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東芝は17日、家庭向けの電球として長く親しまれてきた一般白熱電球の製造を中止した。創業者のひとりの藤岡市助氏が1890年に日本で初めて製造して以来、120年の歴史に幕を下ろした。今後は省エネ性が高く、寿命も長い電球型蛍光灯や発光ダイオード(LED)電球に生産を移す。
東芝の国内シェアは数量ベースで約3割といい、主要メーカーが一般白熱電球の製造を中止するのは初めて。この日、東芝で白熱電球を唯一つくるグループ会社の東芝ライテック鹿沼工場(栃木県鹿沼市)で、製造中止式典があった。東芝の佐々木則夫社長らが最後の製品の完成を見送った後、製造ラインの電源を落とした。
鹿沼工場でつくられていた一般白熱電球は103機種にのぼり、2009年の生産量は約700万個。消費電力の大きい白熱電球をやめLEDなどに置き換えることで、二酸化炭素(CO2)排出量は08年比で年約43万トンの削減効果が見込まれるという。
日本に照明を広めたことで知られる藤岡氏は、1878年に日本で初めての電灯点灯実験に参加。84年に国の使節として渡米した際には「発明王」エジソンと会い、「電気器具を輸入するようでは国は滅びる」との指摘に刺激を受けた。90年に東芝の前身となる「白熱舎」を設立した。
最初の生産能力は1日10個が精いっぱいだったが、最盛期の1973年には年7800万個に達した。東芝はほかの工場もあわせて累計で40億7千万個つくったという。
政府が2012年度までに白熱電球の製造をやめるよう各メーカーに要請したことを受け、東芝は2008年に製造中止を発表。鹿沼工場に6あった製造ラインも1ラインまで減らしていた。
今後は特殊な一部の製品を除いて白熱電球はつくらず、1980年に世界で初めて開発した電球型蛍光灯や、2007年に投入したLED電球の普及を進める方針だ。(高田寛)