きょうのコラム「時鐘」 2010年3月16日

 石川県に「石川市」はない。かつて沖縄県にあった。平成の合併で消えて現在の「うるま市」になった。普天間基地移転先の候補として急浮上した自治体である

うるま市の太平洋側に突き出た半島南側にあるのが問題のホワイトビーチである。名前の通りきれいな遠浅の海で、一部はリゾート地になっている。基地移転候補先を次々と乱発してきた鳩山内閣が、ここに絞りこんだ気配がする

が、先行してきた名護市辺野古の海岸埋め立てはいけないと言いながら、うるま市の海岸なら埋め立ててもいいと言う理屈が分からない。沖縄県知事が辺野古陸上案を「理解不能」と切り捨てたが、それ以外の言葉はなかろう

内閣発足から半年、鳩山首相が民主主義の本質は「揺らぎ」にあると述べたという。「地球も宇宙も人の心も本質は揺らぎであり、すべてが一つのものに確信的に決まっているのではない」と。民主主義と言えば聞こえはいいが、平たく言えば「迷走」だ

迷走の背後には突然候補地にされた多くの自治体の憤りがある。首相も官房長官もそこまで思いが働かない。この無神経さこそ理解不能である。