坂井真紀・星野源 『ノン子36歳(家事手伝い)』インタビュー
バツイチ、出戻り、家事手伝い。昼間っからスナックで酒を飲み、ママチャリに股がってふらつきながら、ガシャーンとゴミ箱を蹴る。たぶん化粧もしていない、見るからにイタい三十路女、ノン子。一途でまっすぐな年下のマサルの登場で徐々に笑顔を取り戻すのだが、元旦那との再会で彼女の心は揺れ動く…。
切なくも甘い、息を呑むほど臨場感のあるベッドシーンなど、ノン子演じる坂井真紀が、気鋭の熊切監督の指揮下のもと、新たなる境地を作り出している。
主演である坂井真紀さんと星野源さんに、撮影中のエピソードや監督のこと、そしてご自身の恋愛観もうかがった。
※一部ネタバレが含まれますのでご注意ください
※インタビュー最後に、CINRA.NET読者へお二人からのメッセージ動画あり!
(インタビュー・テキスト:早川すみれ 撮影:寺島由里佳)
坂井真紀(さかい・まき)
1970年、東京生まれ。92年のデビュー以来、数多くのテレビドラマ、映画、舞台で活躍する実力派女優。映画デビューは「ユーリ」(96)。09年公開作として「ACACIA」が待機している。独自の世界感を持ち、シリアスなものからコメディまでにあらゆる役をこなす。熊切監督作品は、「青春☆金属バット」(06)、「フリージア」(07)に続き、3作目となる。
坂井真紀オフィシャルウェブサイト
星野源(ほしの・げん)
1981年、埼玉県生まれ。俳優、小説やエッセイの執筆、またSAKEROCKのギタリストとしても活躍し、作曲家、作詞家としても多彩な才能を発揮している。松尾スズキや宮藤官九郎演出の舞台に出演。映画作品には「69 sixty nine」「少年メリケンサック」に続く3作目。
相思相愛のキャスティング、個性派ぞろいの俳優陣。
─映画の冒頭で、実家のある田舎でやる気なしの生活を送るノン子と、祭りで店を出すためにやって来たマサルが偶然出会いますね。坂井さんと星野さんご自身は、撮影前に面識はあったんですか?
坂井:はい、ありました。以前、源君が主演で出ていた『去年ルノアールで』(※1)※2007年にテレビ東京にて毎週日曜日の深夜に放送されていたテレビドラマ。星野源主演はじめ、西村雅彦やバナナマンの日村勇紀などが出演。という連続ドラマがありまして、それに私がゲスト出演させていただいて、そこでお会いしたことがあります。その時は、ちらっとだけですけどね。
星野:あの時はほんとに一瞬でしたね。その後は、赤犬(※2)※ライブだけでなく映画音楽制作もする13人編成のビッグバンド。本作品でもアイリッシュテイストの音楽でシーンを彩っている。さんと僕がやっているSAKEROCKというバンドのライブに、プライベートで坂井さんが一度見に来てくれたことがあります。今回の撮影の前は、その2回しか会ったことがありませんでした。
─そうだったんですね。映画の役中でも、今お二人を目の前にしても、とても息が合っているように感じます。お二人が共演するという話がきたとき、どう思われましたか?
坂井:源君と共演すると聞いて、すごく嬉しかったです。というのも、SAKEROCKもそうなんですが、源君はマサルのイメージ通りの方だし、私は「星野源」という彼自体がとても好きでしたから。今回の映画でがっつり共演できるのは、本当に嬉しかったですね。撮影がすっごく楽しみでした。
星野:僕もこの映画のお話をいただいたとき、嬉しかったですよ。「うわぁ、坂井さんだ」って。以前の連続ドラマのときは、実質10分くらいしか一緒にお芝居ができなかったんです。しかもコントっぽい芝居で。だから、今回は長い時間、ノン子とマサルという関係で坂井さんと一緒にしっかり芝居ができるのが、とても楽しみでした。
─坂井さんも一度見に行かれたという、SAKEROCKというバンドで星野さんはミュージシャンとしても活躍していらっしゃいますが、今回坂井さんと共演するということで、バンドメンバーの反応はいかがでしたか。うらやましがられたりしませんでしたか?(笑)
星野:もちろんですよ。バンドメンバーだけじゃなくて、僕の周りのいろんな人たちからうらやましがられました(笑)。
坂井:嬉しいなぁ(笑)。
─お互いに相思相愛のキャスティングだったのですね。その他出演者も、ノン子の元旦那役の鶴見辰吾さんをはじめ、津田寛治さんや斉木しげるさんなど、現場がとても楽しそうですね。
坂井:なかでも、ノン子の妹の旦那役をされた舘昌美さんはとても個性的な方で、つっこみやすい人だったので、かなり笑わせていただきました。
星野:そうそう、舘さんは面白い方でしたよね。舘さんに限らず、この映画に出てくる俳優さんたちは、本当にみなさん個性的で実力のある方ばかりで、とても面白かったです。演じている時はもちろん真剣なんですが、映画全体を通して本当に楽しい撮影でした。