15日の村議会定例会で条例案が可決された。同村によると、ヤシガニ保護に関する条例制定は県内初で、専門家は「日本で保護に関する具体的な法律がなく、国内初の実効的な保護策」と高く評価している。
条例では、ヤシガニを豊かな自然の象徴で有用な資源として、将来にわたり持続的に活用するための保護が目的と明記。産卵期の7月1日から8月31日までを採取禁止期間とし、産卵する最小サイズの目安として甲の長さが8センチ以下のヤシガニの採取禁止などを盛り込んだ。違反者には10万円以下の罰金を課す。
甲殻類を研究する琉球大学大学教育センター非常勤講師の藤田喜久さんは、海外ではヤシガニが絶滅寸前の国もあると指摘。「活用しながら守っていくという意味でも今回の条例は意義がある」と述べ、他地域への波及に期待を込めた。
下地昌明村長は「島外へ売られるなど乱獲の懸念がある中、村民のモラルを促したい」と話した。
ヤシガニはオカヤドカリ科で、陸上で生活する甲殻類では最大の大きさ。生息地は鹿児島県の小宝島が北限とされ、世界の亜熱帯、熱帯諸島に生息する。