組み立て、解体が比較的簡単にできる「太陽光発電エコクレーン」の試作機=津久見市のヤクテツ
太陽光で動くエコクレーン、排せつ物を短時間で消化するバイオトイレ…。長引く景気の低迷、デフレ経済の中、大分県内の地場中小企業は、時代に対応した新規需要を掘り起こそうと奮闘している。生まれたての、きらりと光る製品・技術の一端をのぞいてみた。
数時間で組み立て
「地球に優しく、電源を確保しにくい山間部でも使える」。ヤクテツ(津久見市、大野好一社長)は、太陽電池パネル搭載の太陽光発電エコクレーンを開発した。当面は高さ6メートル前後の製品(つり上げ重量3トン未満)を実用化する予定で、小型デモ機を試作した。
数時間で組み立てや分解ができるように、部材の接続は大きなピンを穴に差し込む方式にした。価格は従来品より3割ほど高くなるが、「取引先の造船所などでも二酸化炭素(CO2)削減策に手を焼いていて、今回の提案は歓迎された」と“ヒット”に期待する。
消臭効果に優れる
20分程度で一回分の排せつ物を消化する―。東和安全産業(大分市、小野彰久社長)の分解消滅型介護用トイレは、給水タンク付きでウオシュレット機能もある。尿は別途処理する仕組みだ。自宅の居間でしばらく試したという小野社長は「消臭効果に優れ、『においをいやがっていた孫が部屋に遊びに来るようになった』と喜ぶお年寄りの声もある」と胸を張る。
独自技術で粉末状にした落ち葉などに、関連会社が培養したバクテリアを着床させたバイオ基材が製品の核。2年間、補充なしで使い続けている利用者もいるという。価格は25万円。
「リスクを減らす」
若者の新規就農促進で耕作放棄地解消を目指すのは、県から創業支援を受けているベンチャーのcodigoro lab(西日本次世代農業研究所・大分市、後藤慎太郎社長)。監視カメラや日照・温度センサー、パソコンなどを駆使し、農作物の生育状況を常時、監視・記録できるシステムを開発した。
同社は「インターネットの無料オープンソースなどを利用してシステム価格を8万円にできたが、さらに安くする」と意気込む。「生きもの相手で天候に左右される農業はリスクが大きい。ベテランの経験値をICT(情報通信技術)で可視化させ、経営安定を実現したい」
こうした製品や技術は、約150の企業や団体が出展した「おおいたものづくり王国総合展」(2月、別府ビーコンプラザ)で紹介された。主催した県産業創造機構と県によると、2日間で約9千人が訪れた。
出展者の何人かは「総合展がきっかけで、新たな事業展開につながりそうだ」と言葉を弾ませた。業種を超えた情報交換の中に、新たなビジネスの種が潜んでいるといえそうだ。
(経済部・安東公綱)
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