男性同士の愛とあだ討ちの顛末(てんまつ)を描く。三世河竹新七作、今井豊茂脚本、奈河彰輔演出。2006年に大阪で復活上演された作品で、東京では初上演。
武士の大川友右衛門(染五郎)は、一目ぼれした細川家の小姓の印南数馬(愛之助)に近づこうと、細川家に中間奉公する。友右衛門は数馬への思いを遂げ、父の敵を探す数馬と義兄弟の契りを結ぶ。だが、2人の秘密は腰元のあざみ(春猿)に知られる。
舞台装置を最小限に抑えた構成舞台で、テンポよく話が展開する。前半では武士の身分を捨ててまで数馬に近づこうとする友右衛門のなりふり構わぬ恋情が描かれる。
不義者として両者を成敗しようと考えた細川越中守(門之助)さえ動かすほどの一途(いちず)さを染五郎が出し、友右衛門の情熱に押され、思いを入れる数馬の気持ちの揺らぎを愛之助が見せた。
後半はあだ討ちが主題となる。数馬の父の十内(欣弥)を殺害した横山図書(猿弥)は正体を隠し、友右衛門の妹きく(芝のぶ)の夫になっていた。
染五郎と愛之助が時に恋人、時に兄弟のような2人の関係性を嫌みなく出した。猿弥が次第に凶暴性をエスカレートさせていく図書の残忍さをうまく見せた。門之助、春猿、芝のぶが的確だ。
大詰めで友右衛門は細川家の重宝を守ろうと火の海へ飛び込む。火に巻かれ、階段から転がり落ちる染五郎の激しい動きが見もの。26日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2010年3月17日 東京夕刊