リュウグウノツカイ柏崎でも
蛇のように細長い胴、頭から伸びる赤いひれ。その神秘的な姿を人前に現すことはほとんどない深海魚「リュウグウノツカイ(竜宮の使い)」が、昨年末以来、本県を含め日本海側を中心に相次いで見つかっている。名前通り、言い伝えは多いが生態はほとんど分かっておらず、専門家も「なぜ今年は多いのか」と首をかしげている。
国立科学博物館によると、リュウグウノツカイは硬骨魚類に分類され、外洋の深さ約200メートルから千メートルに生息。体長は5メートル前後が多いが、10メートル以上の記録も。エビなどの小型甲殻類が主食という。
泳ぐときに波打つ長い背びれから人魚のモデルとする説もあるが、遠浅の海岸にはめったに現れないため、詳しい生態は不明だ。しかし、この冬は日本海沿岸で網に掛かったり、漂着したりするケースが相次いでいる。
本県では2月9日、柏崎市西山町大崎海岸で死がいが漂着しているのが発見された。体長4メートル5センチ、重さは約20キロ。柏崎市立博物館によると、県内で確認されたのは1994年以来だという。
柏崎市立博物館学芸員の箕輪一博さん(55)は「北陸を中心にこれほど上がるのは珍しく、面白い。しかし要因は分からない」と話す。
京大舞鶴水産実験所によるとリュウグウノツカイは泳ぐ力が弱いため、風の強い冬季は海が荒れた後に海岸に漂着するとみられるが、今回は天候と関係なく見つかっており、風だけの影響とは考えにくいという。
リュウグウノツカイ漂着は地震の前触れという言い伝えもある。地震の予兆現象を調べているNPO法人「大気イオン地震予測研究会」の弘原海清理事長(環境地震学)は「一般的に海底近くの深海魚は、海面付近の魚より活断層の動きに敏感」と話す。
だが、ほかに地震の前兆とみられる現象は報告されておらず、リュウグウノツカイも広範囲で見つかっているため、弘原海さんは「今のところ地震に直結するとは言えない」と懐疑的だ。
新潟地震発生直後の64年6月18日にも柏崎市で発見されるなどしているが、箕輪さんは「地震と関係なく漂着しているケースも多く、関連づけて考えるには根拠が薄いと思う」としている。