福岡市中央区那の川2丁目のスーパーで1月末、生まれたばかりの男児が遺棄された事件は、発見から1カ月が過ぎた。福岡中央署は、死体遺棄容疑などで捜査を続けるが、身元確認に結び付く手掛かりは得られていない。男児は、市が管理する身元不明遺体の納骨堂に埋葬され、親族の迎えを待っている。
福岡市東区香椎の市営三日月山霊園。一般の墓も並ぶ一角の「行旅(こうりょ)物故者之霊」に男児の遺骨は眠る。建物内部には、小さな観音像一体が据えられている。
「遺骨台帳番号第25号 平成21年度」。男児を包む、握りこぶしほどの小さな骨つぼの袋には、他の身元不明の遺骨4747柱(3月3日現在)と区別するため、そう記されている。名前はもちろん、戒名もない。
男児は1月31日午前11時ごろ、24時間営業のスーパーの女子トイレ個室で見つかった。生後間もない状態で、死因は窒息死だった。福岡中央署によると、トイレ出入り口付近の防犯カメラの映像は不鮮明で、当時、出入りした人の特定はできなかった。
スーパーは住宅街にあり、周囲の女性や産婦人科病院への聞き込みからも、有力な情報は得られていないという。捜査幹部は「いたたまれない。心があるのなら、親は出頭して手を合わせてほしい」と話す。関連の情報提供は福岡中央署=092(734)0110。
=2010/03/06付 西日本新聞朝刊=