【第117回】 2010年03月16日
キム・ヨナやサムスンに“脅威論”が噴出
「日本はもう韓国に勝てない」は本当か?
現実は、日本と中国との板ばさみ
“サンドイッチ現像”に悩む韓国
とはいえ、飛躍的な経済発展を遂げる韓国にも、いくつかの問題がある。
その1つは、半導体の製造装置などの生産財において、国内供給能力の拡大ペースが遅れていることだ。韓国のIT分野は、サムソンに代表されるように、世界屈指の有力企業が揃っている。
しかし、そうした大企業が使う集約性の高い部品や製造装置といった生産財の国内供給が、追いついていないのが現状だ。そのため、どうしても部品や工作機械を海外、特にわが国などから輸入せざるを得ない構造になっている。
ある韓国政府の高官は、「韓国が得ている貿易黒字の多くは、日本に献上するために稼いでいるようなものだ」と指摘していた。
また、為替相場が大きく変動するリスクのなかで、主要企業の輸入依存度が高いことは、それだけの危険負担があることを意味する。企業の収益状態は、自国通貨であるウォンの変動に左右される可能性がある。それは、韓国経済全体にとって好ましいことではないはずだ。
さらに、韓国の経済専門家が指摘する潜在的なリスクは、いわゆる“サンドイッチ現象”だ。
日本や欧米企業の技術開発が進み、新製品の開発テンポが加速された場合、技術や部品、製造装置の一部まで海外企業に頼っていると、自国の企業がその流れから取り残される懸念がある。
また、技術集約性の低い製品については、人件費の安い中国やベトナムなどで製造することが可能になる。その結果、韓国企業が中国・ベトナム企業からの追い上げに苦しむことも懸念される。
上からは取り残され、下からは追い上げられる――。それが“サンドイッチ現象”の正体だ。主要国の多くが経験した苦難を、韓国もいずれかの段階で、味わうことになるだろう。
韓国企業は、そうしたハードルを上手く乗り切ることができるか否か。注目に値するところだ。
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著者プロフィール
- 真壁昭夫
(信州大学教授)
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。
この連載について
経済・ビジネス・社会現象……。いま世の中で話題となっているトピックス、注目すべきイノベーションなどに対して、「キーワード」という視点で解説していきます。
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