きのう片山さつきさんとの対談で、ツイッターの反応も同時進行で見たのだが、若者の福祉に対する不安が強かった。税金や年金が団塊以上の世代に食い逃げされ、自分たちには重税と不安定雇用が残るのではないか、という絶望が彼らの消費を抑制し、不安をさらに増している。
日本のように成熟した社会では、急速な成長を求めるのではなく、福祉による「幸福度」の向上を求めようという民主党の考え方はわからなくもない。しかし、それならまず手をつけるべきなのは、不合理な社会保障制度だ。湯浅誠氏のいうように、現在のセーフティ・ネットは穴だらけで、もっともネットを必要とする零細企業が失業保険を払っていないため、職を失うと「すべり台」のようにホームレスになってしまう。
他方で、福祉の負担を企業に押しつけてきたため、大企業の付加給付や年金負担は賃金総額を上回り、JALにみられるように経営破綻の原因になる。「終身雇用」という名の過剰雇用を義務づけ、雇用調整助成金によって「人的不良資産」の処理を先送りする民主党政権の政策は、(90年代に経験したように)水面下で問題を拡大し、最終的にはJALのように破局的な結果をもたらすだろう。
福祉充実と財政再建と両立させるには、非効率で不公平な社会保障システムを改革するしかない。その際の基本的な考え方は、八田達夫氏もいうように、老人とか農家などのグループによって所得を再分配するのではなく、個人の所得によって再分配を行なうことだ。老人でも何十億円も資産のある人には医療費は全額負担させてもいいし、農家の所得は非農家より高いのだから所得補償なんて必要ない。
フリードマンが半世紀前にのべたように、所得再分配はしょせん金の問題なのだから、すべて税制によって行なうべきだ。北欧で国民負担率が高くても不公平感がそれほど強くないのは、負担と給付の関係が透明だからである。ところが日本では、所属集団に依存するアドホックな移転給付が多く、自分の負担が自分の生活の安定に使われているという実感が少ないため、税率が低いのに重税感が強い。
もっとも合理的なのは、老人福祉や地方交付税や公的年金などの無原則な社会保障を全廃し、負の所得税と付加価値税(インボイスつきの消費税)と固定資産税(逃避できない)だけにすることだ。これによって厚生労働省は廃止でき、一般会計の約30%を見直すことができる。
ただ、社会福祉を税に集約することについては異論もある。移転給付が多すぎると労働意欲が減退し、社会が停滞するからだ。むしろ人々が自分の所得を稼ぐ場を広げる積極的労働市場政策が必要だ。その意味では解雇規制を緩和する代わりに、大部分の大学を(社会人も対象とする)職業訓練校に改組する必要があろう。サラリーマンを会社から解放して、かれらが新しい職場で働くチャンスを広げることが、究極のセーフティ・ネットだと思う。
日本のように成熟した社会では、急速な成長を求めるのではなく、福祉による「幸福度」の向上を求めようという民主党の考え方はわからなくもない。しかし、それならまず手をつけるべきなのは、不合理な社会保障制度だ。湯浅誠氏のいうように、現在のセーフティ・ネットは穴だらけで、もっともネットを必要とする零細企業が失業保険を払っていないため、職を失うと「すべり台」のようにホームレスになってしまう。
他方で、福祉の負担を企業に押しつけてきたため、大企業の付加給付や年金負担は賃金総額を上回り、JALにみられるように経営破綻の原因になる。「終身雇用」という名の過剰雇用を義務づけ、雇用調整助成金によって「人的不良資産」の処理を先送りする民主党政権の政策は、(90年代に経験したように)水面下で問題を拡大し、最終的にはJALのように破局的な結果をもたらすだろう。
福祉充実と財政再建と両立させるには、非効率で不公平な社会保障システムを改革するしかない。その際の基本的な考え方は、八田達夫氏もいうように、老人とか農家などのグループによって所得を再分配するのではなく、個人の所得によって再分配を行なうことだ。老人でも何十億円も資産のある人には医療費は全額負担させてもいいし、農家の所得は非農家より高いのだから所得補償なんて必要ない。
フリードマンが半世紀前にのべたように、所得再分配はしょせん金の問題なのだから、すべて税制によって行なうべきだ。北欧で国民負担率が高くても不公平感がそれほど強くないのは、負担と給付の関係が透明だからである。ところが日本では、所属集団に依存するアドホックな移転給付が多く、自分の負担が自分の生活の安定に使われているという実感が少ないため、税率が低いのに重税感が強い。
もっとも合理的なのは、老人福祉や地方交付税や公的年金などの無原則な社会保障を全廃し、負の所得税と付加価値税(インボイスつきの消費税)と固定資産税(逃避できない)だけにすることだ。これによって厚生労働省は廃止でき、一般会計の約30%を見直すことができる。
ただ、社会福祉を税に集約することについては異論もある。移転給付が多すぎると労働意欲が減退し、社会が停滞するからだ。むしろ人々が自分の所得を稼ぐ場を広げる積極的労働市場政策が必要だ。その意味では解雇規制を緩和する代わりに、大部分の大学を(社会人も対象とする)職業訓練校に改組する必要があろう。サラリーマンを会社から解放して、かれらが新しい職場で働くチャンスを広げることが、究極のセーフティ・ネットだと思う。
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コメント一覧
セーフティネットは、当面の失業者救済対策なのか、それとも、恒久的な福祉政策の一環として捉えるべきかと考えていくと、恒久的な福祉行政という理念は、あるべき森として視野に入れながらも、現実の日本社会の状況、政治経済の実体を踏まえて、現実に即応したセーフティネットを構築していくしかないと思います。
ただ、当面は、ご指摘のようなセーフティネットの穴を埋めるための財源確保の問題です。そのためには、新設ではなく、保守、点検、整備の観点から、質の高い公共事業を耐震性や耐火性、安全性という観点から国全体の公共補強工事として行うことで(公共施設、道路、発電所等)有効需要を増やす。また、子供手当を経済政策と連動させ、毎年の子供手当の50~75%は、1年を有効期限とする時限付きの消費振興債券にして、総需要を増やし、深刻なデフレ脱却を図る。勿論、そのためには、子供手当の総額も再検討し、経済状況に応じて弾力的な運営を図る。このような試案はいかがでしょうか。
>個人の所得によって再分配を行なう
これは正しい考え方だと思いますが、この前提条件として国が個人の所得を完全に把握するというのが絶対条件になってきます。そして今の制度で捕捉できているのはサラリーマンの給与所得だけですから、納税者番号制導入で全員の所得を完全に把握する条件を整えないと無理です。
>負の所得税と付加価値税(インボイスつきの消費税)と固定資産税
所得税と法人税を廃止して消費税と資産税だけにしてしまえということですよね。これもやるとなるとなかなか難しいんですよね。というのは法人税廃止、減税=企業優遇で消費税=庶民増税というイメージがついて回りますからなかなか世論は賛同に回りません。もし法人税0にして消費税30パーセントにするとかしたら暴動がおこるでしょう。
>移転給付が多すぎると労働意欲が減退し、社会が停滞する
結局のところベーシックインカムにいきつくわけですが、いくらの給付が憲法でいう国民の最低限の生活に当たるのかは時代とともにかわりますし非常に難しいです。
>結局のところベーシックインカムにいきつくわけですが、
社会保障は私の専門外ですが、リスクプレミアムも広義のセーフティーネットだと思います。ベーシックインカムには賛成ですが、リスクプレミアムとセットで考えたほうがいいでしょう。相反するふたつの政策を一対にして施行すれば大きな効果を得ることができる、これが政治です。
私にとって民主党は敵ですが、ヨーロッパを真似たとは言え、農産物の輸入自由化政策と農家への戸別所得補償政策を一対にした小沢一郎の政治はたいしたものだと思います。私は、同じことを石炭でやりたいと思っています。
尻に火がつくような、なし崩し的な社会保証給付の切り下げは、今後ますます行われていくのでは?と思っています。それは財源に合わせて支給を一律に見送ればいいだけの話になるので、簡単なことだと思いますが、官僚任せだとそうならざるを得ないですね。しかしそのような無計画な一律切り下げを続けて回していける時代もそう長くは続かないと思いますね。医療分野などではまさに、所得だけではなく保有資産に応じてもっと負担割合を区分できたらいいのですが、これは難しいんでしょうね。そう考えると、現状では相対的に消費税が一番公平なのかな、という結論にならざるを得ないですね。あとはなにか基金のようなものを活用するとか、用途をしっかり限定するようなかたちで財源のドナー制度みたいなものを社会保障分野で検討してみるとか…粗雑な思いつきで効果も限定的だとは思いますが。とにかく時代に即したいろんなアイデアを検討すべき時にかかっていると思いますね。
水田農家で見て下さい。
所得は全国平均で39万円です。
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/einou_kobetu/pdf/kobetu_suiden_08.pdf
1ha未満の農家が大部分ですので、この統計も恣意的だと思います。
要は、日本の農家の殆どを占める小規模な兼業水田農家は農業の赤字を兼業や年金で埋めながら農業を続けているのが実態だということです。
自民党の半強制大規模化が上手くいかなかったことを考えれば、兼業農家の離農を防ぐための所得補償は必然かと思います。
戸別所得補償は中々上手くできていて、継続にも規模拡大にも生産性向上にもインセンティブが働くようになっています。
衰退が止まった時点で大規模化のインセンティブを大きくするように舵をきればよいのではないでしょうか。
社会保障の件ですが、興味深い発想だと思います。
所得比例年金的なことは実現できるのでしょうか?
日本財政は危機的な状況にあるとのお話が今回の対談でもあり私も同じ認識ですが、それへの反論として一般会計は赤字だが特別会計を含めると大きく黒字であり、財政危機論者は増税を促し庶民を苦しめる悪者だと主張する人もいます。
池田先生の視点で特別会計に触れるとどのような結論になるのだろうかと興味を覚え、質問させて頂きました。
※他エントリで触れていましたら申し訳ありません
はや還暦も過ぎ、みなさんの云うところの団塊の世代の一員です。
今まで
私たちは自分と日本経済のために頑張ってきました。
私たちの頑張りがあったから、GDP世界第2位の今の日本があります。
しかしながら、
ブログのように皆が皆、金を溜め込んでいるわけではありません。
自分の生活のため、老人も社会のため働きたいのです。
日本経済を支えるため、あと一頑張りしたいのです。
あえて言うなら、死ぬまで働いて、税金を納め、
医者にかかることなく、ポックリ逝くことです。
医療と介護費を減らして、
私たちも、
若者の負担になることなく、
会社に死ぬまで勤めて、
税金を納め、
たまには、自分の趣味にも没頭して、
自分のからだは、医者にかかることなく自分でケアーをして、
自分のからたを管理する。
この方法で、財政再建の手助けをしたいです。
日本将来を背負ってくれる、
子供を増やして頂きたいです。
少しでも
日本の未来の見通しを明るくして、
子供達に日本の将来を託したいのです。
jjcda氏のようなお話を聞くと、憤慨してしまう自分がいるのですが、
すでに、多くの若者の負担となっており、年功序列によって会社に死ぬまで勤めることで、若者が就職するチャンスが消えます。手助けどころかすでにマイナスです。
では、「どうしろと?」となるのですが、自分には冷静に判断できない状態です。なので、
>老人でも何十億円も資産のある人には医療費は全額負担
という案には諸手を挙げて賛成してしまいます。資産に応じて段階的に負担率を変更して欲しいです。
確かに日本は先人の力で敗戦から奇跡的な回復をいたしました。しかし、それは決して先人だけの力で回復したわけではないですし、国債や年功序列等の負の遺産も非常に多い。
私は子供の為にも、日本を脱出する事を目標に仕事をするのが、もっともリスクが少ないのではないかと考えるようになり準備をしています。
セーフティーネット等も、若者が一丸となって改革(抗争)を行わなければ、とても実現できそうに思えません。実現できないなら、北朝鮮と戦争でもすれば変わるのでは、とも思ってしまします。
>7
>自分の生活のため、老人も社会のため働きたいのです。
若者にとってはこういう老人ははっきりいって迷惑でしょうね。老人が定年せずに企業で働けばその分だけ若者の雇用が減るわけですから。その現実を知らずして
>日本将来を背負ってくれる、子供を増やして頂きたいです。
というのはどれだけ面の皮が厚いのか。
私は、お年はいくつでも能力のあるお年寄りには末長く働いて頂きたいと考えております。雇用に関する年齢制限は、日本では普通ですが、欧米では差別にあたると聞いたことがあります。
問題は、「能力が低くても日本特有の解雇規制により守られている正社員」だと考えています。明らかに日本企業の国際的な競争力の低下につながっているのですが、国内では「正社員」「勝ち組」に収まっています。
企業のリストラに伴う首切りを認め、柔軟な戦力の入れ替えを可能にしないと日本企業は世界の競合に伍していけません。
現在は、能力が高い若い人を非正規社員として使って利益を上げ、正社員の給与水準を確保している会社が多いようですが、それが日本経済の国際的競争力の継続的低下を招いているように見えます。
「解雇規制の緩和」を切望しているのですが、実現するには具体的にどのような方法があるでしょうか?
皆さんの意見を見ていて思うことは、随分悲観的だなということです。
現在、財政状況が逼迫しているのは、政府が殆ど増税せずにきた、あるいは減税までしてきたからだけなのです。
日本は国全体として見れば、まだまだかなりの資金余剰の状態であることは皆さんの共通認識ではないでしょうか?
だから、安易に増税しろとか国債増発しろとか言いたい訳ではありません。
要は、めぼしい投資先がないから金が余るのだということです。
成長戦略は、それはそれでいいのです。
でも、一気に世界を席巻して日本中が潤うようなキラープロダクトがあるかのような幻想を振りまくのは、真面目で地道な努力の弊害になります。
農林漁業、介護・医療、観光、環境などは真面目で地道かも知れませんが、確実に雇用と需要増を生む有望な投資先です。
余剰資金がそこに向かうような知恵を絞ることの方が増税や国債増発の前に考えるべきことです。
政府系ファンドは大反対ですが、政府がそのような投資の仲立ちをして、贈与税・相続税を軽減するといったインセンティブを与えることも一案かと思います。
皆様のアイデアを。
rainman2010さん、生産農家への戸別所得補償というのは農産物の輸入自由化と一対でないと意義がないのですよ。それをやった小沢さんは敵ながら大きな政治家だとは思いますけど。
農水省は戸別所得補償に賛成して輸入自由化に反対するでしょうし、経産省は輸入自由化に賛成して戸別所得補償に反対するでしょう。行政は縦割りなので、官僚主導型政府の場合、相反する政策は競合してしまう。政治家主導型政府の場合でも、族議員がたくさんいると競合してしまう。相反する政策を一対にして行うことが政策の効果を大きくすると分かっていても、頭が良くて力のある政治家でないとやれないことなのですね。
機械化された現代農業は、農家一戸あたり10ha以上の農地の耕作を可能にするでしょう。逆ロシア型というか、一次的に自作農を行い二次的に小作農も行うという仕組みで専業農家を育成すれば、日本の農業は良くなると思います。10年か20年はかかると思います。それでもダメならアジア的家族農業そのものを見直す必要がありますが、私の嫌いな市場原理主義者たちは、専業農家の育成を棚上げにしてアジア的家族農業の解体を主張するので、困った連中だと思っています。