きょうの社説 2010年3月18日

◎南砺が金沢で観光博 「身近な市場」を意識したい
 南砺市が新年度、金沢市からの観光誘客促進を意識した取り組みを次々と実施する。7 〜10月に金沢市の「かなざわ・まち博」をモデルにした「南砺里山博」を開催するほか、9月には同市の近江町市場で「なんと観光博」も開く。北陸最大の都市に隣接している地の利を最大限に生かそうとする姿勢は評価できる。

 誘客といえば、とかく首都圏や関西圏、さらには海外といった遠隔地の大都市ばかりに 目が向きがちであるが、そうした地域に対するアピールと併せて、近隣の都市に暮らす人々に「安近短」の旅行先として選ばれる努力をすることも大事である。地域振興に向けた南砺市の積極性は、石川県の各市町にも大いに参考にしてもらいたいものである。富山県西部の各市も、県都の富山市に加え、西にも身近な「市場」があるのが強みであることを頭に置いておく必要があろう。

 金沢市から観光客を呼び込んでも、落ちるお金は小さいかもしれない。半面、リピータ ー確保の観点では、「近さ」が強力な武器になる。大勢に、しかも何度も足を運んでもらえば、遠来の観光客に勝るとも劣らない経済効果につながろう。

 石川県や富山県西部の各市町の場合、何もしなくても金沢市から一定の観光客がくるだ ろうが、それだけではもったいない。工夫次第でもっとその数を増やせるに違いない。知名度全国クラスの温泉を有する七尾市や加賀市、加賀藩ゆかりの豊富な歴史遺産を誇る高岡市、北陸有数の山岳リゾート地を抱える白山市、山海の多彩な味覚に恵まれた氷見市や能登の各市町、金沢市と境を接している小矢部市なども、南砺市に負けないような誘客の「仕掛け」を考えてみてはどうか。

 南砺市のように独自の行事を金沢市で実施するのも一つの有力な方法だろうし、金沢市 で開かれる催しを活用するのも手だろう。祭りやイベントの前だけでなく、普段から積極的な発信を心掛けてほしい。もちろん、PRとともに金沢市民に好まれるサービスや体験メニューなどの充実を図ることも重要である。

◎銀行の暴力団対応 強化したい資金洗浄対策
 全国銀行協会は、暴力団関連企業などの情報を各行が共有する仕組みを4月から導入し 、反社会的勢力の資金源となる取引を防ぐ取り組みを強化する。「闇社会」の資金源を絶つことは長年の課題であり、石川、富山県では昨年、地域金融機関と県警、財務局などによる「県銀行警察連絡協議会」が設立されている。国際的には、犯罪で得た資金やテロ資金を金融機関の口座を通して正当な資金に見せかけるマネーロンダリング(資金洗浄)の監視強化がとりわけ求められており、反社会的勢力の情報共有の仕組みづくりを機に、資金洗浄対策に一段と力を入れてもらいたい。

 犯罪収益の移転防止に関する警察庁の報告では、金融機関等本人確認法や犯罪収益移転 防止法の施行に伴い、資金洗浄の可能性のある「疑わしい取引」の届け出が増え続けている。2009年の届け出件数は前年比16%増の約27万2300件で、過去最多となった。また、組織的犯罪処罰法に係る資金洗浄関係の摘発件数は、振り込め詐欺やヤミ金融事犯など226件(前年比53件増)に上る。

 資金洗浄が疑われる取引の届け出増加は、各金融機関が不正な資金に対する監視を強化 している表れである。しかし、資金洗浄やテロ資金を監視する国際機関からは、日本の金融機関は口座開設時の本人確認など顧客管理がまだ不十分と指摘されており、その対応策を検討する警察庁の有識者会議がことし2月から、協議を開始したところである。

 反社会的勢力の情報を共有する全国銀行協会の取り組みが本格化すれば、暴力団関連企 業の取引排除がさらに進むと期待されるが、各行が情報を生かして実際に資金洗浄を防ぐには、担当者を増強したり、顧客の取引データから「疑わしい取引」を検知するシステムを充実させる必要もある。

 ただ、規模の小さな地域金融機関がそうした取り組みを独力で行うには限界もある。こ のため、メガバンクのノウハウを活用して、地銀の資金洗浄対策を支援する動きも出ている。各金融機関の一層の工夫が望まれる。