【激震2010 民主党政権下の日本】まるで「コンクリートから小沢へ」

2010.03.16

 政府は12日、高速道路の「休日上限1000円」割引などに使う財源を高速道路の建設費用に転用できるようにする道路整備事業財政特別措置法改正案を閣議決定した。

 改正案では、渋滞解消などのための車線増設、既存高速道路を連結する高速道の新設・改築など4項目を財政支援の対象に追加されている。昨年10月の補正予算見直しで凍結された関越道、東海北陸自動車道など全国6区間の4車線化事業などへの適用を念頭に置いているようだ。

 まず、本来は高速道路料金の割引という利用者に還元されるべきものを、選挙対策の公共事業につぎ込むわけだから、利用者からみれば、現行の「休日上限1000円」割引制度が縮小されるという意味で実質的に値上げになる。この割引制度は、麻生政権で始まった景気対策なので、国民の財産である「埋蔵金」があてられた。ところが、それが流用されて民主党の新「道路族議員」のために使われるというのは、あまりに釈然としない。

 しかもそれだけでない。実はこの背景には大きな政策転換がある。新聞ではあまり大きく報道されていないが、小泉政権での道路公団民営化を根本から覆すものだ。ここでも、郵政民営化の方向転換と同じことが行われている。

 道路公団民営化にはいろいろな議論がある。しかし、それを一言で言えば、道路公団時代は年間3000億円の国費が投入されて不採算路線がドンドン建設され料金が引き上げられていたが、民営化後は道路建設のための国費投入がなくなり料金収入の範囲で道路建設が行われ、経営努力の結果で料金引き下げも可能になったということだ。この年間3000億円の国費投入がなくなった点は評価すべきだろう。

 こうした道路建設に国費投入がないという道路公団民営化の基本的な考え方を制度的に担保するのが、道路整備事業財政特別措置法である。今回この法律を改正し道路建設に国費を投入するということは、道路公団時代の不採算路線建設の復活を意味する。

 しかも、これが昨年末に民主党小沢一郎幹事長からの要望であったのも問題だ。民主党としては地方等からの要望を伝えたわけだが、国費を投入して選挙対策の公共事業という、昔の構図が見え隠れする。前原誠司国交相は「コンクリートからヒト」へというキャッチフレーズで公共事業全体を削減してきたことを強調するが、「ヒト」には小沢氏も含まれていたわけだ。拙著「鳩山由紀夫の政治を科学する」(インフォレスト社)で指摘した「小沢陰関数」(裏の本質的な関係を示す数学的な表現方法)の炸裂だ。(元内閣参事官・高橋洋一 政策工房会長)


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