バンクーバー冬季五輪で韓国が金メダル六個と躍進した。国や大企業による支援、恵まれた練習環境など、日本も見習うべきだという意見が聞かれる。
だがソウルで勤務した経験でいうと、韓国の若者はスポーツが苦手で、学校の運動クラブも低調だ。
プールのない学校が多いから「金づち」の子もかなりいる。男性は軍隊に入隊して初めて水泳を本格的に習うという。公園でキャッチボールをする姿もあまり見たことがない。
中学や高校には一つか二つの運動クラブしかないが、部員は粒ぞろい。全国大会、さらには将来の国家代表やプロ選手を目指して猛練習をする。五輪の競技や野球、サッカーで韓国が強いのは、才能がある一部の子どもを徹底的に鍛えるからで、大半はスポーツとは無縁の学校生活を送る。
韓国では英語やコンピューターの早期教育が重視されるが、学校体育を盛んにしようという話は聞かれない。大学受験が厳しく、父母はスポーツより塾通いを優先させる。儒教の教えでは、上流階級は肉体労働をせず勉学に励むことを理想とするから、体育を軽視する伝統があるのかも。
日本は国際大会の成績では韓国に負けているが、学校体育が盛んで、走る、跳ぶが苦手な子でもスポーツに親しむ機会に恵まれている。ひと握りのエリート選手を育てるより、皆が競技を楽しめる環境を大切にしたい。 (山本勇二)
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