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きょうの社説 2010年3月17日
◎漂着ごみ地域計画 地元も発生源の自覚がいる
石川、富山県の海岸漂着物対策推進協議会が相次いで初会合を開き、海岸漂着ごみの処
理に関する「地域計画」策定に乗り出した。漂着ごみ処理に国も財政支援を行うことを明記した海岸漂着物処理促進法の施行に基づくもので、海岸の環境・景観を保全する官民一体の取り組みが本格化することになる。実効性のある地域計画で漂着ごみの回収体制づくりを進めることはむろん、地域住民に対する啓発活動にも一段と力を入れてもらいたい。日本海側の自治体海岸は特に冬季間、海流と季節風の影響で韓国など対岸国からの漂着 ごみに悩まされている。今冬も大量の廃ポリタンクが沖縄から北海道にいたる18道府県に流れ着いた。国際的な環境、外交課題であり、問題の解決には政府間の強力な対策が不可欠であるが、その一方で、地域によっては海岸漂着ごみの多くが国内で発生している実態をもっと広く知らせる必要がある。 環境省の漂着ごみ調査のモデル地域に指定された羽咋市の海岸の場合、漂着したペット ボトルの41%は日本製であり、次いで韓国製18%、中国製とロシア製が各6%という結果だった。漂着したライターの多くは、地元の羽咋川やその近傍の河川から流れ出たと推定されるという。 海岸の漂着ごみは普段、住民の目に付きにくく、外国や外国船などからの大量漂着で社 会問題化する傾向がある。このため、地域住民もつい被害者意識を持って対外的な要望を行いがちであるが、住民自身もまた漂着ごみの発生源者になっているという自覚を促す取り組みがより大切である。 漂着ごみの回収運動に長年取り組んでいる人たちの間では、運動が「いたちごっこ」の ように際限がなく、いつまでも目標を達成できない現状に、いらだちや戸惑いの声も聞かれる。ごみの発生を抑える取り組みを一方で強めないと、せっかくの回収運動も長続きしない恐れがある。昨年7月に施行された海岸漂着物処理促進法には、漂着ごみ対策に協力すべき住民、事業者の責務も明記されており、地域計画策定を機に、同法の理念も周知徹底させたい。
◎子ども、無償化可決 不安残す「見切り発車」
民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉である「子ども手当法案」と「高校無
償化法案」が衆院本会議で採決され、高校無償化が4月から、子ども手当の支給が6月から行われる見通しとなった。中学卒業までの子ども1人当たり月額1万3000円を支給する子ども手当は、満額支給(同2万6000円)のために必要な残り3兆円分の財源の見通しが立っていない。高校無償化では、賛否両論のある朝鮮学校を対象に含めるかどうかの判断が先送りされた。大きな不安を抱えたなかでの「見切り発車」と言わざるを得ない。子ども手当は、半額支給の10年度予算案でも2兆3000億円の財源がねん出できず 、廃止するはずだった児童手当を残し、企業と自治体に計7500億円分を担がせるなどして、無理やりつじつまを合わせた。残り3兆円は今のところ空証文といってよく、巨額の財源を必要とする政策を、持続可能な制度設計なしにスタートさせた政府・与党の責任は重い。 鳩山由紀夫首相は「子ども手当のために借金を残すことはしたくない」と言って「公約 違反」を指摘されると、慌てて「予定通り満額支給する」と弁明に追われるなど、ここでも「ぶれ」が目立つ。 子育てを行う家計を直接支援したらどの程度、消費を押し上げ、景気を刺激する効果が 得られるのか。そもそも子ども手当は少子化対策なのか、経済的に苦しい世帯への支援なのか、理念や政策目標がはっきりしないことも迷走に拍車をかけた。 4月から公立高校の授業料を無料にし、私立高校生には年約12万円を助成する無償化 法案で、朝鮮学校を対象に含めるかどうかについて、政府は法案成立後に第三者機関を設けて最終判断するという。朝鮮学校が朝鮮総連の強い影響下にあるのは明らかであり、どのような授業を行っているのか、調査・点検するのは当然だろう。 さらに「公の支配」を受けない教育などの事業に税金を充ててはならないと定めた憲法 89条に違反しないのか、この点でも説得力のある見解を示す必要がある。
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