趣旨
伝統的建造物群保存地区は昭和50年(1975)の文化財保護法の改正で生まれた。昨年末の時点で74市町村86地区が国の選定を受けている。高度成長期のただなか、それぞれの地域がもつ固有の景観が失われていくなか、つよい危機感のもとに生まれた制度であり、歴史的町並み景観を保存するための唯一の制度として大きな役割を果たしてきたといえる。
ただ、制度が生まれて35年をへて、登録文化財制度や景観法・歴まち法の誕生など、制度をとりまく環境が大きく変化し、また、空家・空地の増加や地区内の高齢化など、制度に内在する課題が次第に顕在化してきている。
ここでは、スピーカーが近年関わった新しく地区を立ち上げる「保存対策調査」と既存地区の課題を検討する「見直し調査」の経験から、伝統的建造物群保存地区の課題とまちづくりの方向性を考えたい。
増井正哉
増井正哉(ますいまさや)氏略歴
奈良女子大学生活環境学部教授 1955年生。京都大学大学院工学研究科単位取得退学。博士(工学)。京都大学工学部助手をへて、奈良女子大学助教授現職。専門は歴史遺産の保存・活用、建築史。奈良県・滋賀県・京都府・徳島県で、15地区の保存対策調査に参加し、うち8地区が重伝建地区の選定を受けている。パキスタン・インドにおける遺跡調査・保存事業にもとりくんでいる。
日本建築学会霞ヶ関記念賞、建築史学会賞受賞(共同)。著書に『まち祇園祭すまい−都市祭礼の現代』(共編)、『住まいのかたち・暮らしのならい』(共編)、『ラニガト−ガンダーラ仏教遺跡の総合調査1983-1992』(共著)など。伝建対策調査・見直し報告書として、『東祖谷落合』『今井町』など。
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